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のらねこ旅日記≪大学夏合宿≫

  少し前にどこぞの大学のサークルが宿泊先で迷惑行為なんてニュースを目にしました。
  今はSNSであっという間に拡散し、炎上しますが、昔からこんなことは、ちょいちょいあったと思います。

  大学で私は『レザークラフト部』に所属していました。主な活動は、革細工で財布やバッグを作り、学園祭で売るというもので、学園祭前以外はゆる~く活動しているサークルでした。
  私が1年生の時の夏合宿は、会津磐梯山のおしゃれなペンションでした。
サンリオでキャラクターデザインをしている知人に描いてもらったという、マスコットキャラの壁画がかわいい宿で、滞在中半日だけ持ってきた革細工をやり、後はテニスと観光でした。
 個人的には楽しい合宿でしたが
「部活の合宿なんだから、もっと部活の時間を長くとるべきでは!」との声が一部から上がりました。
  そんなわけで、私が2年生の時は、越後湯沢のスキー客向けホテルが合宿の会場になりました。
夏場のスキー場なので、観るところはなく、近くに体育館とテニスコートがあるだけでした。
  それでも、1年生の○野君はテンション高めでした。
彼は地方出身で、入部当初から東京の大学生活が楽しくてしょうがない、ワフワフしているワンコのような子でした。
  初日の夜、ホテルの一室に集まって、ゲームをやっている時でした。
楽しくてしょうがない○野君は、テンション爆上がりのまま、何の脈絡もなく、ベッドからジャンプして、天井に出っ張っていたコンクリの梁に頭を激しくぶつけました。
  頭を抱えうずくまる○野くんに、副部長さんが「大丈夫か?」と彼の頭を見ました。
すると、頭頂部より少し前のところが、3cmほどバックリと切れて、出血していました。
  天井を見上げると、コンクリの梁の角の部分が少し欠けていました。
  この後、○野くんは部長さんに付き添われて、夜間診療所に行きました。
お医者さんから「お酒を飲んでいたのですか?」と聞かれ
「いいえ、飲んでいません」と答えた部長さんは
『むしろシラフでこれやっちゃった方が恥ずかしい』と思ったそうです。
傷はテープで塞ぎ、その上から包帯をまかれて、さらにネットを被せられて戻ってきた○野くんは、頭頂部のネットがすぼんでちょっととんがっていたので、昔のアニメにちなんで
『ハッチ○野』と呼ばれるようになりました。
   こんな怪我をしても、○野くんは元気全開で、翌日の野外バーベキューでは、またもやテンション急上昇で、横の斜面(たぶん冬はスキー場)を駆け上がり始めました。
お医者さんからは、なるべく安静にと言われていたので、部員みんなで
「登っちゃだめだよ~」
「降りてこいよ~」などと声かけしましたが、なかなか降りてこないので、とうとう
「戻ってくるな~!バカヤロー!」と
部長さんの叫びがスキー場にこだましました。

  翌年、私が3年生の夏合宿も越後湯沢で、今度は旅館でした。
この合宿もただでは済みませんでした。
  まず1年生女子が手を虫に刺されました。
最初はフツーの虫刺されかと思い、キ○カンぬって様子を見ていたら、手首の方までパンパンに腫れ上がってしまいました。
どうやら、ブユに刺されたようで、宿の人に診療所へ連れていってもらいました。
でも特に治療方法がないので、消毒して腫れた手を冷やすために湿布をして、ひじから下を包帯ぐるぐる巻きにされて帰って来ました。
  翌日は、2年生女子がテニスコートで玉を拾おうと雑草が生えた所に入り、板に刺さった古釘を踏んでしまいました。
板ごと引っこ抜くと、それは五寸釘で、足から出てきた釘の長さに驚いた彼女は泣き出してしまいました。
  急いで診療所に連れて行き、足の手当てをしてもらいました。更に予防のために破傷風の注射をうたれました。
  その後、彼女は大事なく治りましたが、2年連続で流血事故があったので、
「来年はどこかお祓いに行こうか」などと皆で話し合いました。

  4年生の夏は、ゼミの夏合宿で山中湖へ行きました。
うちのゼミは大所帯だったので観光バス1台貸し切りでした。
  一番偉い名誉教授の老先生の誕生日が近いこともあって、ゼミの助手さんが、地元で有名なケーキ屋さんに注文したデコレーションケーキを3箱持ってきました。
助手さんは、バスに乗る時にケーキ2箱を一番前の座席に置き、もう1箱は運転席横の台の上に置きました。
『危ない場所に置いてるな』と思って見ていると、案の定、河口湖前で左折をした時に、台の上のケーキの箱が吹っ飛んで出入口のステップの上に落ちました。
  その晩、老先生のお誕生日会で、ケーキが御披露目されました。
かわいらしい小人さんが飾られた、メルヘンチックな特注ケーキで、切り分けられ、皆にふるまわれましたが、
一番末席にいた私たちの前には、あの吹っ飛んだケーキが箱ごと置かれました。
ふたを開けると、中のケーキは原型をとどめておらず、スポンジとチョコクリームの塊と化していました。
「別に味は一緒だし、切り分ける手間もないし」と、私たちは大きなスプーンで、この塊ケーキを取り分けました。
  食べ始めると、中から上に乗っかっていたであろう、まるごと苺やマジパンの小人さんが出てきて、ちょと何が出てくるかわからない闇鍋気分でした。


  

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