2021.03.20 春のちらし寿司ができるまで。 3月のミナトゴハン
”ミナトゴハン”では月に1度は魚を使って小さなイベントをしています。メンバーは無論お魚好きの方々。
今年は去年に続き自粛でお花見ができなかったので、せめてお弁当を眺めて楽しい気持ちになっていただけたらと、3月は2日に分けて”春のちらし寿司”と”春の焼き魚弁当”の会を企画しました。
今回は1日目に作ったちらし寿司ができるまでのお話しです。(レシピは載せていません)
なかなかこのような手のかかるお弁当を作る機会がないので今回はとことん手間をかけてじっくりと作ることを楽しむことにしました。
まずはお弁当を買いに。
まずはちらし寿司と焼き魚弁当を買いに行きました。価格帯の違うものを3種類。ご飯の量、魚の量がどれくらい入っていれば食べる側が満足するものなのかなと普段から気になっていましたが実際に計った事はありません。ちょっと嫌なお客ですが、全て分解してgを出しました。
ごはんの量は大体180〜200g 魚は40〜60g。値段によって魚の量が変わりますがご飯はみんなおなじくらい。今回魚は大幅に増量します。ごはんは200gに。
お弁当箱を決める。
お弁当箱によってイメージはだいぶ変わります。自然を感じるためのお花見ですので素材は木のものに。形もシンプルで気に入っているので普段から機会があるとよく使っています。
次に盛り付けのイメージを決めていきます。
まずは脇役たちを考えます。
必ず入れたかったのが山菜のお浸し。イメージは2年前に行った利島という島で散歩した時に見た散歩道。いろいろな木々の芽が島中にあふれていてとても幸せな時間でした。
そしてこれは副菜ではありませんが、錦糸卵を使った穴子寿司を。こちらは房総の春の陽射しといったところでしょうか。
イメージを絵にします。
そんなことを考えながらお弁当箱の中のレイアウトを絵に描いていきます。材料を買った時点で、仕込んでいる途中、盛り付けてから、と何度か書き直します。
今回はきっちり詰めず、斜めに配置して散歩道の一角を切り取って箱に詰めた雰囲気で。
かなり面倒なことをしているようですが、このプロセスが自分にとっては楽しいのです。こちらは完成したもの。これをお弁当と一緒にお渡しします。
魚を仕込む。
メインのちらし寿司にのせる魚はもちろん旬のもので。魚の旬って本当に移り変わりが早く、ちょっと日にちがたつとお目当ての魚がいなくなってしまったり、脂が落ちてしまったりする上に、海が荒れると昨日まで並んでいた魚がない、なんてこともしばしば。
お目当ての桜鱒はいい感じ。サワラはもう脂が落ちてきてしまって、イサキはもうちょっと後かな。貝はもう大きくなって結構いいよ。なんて美味しそうな話を聞きながら選んでいきます。
今回はお天気も良く、それはそれは見事な魚たちがやってきました。思い切って9種類。お寿司を食べる日にちょうど美味しくなるように仕込んでいきます。
と言ってもプロの職人さんのようにはいきませんので、その都度この魚は果たしてこれがベストな仕込みなのか、と自問自答しつつやっています。
真鯛は昆布締めにしてから湯引きに。
太刀魚は昆布締めにしたものを炙って使います。他の身は焼き魚弁当用に粕漬けに。
シマアジは昆布で締めておき、盛り付け当日にゆずの果汁に軽くつけます。青背の魚にゆずは本当によく合います。
春子(かすご チダイ)は昆布で締めた後、皮目にお湯をかけて柔らかくしてから米酢に通してひと晩おきます。
桜鱒は塩をして水分を出してから冷凍したものを刺身で。上品な脂がとろけます。他の身は焼き魚弁当用に塩漬けに。
剣先いかも、おろしてからひと晩以上冷凍し、切り込みを入れて湯引きに。刺身よりも旨味と食感が引き立ちます。
帆立貝はしょうゆ麹漬けに。
平貝は白味噌と粕の漬け床にに漬けたものをスライスします。漬けるといってもほんのり香る程度の薄味で。
穴子は煮ました。薄味で柔らかく煮ておき、盛り付け前に身を取り出して煮汁を煮詰めます。
最後に白魚の沖漬け。生しらすに醤油と酒を合わせて。
アラも使います。酒蒸しして身をとり、他はだしをとります。
左がちらし寿司につける鯛の骨のだし汁、右が焼き魚弁当につけるシマアジ、太刀魚、鯛の頭の出汁です。冷蔵庫に入れておいたのでゼラチン質が固まっています。
取り出した身は次の日のお弁当に使う鯛のでんぶに。
これで魚の仕込みが終了。穴子以外は自分でおろしているのでかなりの時間と重労働!ふう。
前日に仕込むものを作ります。
魚たちはこのまま2日ほど冷蔵庫に眠っていてもらうので、副菜にするお浸しの材料を買いに行きます。何種類の緑を合わせられるか。イメージ通りのものがあるかドキドキしながらいつもお世話になっている築地の八百屋さんへ。
店先にはラッキーなことに、今日届いたばかりという新潟のおばあちゃんが今年初めて山の中に入って採ってきたという山菜や房総の菜の花などが並んでいました。不足分は近所の野菜が美味しいスーパーで。
これらは全ておひたしにします。タラの芽は苦味が強いのでしっかり水にさらしてから、わらびはアクを抜いて。他に菜の花、こごみ、絹さや、甘草、そら豆、スナップえんどうなど。
浸している姿を見ているだけでも散歩に行った気分になれます。
他に錦糸卵、寿司酢、すし飯に混ぜる生姜やレンコンなど、必要な細々としたものを揃えておきます。
添え物は事前に。
ちょこちょこと添えるものは事前に時間がある時に仕込んでおきます。保存食を作るのが好きなので、仕込んであったものを使うことも多々あります。
今回はうどのピクルスの新芽部分。花わさびの醤油漬け、花は飾りに、茎は箸休めに添えて。カブの梅酢漬けなど。
わらび、タラの芽など。全ておひたしにします。
おやつも忘れずに。
ちらし寿司を食べた後はちょっと甘いものも。かといって当日はお寿司を作るだけで手がいっぱいです。こちらも事前に仕込んでおきます。
1週間ほど前に白インゲン豆と空豆の餡を作り冷凍保存しておきました。後は数に分けて茶巾できゅっと絞るだけの簡単なおやつですが、少し春を感じられるかなと。
当日は酢飯づくりと盛り付けに専念。
やっと全ての仕込みが終了。後は当日に酢飯を作り、刺身を切り分けて盛り付け流だけ。
酢飯はレンコンと生姜入りの米酢のすし酢。穴子寿司用には甘めで香りの良いゆず酢のすし飯。
酢飯2種→パックに入れた花わさび→副菜→穴子寿司部分→メインの魚→ピクルス類を盛りつけていきます。
ちらし寿司というと、いくらが入って色がキレイなものが多いですが、ここは旬を優先し、あえて入れずに柔らかい色合いに。
春になり山のウグイスの鳴き声が上手になったというかわいいいニュースを先日教えていただいたので、山菜のおひたしにはにんじんのウグイスを一羽、穴子寿司の黄色い部分には菜の花のつぼみをのせました。
ついに完成です。出来上がった”春のちらし寿司”は鯛の出し汁と一緒にお魚好きな方々の元へ旅立っていきました。
次の日は”春の焼き魚弁当”づくりに。