見出し画像

あきんど

おはようございます。生粋です。

徒歩で1限に間に合わせようとすると、日が昇る前に家を出ないといけない
寒いし暗い、つらい。冬は早起きのメリットがあまりにも少ない。三文得するのかもしれないが、冬は300円くらい払ってでも布団の中ですごしたい。

まあその300円がないからクソ早起きする羽目になっているわけですが。

ということで今回は金策に関するおはなし。

今は扶養控除を理由にバイトをしていない。
2月から1ヶ月日本を離れるので、それが終わったらバイトを探そうかと思っている。

ただ働かなくて良いに越したことはない。
本当は扶養控除なんかあってもなくても働きたくないし、留学から帰ってきても働きたくない。

朝は寝たいし、夕方も寝たいし、夜はゲームとか読書とかをしたい。バイトなんかしてる暇はない。

さらにパチンコ屋の時給が良すぎたのもある。半年働いて1300円くらいになった。さらに私のシフトは土日と夜だったので、基本は1500円弱くらいで働いていた。

しかしとある事情でパチンコバイト禁止令を敷かれた今、1300円を超えるバイト先を家の近くで見つけることは難しい。

だからといって私の貴重な時間を1000円で売り渡すわけにも行かないのだ。

そんなわけだけどやっぱりお金は必要なので、あの手この手で金策をしている。

自販機ローリング大作戦に始まり、パチンコ屋で期待値を稼いだり、Tシャツをデザインしたり、こんな感じでnoteを書いてみたり。

飽き性なのも祟ってなかなかどれもハネず、ネットサーフィンをしていたところある広告が目についた。

「名入れライター、最安25円から!」

金の話の時だけフル回転するろくでもない脳みそが、瞬時に利率を弾き出した。25円で仕入れて、コンビニ価格150円で売っても仕入れ値の6倍になる。

10本売れば1250円の儲け、100本売れば12500円、1000本売れば125000円…

よだれが止まらない。
私の将来の夢はライター屋さんに決まった。
ちなみにこの業者さんは、基本居酒屋とかバーとかがアメニティみたいな感じで置いてるライターを作ってる業者らしい。

配るようなものだから安く作っているのだ。
個人で発注したいと伝えたら前例は少ないけどできるとのことだった。

さてとりあえず様子見で最小単位の50本で頼もうと思った。しかし50本だと1本の原価が100円を超えてしまう。しかも売り切っても利益は2000円だ。それから送料、初回版代を含めると150円で売っても利益は雀の涙ほどだ。

そんなことを計算すると、200本注文してようやく1本60円くらいに収まる計算になった。

200本で2万円弱。
しかも売れ残る可能性の方が高い。

しかし何を隠そう私は生粋のギャンブラー。
競馬好きの父とパチンカーの母の間に生まれたサラブレッドだ。

リスクを取らなければ金は作れないと言うことを痛いほど知っている。
しかも完全確率のパチンコなんかとは違って、努力次第では売り切ることも不可能ではない。

練りに練った、しかし小さいライターの印刷範囲に収まる簡素さも兼ね備えたデザインを入稿した。

そんなことも忘れたころ、園児の死体が入るくらいのクソデカダンボール箱が届いた。

別に死体にする必要はなかった。
ごめんよイマジネーション園児。
私は女と子供の不幸が嫌いだ。

というわけで改めて、元気な園児が入るくらいのクソデカダンボールが届いた。

中を開けると二重になったダンボールの中のさらに白い箱が4つ。その中にはライターが50本ずつ入っているらしい。

誰だこんな悪質な嫌がらせをしたやつは。
許さん。どうしろってんだ。

俺だ。売れ。

いざ200本ものライターを目の当たりにすると、かなりインパクトがある。

たぶん集団で襲い掛かってきたらなすすべなく撃沈するだろう。

そういうわけでとりあえず箱にしまった。
こいつらが意志を持って襲い掛かってくる前に追い出さなければならない。

しばらく途方に暮れて、三途の川の向こうに昔飼っていたクワガタが見えてきたところで戻ってきた。三途の川の渡し賃6文も持っていなかったのでUターンしてきた。

さて改めて見てみると、印刷はかなり綺麗にされている。何本か印刷ミスのハズレがある想定だったが、200本全部綺麗だ。

クソ。売り切らなきゃならないじゃねえか。
200本。

身内で捌き切れる量じゃない。
しかも知り合いなんかには普段奢ってもらったり金を借りてるので、いくらだろうがライターごときで金を取るのは気が引ける。

送料と版代込みで1本100円弱。半分売れば元は取れるので、50本くらいはサンプルで配っても良いと思っていた。

最初に買ってくれたのは大学の数少ない友人、たくちゃん。彼にも良くしてもらっているのであげても良いやと思っていた内の1人である。

しかしあげるの一言が出る前に、1本買うわ。と言ってくれた。出掛かっていた「あげる」を痰と一緒に飲み込み、200円を受け取った。

ちなみに原価が思ったより行っちゃったので相場より高い200円を最初の価格に設定した。
本当に金がないので50円玉のお釣りを作れないという悲しい事情もある。

その後200本のライターを引っ提げて向かうはおとなりの大学。ここには大道芸からフリーマーケットまで、何をやっても良い通りがある。
部外者にもその制度が適応されるのかは知らない。

普段はジャズ研なんかが演奏しているらしい。

その賑わいの中に紛れて売り場を作ろうと思っていた。場所が空いてるかどうかの心配をしながら向かったが、それは杞憂に終わった。

通りは確かにあっているはずだが、ジャズ研はおろか通行人もいない。しかし200本の在庫に首を絞められている人間がおめおめと帰るわけにもいかない。

閑古鳥の鳴く通りに、1人腰を下ろした。

シガーケースを編みながら人が通るのを待っていた。ときたま通る学生に、「いらっしゃーい」「どうもー」「見てってくださーい」「見るだけでもー」など声をかけてみるが、よくて一瞥。かける言葉も心なしかだんだん卑屈になっていく。

椅子もなく冷たいコンクリートにあぐらをかく姿は浮浪者そのものだった。

そんなところにギターケースを背負ったヒッピーみたいな兄ちゃんと、ウルフカットにメッシュを入れた兄ちゃんの2人組が通った。

「おっ、ちょっと見てっていいですか」ヒッピーの兄ちゃんが声をかけてくれた。

しめたぞ。絶対にどう考えても喫煙者に違いない。ゆるくパーマのかかったロン毛と、マスクから覗く口ひげが物語っている。銘柄はアメリカンスピリットと見た。

「あ、どうも。いらっしゃい。お兄さんタバコとか吸います?」
「いやあ、吸わないっすね」

嘘じゃん。ポケットの中でくちゃくちゃになったタバコに、zippoかマッチで火つけてそうじゃん。なんなら馬にも乗ってそうだし。

結局この2人は買ってこそくれなかったものの、デザインが可愛いと褒めてくれた。正直悲しいから帰ろうと思ってたところだったので、それだけでもかなり嬉しい。

陽が傾いてきたので、なんだか日当たりが良くなってきた。夕陽に照らされながらひとり編み物をする自分に酔っていたところに、またヒッピーの兄ちゃんが現れた。今度はマンバンの兄ちゃんを連れている。

そのお兄さんは編み上がったシガーケースを気に入ってくれたようで、「買います。いくら?」と値札の付いてないシガーケースを指した。

本来の生粋根性を持ってすれば2000円くらい吹っ掛けそうなものだが、自分の作品を買ってくれるということのありがたさ、あと単純に商売に不慣れなこともあって、「アッアッ300円でどうでしょう、高いですかねアッアッ」などとこの日1番の醜態を見せた。

気を良くした私はこの大学に通う高校時代の先輩からも、きっちり200円せしめた。せしめた上に車で家まで送ってもらった。
当然ガソリン代は払っていない。

さてこの日は高校時代の友人によって作られた「サウナ部」の活動日である。この部活は高校を卒業して2年経つ今なお毎週活動がある。

高校を卒業してからも付き合いのある数少ない友人である。もちろんタダでくれてやろうと思っていた。

しかし結果彼らは正規の値段にチップまで付けて払ってくれた。金の亡者生粋にも一応義理とか人情とかがないわけではないので一度断ってみたが、彼らの言葉に胸を打たれてありがたく受け取ることにした。

「価値のあるものに金を払うのは当然だ」

という言葉だ。熱い友人である。
彼らの口から出てくるのは9割9分9厘はセックスか自慰か風呂屋の話だが、残りの1厘でこんなことを言う。

長いこと付き合っている所以である。

似たことを言ってくれた人がもうひとりいた。
これまた高校の時から散々世話になっている、ふたつ上の先輩である。

ライターが届いたとインスタにあげるやいなや、「いくらだ」と連絡が来た。

「200円で売るつもりですが、多分売れないのですぐ値下げすると思います」と答えた。
そもそもこの人には何回飯を奢ってもらったかわからない。欲しいと言われればなんぼでも渡すつもりだった。

「下がる前に買わせてくれ」とすぐに返信が来た。俺が女だったらときめきで妊娠していたかもしれない。あいにく男なので尻の穴がキュッと締まっただけだったが。

その人はライター3本に千円札を一枚出してくれた。私はお釣りとしてありったけの小銭を渡したが、10円玉ばかりで300円にも満たなかった。

金を始め私には何も無いが、周りの人間にだけは心底恵まれていると思う。何も無いは嘘だ。
ライターの在庫だけが180本くらいある。

出来上がりにはまあまあ自信があるので、どうか買ってくださいませんか。インスタなんかが繋がってる人は連絡をください。お届けにあがります。

もしnoteから知ってくれた方で買ってやっても良いという方がいたら、お手数ですがコメントをください。

気の遠くなるような在庫と共に、連絡をお待ちしています。

1本200円
2本300円
(時価)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?