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弱小吹奏楽部を追いかけた軌跡 第12話 ホール練習②

突然指名された審査用の撮影依頼。
幸運だったことは、外部録音マイクなどそれなりに準備してきたこと。それがなければスマホで撮影していたかもわかりません。
今のスマホの性能は素晴らしいです。

連盟より通達の撮影ルールはいくつかあり、
①定点撮影で全体が見える状態
②映像・音の加工は禁止
③外部マイク使用の場合は1カ所に1つだけ
④動画ファイル形式はMP4・・
などなど

まぁ素人なので加工なんてできないし、マイクも一つしかない。

奇跡的に条件は整っている。このまま勢いでやるしかない。
吹奏楽部に限らず、保護者と学校とのコミュニケーションはとっても大事。身をもって体験。でも先生方だって忙しいからしょうがない。

他の保護者は昼ご飯を食べに散らばって行きます。13時までそれぞれ思い思いに。
私は気が気でない状況になって、1人、想像の中でリハーサルを何度も繰り返すハイプレッシャー状態。昼ご飯?そんな余裕なし。
スマホや現代の機器に詳しそうな保護者をピックアップして、撮影補助を頼もうとあれこれ試行錯誤。あっという間に13時になる。

ここ数年で最も余裕のない1時間を過ごして迎えた13時。
この気持ちを共有できているのは自分だけだ。
子供達、先生方、保護者達がゾロゾロと会場に入ってくる。
カメラのセッティングは済んでいる。3年生バンドマスターのチューニングが始まり、私はそれぞれのカメラの場所で正常に作動しているかどうかの確認で走り回る。
そしてピックアップしておいた保護者の方に撮影の依頼、細かな指示を伝える作業が延々と続く。気づけば15時半だ。全く曲の完成度や出来を鑑賞する余裕などない。

15時45分、顧問の先生から声がかかった。

先生『はい!それでは審査用の撮影をお願いします。準備はよろしいですか?』

その瞬間、私は舞台袖の正面向かって右側からスマホの撮影をチェックしていた。15時半から臨戦体制になっており、全ての機器の録音録画をオンにしていた。

私『はい!どーぞ!!』

むしろ早くやってよ!
全ての撮影録画機器は最大で45分程度の容量しかなかった。小編成の25人ゆえ、曲は7分間の自由曲一曲のみ。小編成部門は課題曲の演奏はない。
15時30分に全ての機器をオンにしたため、残りは30分。おそらくなんだかんだで一曲撮り終える頃には、撮影能力残り20分。
通しで一曲終わった後、先生が指示・修正をしたとしても、あと一曲は撮影できる時間配分。
よし、いける!もう一曲やろう。先生、どうぞお願いします!

先生『はい!それでは10分間の休憩。トイレなど済ませておいて、最後に一曲通しでやりますね』

休憩いらねっす!先生!!
心の中で絶叫しながら、5カ所の撮影・録音機器のスイッチをオフにするため走り回る。
おそらく人生で最も体感的に短い10分間を経験した後、再び演奏を開始。
もう一つ一つの機器をチェックする時間など無かった。
もしかするとカメラの1つ2つはSDカードの記憶容量がMAX近くに到達していて、曲の途中で録音録画を停止する可能性があった。

兎にも角にも、2回目の演奏が始まった。
あとは野となれ山となれ。

ホール練習は終わった。
撮影や録音した機器がちゃんと作動していたかどうかのチェックをした。この時が1番緊張感が走った。すでにホールを使用していい契約の時間は過ぎている。
どうにか全ての機器は正常に作動していた。

ホール練習後、ロビーで保護者を集めて先生から話があった。部員28名中、25人が本番の演奏をする。残りの3人は補助として帯同してもらう。その3人もこれから頑張っていこう、そんな趣旨の話だった。

わずか数ヶ月前、新入部員獲得のために奔走した子供達。より大きな成果を得たものの、3人の補欠メンバーを作ってしまった。
3人の保護者はそれぞれ私のすぐ近くにいて、誰も腐るような様子は見せなかった。
前もって知らされていたのかもしれない。

今日がホール練習、明日が撮影した動画を連盟へ提出する締切日。つまり、今夜中に動画編集を完了してUSBへデータを入れる。明日子供にUSBを持たせて顧問の先生へ渡してもらう。

クタクタになって帰宅。。。
審査用のガチ動画、保護者・先生向けの編集動画の2つを作成。
布団に入ったのは・・、もう空は明るくなっていた。

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