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私の本音はいつも身勝手。

エッセイを書き始めて一年と少し。ラジオも始めて、最近はラジオの実況などをしている私が先日、マンガ化された。

私もついに二次元の住人である。きゃわいい女の子と共に、キャッキャウフフできる体を手に入れた。トラックに跳ね飛ばされて異世界に転生する権利が与えられたと言っても過言ではない。そんな奇跡の一歩を今、踏み出したのだ。

などと浮かれているのには、マンガになった以上に、私をマンガ化してくれた人が大好きだからに他ならない。ワダシノブさん。という。

@われわれ放送局(仮)という、WEBラジオ放送局を立ち上げた際に、やりましょうと名乗りを上げてくださった方である。むしろ私のほうがワダシノブさんを一方的に知っていたと思っていたのでメッセージがあったときはとても驚いた。

具体的なやり取りを始めたときの第一印象と言えば、改めてどんな方なのかプロフィールを確認したとき、フォロワー数の桁が私より二桁多かったので「やべぇフォロワー数の人キタコレ」と、胃が縮こまったのを覚えている。フォロワー数=戦闘力、そんな公式が頭に浮かんだ。もちろんそれが全てではないことは理解しているつもりでいたが、いざ目の前にドドンと数字が並ぶと「やべぇ」以外の感想は出てこなかった。あぁ、偏見にまみれている

改めてタイムラインを眺めた。見たことあるマンガを見つけ、読み返すたびに「あぁ、このマンガも……そうなのか……」と、恐れおののいたのは事実である。

七月の中旬、ワダシノブさんからTwitterからメッセージが入った。

『#学校がしんどい君へ』という企画のURLと一緒に「キッチンタイマーさんなら、どんなことを思うのかなぁと思って」という質問だった。そこから、言葉をかわすうちに「マンガにしませんか」という話が持ち上がった。

どうなるか分からなかったが、とてもワクワクした。自分がマンガになる。滅多に無いことだ。しかし同時にネガティブな気持ちでもあった。

正直、学校がしんどかったときはマジで声かけないでほしかった。というか、いいこと言おうとかしてくるやつばっかでウザい。それが掛け値なしの私の本音だった。私に何かを伝えようとしてくる人すべてが面倒くさくて仕方がなかった時期である。だから、私はこの企画でマンガになることにワクワクしていながらも、誰よりもこの企画のアンチになりうる男だった。それを、どう伝えていいものか、そもそも伝えていいものか、とても迷いながらメッセージを打った。

ワクワクした気持ちと、自分の気持ちをマンガにして、学校がしんどいという人へ伝えるマンガにすることへの抵抗が、胸の中でモヤモヤと湧き上がっていた。そして考えた結果「面白かったらぜひ」とメッセージを返した。そして、昔noteに投稿したQ&Aのリンクを張った。それで、面白いと思ってもらえたら、そのときはマンガにしてもらおう。数度のやり取りを経て、漫画になることが決まった。

「漫画にしてもらえるならぜひ」という気持ちが不安に勝ったのは、ワダシノブさんのマンガが好きだったからだ。印象に残っているのは「結婚式」というタイトルのマンガである。かわいい女の子二人が出てくるマンガだ。恋愛は女の子同士ですればいいよね、と思っている私にはかなりストライクだった。

ワダシノブさんは物語の最後、心に思ったことが言葉として出ないまま、心にとめる表現がめちゃめちゃにうまい。誰に伝えるわけでもなく、ただ言うまでもないけれど思ったこと。そんな、絶妙なバランスで最後を締めくくる。ワダシノブさんが「ここでとめたい」と思う場所は、本当に伝えたいことの一歩手前のちょうどいいところなのだ。

ワダシノブさんの思ういいところでとまったメッセージが見てみたいと思った。そしてそれはきっと私のかけられてきた無責任な綺麗事よりも、ずっと人の心を掴むだろう。

進捗報告で原稿が送られてくる。私はその原稿を読みつつ、インタビューをに夢中で答えた。すべて話せばちょうどいいところでワダシノブさんがとめてくれる。そんな気持ちだった。

私の本音はいつも身勝手だ。

伝えないでほしい。声をかけないでほしい。放っといてほしい。

差し出された手を振り払うのが、あのときの私だった。そして、今の私があの日の私の前に現れても、決して良き理解者にもなれなければ、希望を与えられる大人にもなれない。

「だからきっと、声はかけないと思います」

企画を根本から否定しかねない言葉も、ワダシノブさんは黙って聞いてくれた。そんなんじゃ話が進まないのではと、私は少し思ったけれど、そんな気持ちは取り越し苦労に終わり、一つのマンガが完成した。

『どうして学校いかなかったの?』

学校がしんどい君へ。かけられる言葉の一つ一つがしんどい君へ。私は君とすれ違う、何でもない大人の一人になりたい。

そんな私のわがままも、一緒に乗せてもらったマンガです。


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