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のらねこ日記 ⑪

新築のわが家

  昔の人で建具職人の父は、この家を建てる時、和室ばかりの設計にしました。
  その新居に、猫2匹を投入。
結果は火を見るよりも明らかでした。
アパートにいた頃は、夜だけ室内に入れていたので、ここまで凄まじいとは、思ってもみなかったのです。
  買ってあげた爪とぎには目もくれず、
猫さんたちは、いたるところで爪とぎをしました。
  畳はささくれ、居間の襖は、あっという間にボロボロになりました。1度は襖の張り替えをしたものの、また直ぐにやられると踏んだ父は、居間の襖を裏返してセットし、包装紙を貼って補強、来客がある時だけ表にすることにしました。
   窓の障子も穴だらけ、障子の骨は爪とぎのせいで、かどが取れてしまい、父は障子紙を張り直したり、障子本体を作り直していましたが、きりがなかったので、居間の障子のよく破られる部分は紙を張ることをやめて、被害が甚大だった2階の両親の部屋は、早々に畳と肘掛け窓の和室から、出窓とフローリングの洋間にリフォームしました。
  各部屋の入り口の柱は、猫たちがスリスリするので、丁度猫の背の高さの所が黒ずんでいました。その黒ずみは拭いても落ちなくて、父は、そこにガムテープを貼りまくりました。
  2階の両親の部屋には、作り付けの洋服ダンスがあり、ミケさんはその引き出しを器用に開けて、中の衣類を引っ張り出して自分が入る技を修得しました。そのため冬場は、セーターが猫っ毛まみれになりました。
  ある日、引き出しの閉まったタンスの奥からミケさんのくぐもった鳴き声がしました。
引き出しを引っ張り出すと、引き出しの向こう側にミケさんがいました。作り付けの構造上、引き出しの奥には空間があり、体の柔らかいミケさんは、引き出しらそちらに移動して、奥から引き出しを引いて、自らを閉じ込めてしまったようです。そこには、引っ張り出された母の洋服がほこりまみれになって落ちていました。

背景に注目!


   


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