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2020年8月

263.木馬の馭者 (富ノ澤麟太郎/TAPIRUS ※Kindle)

佐藤春夫門下にして26歳で夭逝した幻の作家、富ノ澤麟太郎がKindle「木馬の馭者」で読めるのだ

映画的灰色の大正時代に、新感覚派の神経症めいた自意識が落とす影。死と詩の匂いに混じるポオの気配

月下のドッペルゲンガー「せれなあど」幻想的混濁「あめんちあ」等隠れた名品揃い!台詞も佳いのだ〜

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264.宇宙・肉体・悪魔 (J・D・バナール/みすず書房)

48年ぶりに蘇った「宇宙・肉体・悪魔」が凄いのだ

初出は1921年、僅か100頁のテクストながら、スペースコロニー、群体頭脳(シビュラシステム的な…)、シンギュラリティ等を幻視する異端の未来論。クラークに影響を与え、あらゆるSFの源となった幻の名著なのだ

みすず書房らしい渋い装丁も粋なのだ〜

甲殻類や軟体生物的な自己進化機能を待つスペースコロニーとか、
ディストピア物でよく見る円筒に脳が浮いてるやーつとか、
詩情すら漂う人類進化の最果てのビジョンとか、
まるで長大なSFを読んだような気分。ロケットすら飛んでない時代に、凄まじいのだ……

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265.柾它希家の人々 (根本茂男/冥草舎)

竹本健治、皆川博子に発掘された知られざる魔書「柾它希家の人々」読んだのだ!

奇怪な住人が潜む荒廃した屋敷の、過去と現在が交錯する忌まわしき因縁譚。屋敷ホラーにも読めるが、どろりとした高熱の筆致で語られる妄執は、ドストエフスキーや埴谷の水子霊のよう

"第五の奇書"ダークホースなのだ〜

限定千部の初版のみ、
厳重な封印を思わせる二重の外函、
折込みを開けば禍々しい家の絵画、
天地小口が黒塗りの頁、
悲鳴のような著者署名……

内容もさることながら、本から漂う妖気が凄まじいのだ……

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266.ウルトラヘヴン (小池桂一/ビームコミックス)

チェンソーマン8巻マジ奇書だったのだ…アライさん的は「ウルトラヘヴン」を想わずにいられないのだ

見よこの幻覚描写!薬物使用が日常化した近未来でのめくるめくインナートリップ。唯我論や同一化へと哲学的思索を深めていく壮大な展開は、もはや精神AKIRA

読むドラッグと謳われる怪作なのだ〜!

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267.オリオン 深井克美・全画業 (深井克美/現代企画室)

30歳で自殺した函館の画家・深井克美の画集「オリオン」探してるのだ……

ベクシンスキにも通じるような生物的歪みの幻視。苦痛を塗り込めつつも昏く輝く圧倒的な奇景の数々が、心をざわつかせるのだ

未完の遺作は、北海道ロックバンドの至宝bloodthirsty butchersのジャケットにも使われてるのだ〜

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268.展覧会の絵 (森山安雄/幻想迷宮ゲームブック ※Kindle)

猛暑は伝説のゲームブック「展覧会の絵」で凌ぐのだ

ムソルグスキーの同曲を題に、記憶喪失の吟遊詩人が10枚の絵画世界を旅するクラシカルな幻想譚
異国情緒漂う淡い挿絵と、独特なシステムで巡る白昼夢の冒険の果ては、ほうと溜息が出るほど抒情的

ゲームブックに束の間見えた文学の可能性なのだ〜


269.下水道映画を探検する (忠田友幸/星海社新書)

あの大人気雑誌!「月刊下水道」連載の「下水道映画を探検する」が新書化してるのだ

映画の内容もそこそこに、登場下水道のセット/本物判定、雨水管と下水管、作りの甘い下水道への痛烈批判、果てはネズミの生態まで、別角度すぎる愉しさが詰まった59本の偏愛レビュー

グエムルとか観直したいのだ〜


270.クトゥルーの呼び声 (H・P・ラヴクラフト/星海社)

今日はラヴクラフトの誕生日!

「クトゥルー神話ってどこから入っていいか分からない…」って話よく聞くが、今なら断然星海社「クトゥルーの呼び声」がおすすめなのだ〜

読み易くも雰囲気満点、安心の新訳で復活するコズミックホラー。そして「窓に!窓に!」とかは旧訳のまま!(真っ先に確認したw)


271.Die Diners mit Gala (Salvador Dalí/Taschen Deutschland GmbH)

夏の食欲不振は、ダリが描いた異形の料理本「Die Diners mit Gala」で乗り切るのだ

一流レストラン監修!食べることの快楽を徹底的に追求した!と豪語するダリに「お、おう…」としか言えなくなるシュールレアリズムグルメの数々

洋書のみでお高いが、詳細なレシピ(?!)もついてお買得!欲しいのだ〜

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272.アトラス 迷宮のボルヘス (ホイヘ・ルイス・ボルヘス/現代思潮新社)

ボルヘスは旅行記「アトラス」から入るのも一興なのだ

古都、トーテム、神殿、演劇…淡い写真と共に綴られる詩的弦学は、化石した時間への憧憬に満ちて美しく。
気球に乗ったり、出雲大社で神主コスする姿も微笑ましいのだw

迷宮の作家が最晩年に遺した円熟の筆致。読み易くもボルみがヘスいのだ〜

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