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「一生お金に困らないように、ね」

私の本名である「北村有」で試しに検索をかけてみると、俳優の「北村有起哉」さんがヒットする。Twitterで有名人ぶってエゴサーチしようとしても大体この北村有起哉さんか自分のツイートしか出てこない。有名人と同姓同名の人は大変だろうなあ。

いきなり関係ない話からはじめてしまってごめんなさい。

私の本名、「北村有」の「有」は、父親がつけてくれたもの。ゆうちゃんって女の子はたくさんいるけれど、この字は少しだけ珍しいんじゃないかと思う。いまでこそ少しの個性がある気がして誇らしいのだけど、小さい頃はコンプレックスに思えて仕方がありませんでした。

歯医者さんで会員証をつくってもらうときも、女の子はピンクのカードなのに私だけ、ブルーのカードだったり。「有く~ん」と呼ばれて、私の顔を見るや「あ、女の子だったんですね、ごめんなさい」と言われたり(顔を見て女の子だと気づいてもらえるだけまだマシだったかもしれない)。まだ就学前なのに「ちょっと、料金少ないよ」とバスの運転手さんに怒られたり(これは名前のせいじゃなくって身長が高いせいだった)。

そんなこんなで、この名前を心から受け入れ、愛し、堂々と名乗れるようになったのは……けっこう最近のことだ。

父親がつけてくれた「有」という名前。私は長女だから、父親や母親にとっては自分たちの初めての子ども。私が生まれたことによって、私は娘になり、ひとりの男性が父親になり、ひとりの女性が母親になった。些細だけれどでも確実に、夫婦の人生を変えるきっかけとなったんだ。

姓名判断や赤ちゃんの名前本をヒマさえさればめくっていたらしい父親。いまの父親を見ていると、とてもそうは思えないのだけれど、相当悩んで私の名前を決めてくれたと聞いている。そんな父親、生まれてきた私に初めて対面したときに、こんな一言を呟いたのだとか。

「この子は、結婚しないかもしれないなあ」

とんでもない話である。たとえそんなこと思ったとしても口に出さずにいてほしかった……娘可愛さの妄言であったとしても受け入れがたい。何かの呪いか予言のようになって、実際のところ私はまだ独身です。

そして、「名字が変わらないかもしれないから」という理由で、「北村」にもっとも合う名前は何かと模索しはじめた父親。スタート地点が不吉! 「北村」あってこそ効力を発揮する「有」であるならば、私は一生名字を変えられないじゃないか……。

「一生お金に困らないように、ね」

そして、私の名前は「有」に決まった。

「北村有」という名前は、生涯お金に困らないよう配慮され付けられた名前なのだ。模索し続けた父親は、「北村」にもっとも合い、かつ金運もめちゃくちゃ良い名前は、姓名判断でいうと「有」であるらしいと知った。これを初めて聞かされたときは正直複雑でした……もちろんお金に困らないのは嬉しい、嬉しいけれども、「北村有」であるが前提の金運……? 一生未婚でとおすか名字が12画の人と結婚するしか道がないじゃない……。

それでも、名前の効力は大きいのかもしれません。お金に大きく困ったことはこれまでになく、お仕事のご縁もひょんなところからいただけます。これからも自分のすべきことを着実に正確にこなしていけば、食いっぱぐれることはないんじゃないかという漠然とした自信があり……これが、いつまで続くのかは定かではありませんが。

あらためて名前の由来を考えてみると面白いですね。自分のルーツが分かる気がします。願わくば、結婚しても変わらない金運であってくれることを、祈るばかりです。

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