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教育の行き着く未来

教育の仕事をしていると、楽しいと思う反面、色んなことが非効率で面倒くさいな、と思うことが多い。定期的に新しい人が来ては、1から教えていかなければならない。多くの人との出会いがあることは楽しみの1つではあるけれど、教える側は毎回やることが同じことの繰り返しになっていてとても効率が悪い。今はYouTubeで動画をアップしたり、ブログなどで情報を発信したり、本を出版したりと、情報を発信する手段はたくさんあるので、それらをうまく活用すれば多くの人に伝えたいことを伝えることはできる。ただ、これらは情報を多くの人に伝えるための手段であり、学ぶ側が時間をかけて1から学んでいかなければいけないという点では、非効率であることには変わりはない。

私は今プログラミングの講師をしている。毎年4月になると6月末までの3ヶ月間、IT企業の新入社員研修を実施していて、多くのプログラミング未経験者にIT技術を1から教えている。私自身は10年近くIT業界で働いていて、その中で色々なスキルを身に付けたつもりではあって、その10年間で得たスキルを研修の期間で全て伝えることができたら良いな、と毎年のように思う。けど、実際にそれが実現できたことはない。優秀な人であれば研修期間で色々と質問して色んなスキルを身に付けていくけれど、完全にプログラミング未経験者で、かつロジカルに考えることに慣れていない人に対しては、下手すると自分のスキルを1割も伝えられていないのではないかと思う。

私が小学生くらいのころ、マトリックスという映画が流行った。あの映画の中で、主人公が脳にスキルを直接インストールして、高度な体術を一瞬で習得するというシーンがあった。私が考える教育のゴールはあのイメージが一番近い。自分が持っているスキルをデータとしてアウトプットして、他の人は脳にそのデータを直接インストールすることで、他人が数十年かけて会得したスキルを一瞬で自分のものにする。あのような世界が実現すれば、私が持っているプログラミングスキルの全てを、一瞬で研修生たちに伝えることができる。なんて効率が良いのだろう。今の時点では完全にSFの世界の話だけど、いつかそういう世界が来てもおかしくはないとは思っている。

ただ、仮にそういう世界が実現できたとしたら、きっと今の世の中は一変する。教師や講師といった、いわゆる人に何かを教えることを仕事にしている人のほとんどは不要になって仕事がなくなってしまうことだろう。そして学校そのものの存在意義を根本から考え直す必要が出てくる。けど、それはそれで良いのだろうと思う。現に今でもAIの発達によってホワイトカラーの仕事のほとんどはいらなくなるだろうと言われていたりする。テクノロジーが発達すれば必ず不要になる仕事が出てきて、その変わり、時代が変わったことによって生まれた新たな課題を解決するために新しい仕事が登場する。そもそも、そのぐらいテクノロジーが進歩している時代では、全員が全員働く必要もなくなっているだろうと思う。働きたい人だけが働き、仕事がなければ無理に働かなくても生きていける。そんな時代になっていると思う。

スキルを脳に直接インストールできるようになれば、教育系の動画コンテンツや入門書の類もほとんどが意味を持たなくなる。その代わりに、アウトプットされたスキルデータに価値が生まれる。今まで成り立っていた教育に関するビジネスモデルが一気に崩れて、質の高いスキルをアウトプットできた人が成功者になる時代。そういう世界ではきっと、元々多くのお金を持っているものが好きなスキルを好きな時にインストールでき、お金を持たないものは欲しいスキルをインストールできない。持つ者と持たざる者の格差がどんどん広がっていくのだろう。

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この記事は私が思う教育の理想を考えた上で、実際にそんな世界が訪れた時にどうなってしまうのかを妄想しているうちにできたものです。一言で言えば、自分が持つ数年分のスキルを、誰かに対して一瞬でインストールさせることできるようになるのが、個人的な教育のゴール。こういうことができるようになれば良いなと思う反面、考えれば考えるほど色んな問題が出てきそうだなと思いました。

考えている中で、こういう世界を舞台にした小説を書いてみたいな、とも思いました。タイミングをみてチャレンジしてみよう。

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