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チャコの’開発’物語。数珠つなぎが枕を変えた。

まくらのキタムラ 北村圭介

90年以上、睡眠に関わってきた枕メーカーのデキること、すべての思いを一つの枕に込めたら、どんなものになるか。そんなきっかけで、プロジェクトは始まった。

「日本人は本当にクレイジーだ。」
そういわせる枕を作りたかった。
世界を眠らせる日本の枕

タグラインにそう記し、キービジュアルには名峰・富士山を。いわずと知れた、日本を代表する名山である。それに恥じない覚悟を示していく。

日本人にしかない感性で。
日本人にしかできない発想で。
世界が驚くまくらを作りたかった。
まっすぐな姿勢。
丁寧で正確な仕事。
細やかな心遣い。
90年間、受け継いできた
職人の知恵と技術を、
そこに惜しみなくつぎ込んだ。
静かに、深く、
気持ちよく、眠れる。
新鮮な朝日が、あなたを透かす。

世界が眠る日本のまくら。
「chaco」誕生

そこに秘められた特殊技術の開発について克明にお伝えしよう。

威信をかけた挑戦

現在のチャコは実は、3代目だ。初代は2009年に誕生し、その後、2011年にベーダ版を発売している。プロダクトのコンセプトは、「エグゼクティブに相応しい眠りの探求」

日々忙しく過ごす彼らにとって、例え短い時間であったとしても、質の高い睡眠を摂ることは、明日以降に控えた大切なジャッジメントに備える、何よりも代え難い貴重な休息になる。

「これでなければ眠られない」という欲求に対して、高い使用価値で応えていかなければならない。

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中材を繋げる、その意味、その効果。

コンセプトを実現させるために、ある一つのアイディアを考えた。

すべての中材をコネクトすると、枕はどうなるか。

それらは、おそらくバラバラと散らばらずに、一つに塊になるだろうが、果たして、それが、ヒトの睡眠に、どう効果をもたらすのか?

そこへ荷重が加わったときにも、中身が偏らず(逃げず)に、お互いがお互いをつなぎ止め合い、身体(頭部)を支え続けることができるのだ。

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そして、そのコネクションには、厳選した糸を使わなければならない。なぜなら、単なる糸で素材を繋ぎ合わせると、突っ張ってすぐに切れてしまったり、硬く感じたりしてしまう。糸が伸び縮みするポリウレタン製を用いることで、枕が受けるショックを吸収・分散させるのだ。

またビーズ枕特有の偏りの問題がある。
キタムラの枕 KMシリーズでは、構造的に軽減されているとはいえ、流動性が高いからこそ、一方を持ち上げれば、中材は偏る。偏れば、高さが変わるから、厳密にいえば、頭の支え方が変わってくる。場合によっては、寝違えの原因にもなりかねない。

コネクトされた中材たちは、ある意味、その場で自分の役割を発揮するようになる。いい仕事をする。定位置で、頭を支えることになるので、まくらとして、例えば、ウレタンや立体ファイバー系などの単一素材一体型の枕と同じ機能が、ビーズ枕で実現することになる。もちろん素材ごとの高さ調整機能は担保したままで、だ。これは実に画期的だ。

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キタムラ枕のこだわる特徴として、厳選した複数の素材を活かす。それぞれの感触(個性)は大きく違うが、頭部や頸部を支えるにはとても大切なのだ。

どうだろう。これは、まるで多様性に満ちた組織をまとめ上げ、最高のパフォーマンスを発揮させる、名うての経営者のようではないだろうか。

ブレイクスルーは突然に。

とはいえ、繋ぐという突拍子もないアイディアは、さて、どうやって実現をさせるのか。これには、相当悩んだ。

考えることはできる。
そして、理屈も理解できる。
ただ、本当にチャレンジするものだろうか。

やり方はわからないし、誰もやってないし、コストも分からない。ないないづくしだ。しかし、世界を眠らせる。クレイジーと言わせるためには、途方もないことを平然とやって見せねばならない。

パッと思いつくところで、実際にお数珠を購入したり、ビーズのブレスレットづくりの動画をみたり、研究に研究を重ねてみる。

「こんな方法でビーズアクセサリーは作られているのか?」と驚かされた。なかなか原始的だ。物は試しと、まずは手作業でやってはみたが、観るに耐えかねる、イライラ動画。。。こんなことしてたら、埒が明かない。

そうして、ああでもない、こうでもないを毎日、考えながら、ある時、出張帰りの新幹線の中、トンネルに入った瞬間、「ああっ!」と降りてきた。

これだ!

というのも、パイプ素材が一直線に並んだ状態で、そこを織機のシャトル(ショットと書いてあるが)のように紐をつけたものが抜けていけば繋がると考えていた。当時、ノートにそんなイメージのイラストを描いている。それと、自分が乗っている新幹線がまさにリンクしたのだった。

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それでも、「じゃ、どうやって不揃いなパイプ素材を一列に整列をさせるのか」という課題があるが、ここから先は、恐れながら企業秘密とさせてほしい。

思わぬ出会いから、この方法に至ったのは、まさに奇跡としかいいようがない。運がよかった。「念じれば花ひらく」という坂村真民先生の言葉の通り、想いがあれば、何事も成就できるのかもしれない。

5万個以上を繋ぎ、11時間かけて完成

まあ、そうはいっても、いずれにしても手作業ですべて行っているから、相当な時間がかかる。もはや枕バカの意地である。以下、多少は前後するが、枕一つに対しての中材の数量だ。

備長炭パイプ   → 47880個
活性炭エラストマ →   4810個
イオンコルマ   →     423個
パーネスコルマ  →     430個
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      合計 = 53543個

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このような手作業である。通常量産される枕と比べて、一体、製造にはどのくらいの時間を要するのだろうか。基準を揃えるため、1個分だけを作る同条件として比較すると、

選べる枕 55分
プラス   130分(1時間10分)
チャコ   660分(11時間)

日の丸枕の誕生

このような気の遠くなるような時間をかけ、一つの枕を仕上げている。もちろんこれ以外にもこだわりはあるが、それは別の機会に譲るとしよて、もはやこの枕は工芸品といっても過言ではないだろう。Japanese Crafting MAKURA Pillowだ。

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全体として、黒を基調とし、赤いアクセントのあるデザインについても、決して奇をてらったものではなく、炭や漆といった伝統素材や技法に見られるような、豊かな眠りを純粋に追求した結果の機能美と言っていいだろう。

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つまり、目指すのは、物質的な、例えば煌びやさや豪華、贅沢感ではなく、あくまで真のラグジュアリーとは何かという本質を追求した、その先にある眠りなのだ。

それは、単に人間の根源でもある「欲」を満たすのではなく、生命の源に訴えかけ、明くる日の目覚めと共に呼び覚ますこと。

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CHACOという枕に、枕屋ができる、すべての叡智を注ぎ込んだのは、そういう気概を込めている。「どうだ!」と主張するのは、奥ゆかしさを重んじる日本人らしからぬ。

ただ、この日の丸枕を見れば、知れば、使えば、そこからにじみ出る深いこだわりに「クレイジー」という称賛を値えられずにはいられないだろう。(チャコの英語版はこちらから)

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ご購入はこちらから。ギフトにも大変、喜ばれます。

まくらのキタムラ
北村圭介

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まくらのキタムラ 北村圭介
枕屋です。【元気な「おはよう!」を創る】を経営理念に、いつも枕のことばかり考えながら過ごしています。2011,2012,2016年グッドデザイン賞。また日本のものづくりを応援するNPOメイド・イン・ジャパン・プロジェクト 前代表理事。