弱小吹奏楽部を追いかけた軌跡 第18話 県大会の景色

いよいよ県大会へ向けてスタートした吹奏楽部。毎日毎日祝福の言葉を各方面から頂き、夢のような日々が続く。

なぜそんなに上手になったのか?
どうして急に地区を突破できる程の実力をつけることができたのか?

毎日そんな質問が私に飛んできたけど、『それは〜です!』なんて大根切りのような回答はできず、先生・子供達・保護者達が一丸となって取り組んだ結果だと説明しておいた。
説明しようものなら本一冊分の文字が必要だ。

県大会の会場は、アンサンブルコンテストの全国大会でも使用されるほどの良いホール。
胸が高鳴ります。

当日を迎えた。

午前の早い段階での演奏順番。
集合時間は朝の5時。そこから音出し、最後の合奏練習が始まった。そしてバスで出発。

出発の時、保護者や家族兄弟姉妹がたくさん集まった。早朝にもかかわらず、1年前には想像もできないくらいの人数が駐車場を埋め尽くしている。
感動の光景だった。

現地に到着した。他の地区の保護者達がおそろいのTシャツでそれぞれ集団を形成している。
我々は勝手が分からず浮き足だっている。
会場に入った。

今まで経験したことがない広いホール。
ここで娘達が演奏するのか・・
信じられない光景が目に入ってくる。
とにかく巨大なホールだ。

娘達よりもずっと前の順番の中学校が演奏を開始していた。各所のモニターにその光景が映し出されている。演奏が終わるまで客席には入れない。

座る場所があるのか?
他の団体はどんな演奏をしているのか?
気になるし、精神が落ち着かない。

娘達の演奏の2つ前の団体から鑑賞することになった。響くホール、やはり他の団体が全て上手に感じる錯覚に今回も陥っていた。

ホールの客席が広がる中で、どの位置で鑑賞するのが1番良いのだろう?毎回考えるけど結論が出ないままその辺に座ってしまう。
審査員席の近くが1番音が反響して聞こえるのかな?なんて勝手に想像して審査員席を探し、近くに座って鑑賞した。

そして娘達の出番がやってきた。
楽器をセットし始める。いよいよだ!
あ〜皆んな緊張している。私も緊張する。
いつも陽気な顧問の先生も顔がひきつっている。

演奏が始まった。

普段通りの出だしから演奏がスタート。順調に進んだが、これまで演奏を引っ張ってきた打楽器チームに細かなミスがではじめる。そのほかは至って順調。いける!

中間セクションに入った。
フルートのソロが不調、ピッチが合わないし響きが弱い。その後のユーフォのソロは音が出ず、無音の時間が約2秒続く。

心臓が口から出そうになった・・

極度の緊張は子供達の呼吸を浅くさせていた。それでも子供達は最後まで演奏をやり切った。感動で涙が出てきた。
でも納得のいく演奏からは程遠い内容だった。
娘はマイペースながらも自分の責任を果たしたようで、自分なりに納得のいく演奏だったようだ。

結果発表は夕方のインターネット上で公表される。我々吹奏楽部は会場を後にした。
この後に音楽室に戻ってからミーティングがある。ミスをした子供達がまともにコメントできるのだろうか?
色々と心配は尽きないまま、帰りの途についた。

こうして5年ぶりの県大会の演奏は終わった。

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