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のらねこ旅日記≪初めてのライブ遠征≫

  2000年以降、私の旅行はライブ遠征ひとり旅にシフトしていきました。
きっかけは、人事異動によるストレスでした。
それまでの私は好きなアーティストさんはいても、ライブに行くことはなく、人から誘われれたら行く程度でした。
それが、以前から好きだったアーティストさんのチケットがたまたま取れて、ライブに行ったらドはまりしてしまいました。
  生まれて初めて、ファンクラブに入り、次のライブハウスツアーに申し込みました。
ライブハウスはキャパが少ないから、競争率が高いのかなと、よく勝手がわかっていなかった私は、東京と、名古屋、新潟、札幌を申し込んでみました。どこか1か所当たればいいか、ぐらいのつもりで。
  結果は、東京以外全部当選でした。
名古屋は日帰りできるからいいとして、新潟と札幌は間が1日しか空いていませんでした。
丁度その年、私は勤続20年のリフレッシュ休暇が取れることとなり、それを使って新潟~札幌のライブ遠征に行くことにしました。
  まずは、名古屋。季節は冬。
整理番号が後ろの方だった私は、ちょっと焦りながら入場しました。
コートとバッグをコインロッカーに預けたかったのですが、パッと見ほとんど空いていませんでした。
が、よくみると一番下の段で空いている所があったので、急いでコートとバッグを突っ込み鍵をかけて、会場に入りました。
  真ん中よりやや後方に立ち、ライブに参加しましたが、前方はかなり密集していて、ファンの皆さんの熱量のハンパない感が伝わってきました。
そのうち、人々の頭の上を人が転がっていくのが見えました。これが『ダイブ』で、密集して押し合い圧し合いするのが『モッシュ』ということを後で知りましたが
『なんか、すごい…』がこの時の感想でした。
ライブ終了後、新幹線の時間もあるので、私はすぐにロビーに出てロッカーから荷物を取り出しましたが
『ん?奥に何か入っている』
そこには誰かの上着が入っていました。
もしかして、誰かがロッカー確保のため上着だけ入れて、トイレにでも行っている間に、私がその上から荷物を入れて閉めてしまったのか!
一番下だったので中もよく見えてませんでした。
『ごめんなさ~い!』と心で謝りながら、逃げるようにライブハウスを後にしました。

  次に新潟、今度は整理番号がよかったので、思いきって最前列エリアに入ってみました。
大きいライブハウスは、縦横の柵で幾つかのエリアに分けられています。
私は最前列エリアの上手の一番後ろで、2番目の柵を背に立っていました。
ライブが始まると、そこは密集地獄と化しました。どんどん横から人が入っていて来ましたが、柵を背負っている私はそれ以上後ろに下がれないので、柵から上の上半身を海老ぞりの体勢で耐えました。
でもとうとう耐え切れずアンコール前に最前列エリアから出て後ろに下がりました。
それでも、間近で体験したライブの迫力に軽く興奮状態になった私は、ホテルに戻ると、(ちょっといいホテルに泊まりました)ルームサービス頼んで、飲めもしないのに、ひとり、ビールで祝杯を上げました。
  翌日は、飛行機で札幌に移動しましたが、SNS情報で1本前の便にアーティストさんが乗っていることを知りました。
『ファンの皆さん、ちゃんと狙って移動しているんだ』と感心しました。
  札幌は雪で新潟よりもずっと寒く、私はライブに行く服装に悩みました。
入場まで整理番号順に並んで外で待機する間、コートを着ていると中に入ってからロッカーに入れなければなりません。
でも名古屋のようにロッカーが空いていないリスクがあります。
外のロッカーに前もって預けると、待ち時間コートなしで耐えなければなりません。
結局私は、コートを外ロッカーにいれて、長袖Tシャツにフリースで、中に入ったら、フリースを脱いで腰に巻く作戦にしました。
  ライブ当日、同年代ぐらいの女の方が私と同じような格好で並んでいました。
その人と『寒いですよね~、早く入りたいですよね』などと、腕組、足踏みしながらおしゃべりしていると、隣の立体駐車場から、若いファンのお嬢さんがぞろぞろと出てきました。
地元の方なのか、皆さん半袖Tシャツやタンクトップの子もいて
『若いってスゴい!』と思いました。
  会場に入ると、私は2柵目の前方に位置取りしましたが、ライブ中盤で私に突然の悲劇が訪れました。
後ろから転がって来たダイバーさんのかかとが私の頚椎にヒットしたのです。
新潟ではダイバーさんに遭遇していなかったので、完全にノーマークでした。
軽く脳震盪を起こした私は、会場から通路にでました。
そこは、最前列の圧力と暑さで具合の悪くなった人がバスタオルを敷いた床に寝かされていたり、いすに座らせてお水を飲まされたりしていて
『ここは、野戦病院か?』と思いました。
2曲分ここで休んで会場戻りましたが、
休んでいる間、最前列まで転がったダイバーさんが通路に一旦出てきて、また後ろのドアから入っていて行くのを、何度も繰り返しているのを見て
『やっぱり、なんかスゴい…』と思いました。
  翌日も札幌でライブでした。
この日はがんばって最前列エリアに入り、密集に耐え、ダイバーさんをやり過ごし、最後まで最前列エリアでライブを楽しめました。
ライブ終了後、訳のわからない達成感でハイになった私は、ススキノで回転寿司を食べて、地下鉄に乗らずに札幌駅前のホテルまで歩いて帰ったのでした。
  これ以降、私のライブ遠征の旅は、妙な方向に進んでいくのでした。



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