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阿呆なんか2023

アホなんか?

集団の大した意味も持たん慣習が苦手でね
飲み会の終盤、赤ら顔のおっさんが場を締めるために軽く挨拶。「前途を祝して一本締めで締めさせて頂きます!お手を拝借、よーっ、パンッ!」「ワーッ」「ありがとうございましたー」「ほんと是非今度行きましょ〜」「身体だけは気をつけてくださいね」「お前コンニャロ!お前は〜」などなど飛び交う言葉一つ一つにずっと心の中で『アホなんか?』と唱えてしまう。歳を重ねれば自然と慣れていくもんかと思っていたが無理のようで年々そういった慣習が不自然でしょうがなく思えてくる。
私が身を置く演劇界やお芝居の世界などは沢山の慣習、習わしが存在し『アホなんか?』が止まらないのだ。
今日は私が患う『円陣病』についてお話ししよう。
『円陣病』は別名『気合い入れ病(ヤマイ)』とも呼ばれていてですね、あの、みなさん、円陣って知ってます?あの、舞台の本番前、出演者やスタッフなどと共に丸い円陣を組んで代表の人が掛け声を上げるとみんなで「おー!」だの「わー!」だの叫んで己を奮い立たせる愚行があるんですよ。ランダムで組むから男女関係なく割と近い距離で顔突き合わせて下向いた状態で「えー、無事、みんなで、こうして本番を迎えることになりまして、、えー、ほんとに…」みたいなまごまごしたスピーチを代表の人がして「ヒュー」だの「キャー」だの囃し立てる輩が居たり、まあ一言で言うと地獄のように面白くない慣習がありまして、この鬼糞おもろない慣習をするためだけにですね、我々キャストは客席開場前の忙しい時間に早めに舞台に集めさせられて一致団結させられるんですよ。
ええ、お察しのとおり『アホなんか?』無限ループでございまして。『円陣病』とは円陣恐怖症のようなものでしてとにかくこの円陣が苦手で仕方がないのです。そこのあなたもいい大人が肩組んでる絵を想像してみなさいよ。各々本番前なので既に衣装に着替えてたりする人もいるわけですよ、スーツの人、ドレスの人、泥棒の格好してる人、全身タイツの宇宙人、そんな集団が円陣組んでる様子をドローンのように俯瞰で見たら面白いけど、当事者だったら顔真っ赤っ赤でロウリュ直後のサウナーのような顔面になってしまいますよ。とにかくこの円陣とやらが嫌いで苦手で、初めての現場なんかでは本番前のこの円陣が行われるかどうか気が気がじゃない。ハラハラドキドキで舞台の本番なんかより緊張しちゃう始末。
…でも、なんでしょう、えらいもんですね、この世界入ってまあ、10年くらい、やってきて最近ちょっと下の世代の人達とかとお芝居をやらせていただく機会が増えたのですが、ぜんぜん円陣やらないんですよ。確実にその風習は消えつつあるんです。コロナもあってみんなフェースガードしてまで肩組みたくないだろうし、なにより『無意味』だと思う世代にようやくなってきたのでしょうか。でも、おかげで少し不安が取り除かれて最近ではノンストレスで現場に向かわせて頂いてます。ええ、ほんと、ありがたい話です。はい?なんでっか、そんなん言うて大丈夫なんか、って、、へえ、意外と大丈夫なんですよ、えらいもんですね、過去に僕が円陣を組んできた集団とか劇団さん、見事にあまり活動を継続されていないところが殆どでして、あっしが憧れた心から面白いなあーと思う劇団さんではこれまたえらいもんで、本番前円陣のえの字も出まへん。出番前にコーヒー飲んでちんこ掻いて「ほなら行ってくるわ〜」てなもんですわ、粋でっしゃろ? あっしはこんな人らに憧れてますさかいに、『円陣』が苦手ですねん。

敬具

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