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言葉の輪のダンス

文字達が輪になって、
フォークダンスを踊っていました。
文字達は、クルクル回りながら、
楽しそうに踊っていました。
そのうち、何人かが、
目が回ってきたので、休みたいと言いました。

そこへ、読点がやってきて、
僕も、ダンスに混ぜてください、
と言いました。

文字達は、みんな疲れていたので、
休むのもいいかなぁと思いました。

それから、文字達と読点達は、また輪になって、
踊り出しました。
しかし、読点は、みんなに合わせて踊るのが、
少し、苦手だったので、
みんなは、つまずいたり、転んだりして、
楽しく踊れませんでした。

そこへ、句点がやってきて、
僕もダンスに混ぜてくださいと言いました。

転んでばかりの、文字達と読点達は、 
傷だらけになっていたので、
これはよかったと思いました。

文字達と読点達と句点達は、また輪になって、
踊り出しました。だけど、句点は、
すぐに踊りを止めてしまう癖があったので、
みんなが、気持ちよく踊っているときに、
踊るのを止めてしまいます。

言葉のひとりが言いました。

「あとからやってきてくれた、句点君と読点君は、
いまもまだ、手を繋いだままで、隣同士でいるので、他の文字達とも、手を繋いでみてください。」

読点と句点は、向かいあうようにして離れ、
輪の中で、他の文字達と、手と手を繋ぎました。

輪の中の読点と句点の位置は、
まるで、お月様と、お日様が、
向かい合っているように見えました。
すると、読点の周りが暗いときは、
句点の周りは、明るくなりはじめました。
そして、逆に、句点の周りが暗いときは、
読点の周りが、明るくなっていました。

言葉達は、暗くなると、
みんな自然に眠りました。
そして、明るくなると、
また元気に踊りました。
こうして、言葉達のあいだに、
朝と夜のようなものが、生まれました。
それに合わせて、
言葉達も、眠ったり、目覚めたりしていました。
言葉達の輪は、
広がっていきました。

言葉達の輪は、とても、大きくなりました。
しかし、朝と夜が、遠く離れすぎてしまった結果、
夜の言葉達は、朝の言葉達の顔が、
わからなくなっていました。
朝の言葉達も、夜の言葉達の顔が、
わからなくなっていました。

そこへ、改行がやってきて、
おいらもダンスに混ぜてください、どすこい!

と言いました。

言葉達は、もう、どこの誰が誰で、
誰のどこが何なのか、
見分けがつかなくなっていたので、
これは良いかもしれないと思いました。

改行は、体が大きくて、とても力持ちでした。
そして、目の前にいた、朝の言葉を、
ひょいと持ち上げると、

ごっつぁんです!

と、言って、夜の言葉達がいる方へ向けて、

えい!

と、朝の言葉を、放り投げてしまいました。
そして、朝の言葉は、日付を超えて、
空を飛んでいきました。

夜に着いた昼の言葉は、
突然のことに驚いてしまって、
朝のことを、なにひとつ思い出せませんでした。
仕方がないので、夜の言葉達は、
朝の方角から飛んできた言葉に、
夕方という名前を、つけてあげました。

夕方の言葉の顔を見ると、言葉達は、
みんな、お腹がすいていたことに
気がつきました。

そこへ、子音がやってきて、
泣きながら、K S N...と呟いています。

言葉達は、その意味がわからずに、
困っていました。

そこへ、母音がやってきて、
おあー!おあー!
と叫びながら、どうやら子音のことを、
探しているようでした。

そして、言葉達の中で、
泣いている子音を見つけると、
母音は子音を、やさしく、力いっぱいに、
抱きしめました。

すると、母音の胸の中で、子音は、

お-Kあ-あ-Sあ-N

安心したようすで、嬉しそうに言いました。

それを見ていた言葉達も、
とても幸せな気持ちになりました。
そして、お祝いにパーティーをしようと言いました。
夕方は料理をして、
夜はみんなで、美味しいごちそうを、 
おなかいっぱい食べました。

それと同じ頃、朝の言葉達は、みんなで、
空の朝焼けを、眺めていました。
そして、なにか美しいと感じる、
意味のことを、思い出していました。

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