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学びの最適な期間を考える

毎年、4月から6月までの3ヶ月間、IT企業の新入社員研修でプログラミングを教える仕事をしています。
年数を重ねるごとに、3ヵ月という期間は短いな、と強く思うようになってきています。

3ヵ月とは言っても、後半の1ヵ月は研修生自身が自分たちで考えてものを作る期間なので、講義という形で講師があれこれ教えることができるのは実質2ヵ月もない。
私は技術が飛びぬけて高いエンジニアではないけれど、それでもかれこれ10年近くプログラミングに関わる仕事をしていれば身に付いた技術やノウハウはたくさんあって、それらを2ヵ月くらいで伝えるのは時間が足りないと感じます。
研修を受講している研修生も3ヵ月は短いという声が多いです。

しかしながら、3ヵ月が短いというのはあくまでも講師と研修生側の意見。
研修の運営サイドの人間と、研修を依頼してくれた企業の担当者はむしろ長いと思っている人も少なくないらしい。

以前、運営側に3ヵ月は短いという話をしたところ、こんな話をされました。

昔は研修期間を2ヵ月でやっていた。
しかし、それでも今よりも出来が良かった。
それは、今よりも残業の規制が厳しくなかったから定時後にも残ってやっていたこと、そして今よりも就職が厳しかったからやる気がある人が多かった。
今は残業の規制が厳しくなってカリキュラムを終えれなくなったので仕方なく3ヵ月に伸ばした。
ただ、期間を3か月半にしても4か月に結局時間が足りないという声が上がってくる。
結局、やる気があるやつは2ヵ月でも伸びるし、やる気がないやつは4か月での伸びない。
やる気をどう上げていくかが重要になる。

なるほど。
確かに、やる気がある人は期間が短くてもどんどん成長するし、やる気がない人は期間が長くてもそこまで成長しない。
その意見は納得できます。
しかし、なら研修期間が2か月でも4か月でも変わらないのか、というと、それは少し暴論な気もする。

だって、日本では義務教育が9年間ある。
その後も、高校、大学、大学院と進学して学ぶこともできる。
つまり、日本に住んでいれば短くても10年近く、長ければ20年近く学びのための期間が存在することになる。
それはつまり、何かを学ぶにおいてはそれだけの期間が必要だという事なのではないだろうか。
それを本人のやる気次第の一言で片づけるのはやはり乱暴だと思う。

超AI時代の生存戦略という本の中で落合陽一氏は、フックをかけておくことが重要だと述べています。
今は大抵のものはググればすぐに解決することができます。
しかし、ググって解決するためには適切な検索ワードを知っておく必要があるし、調べた内容を理解するための基礎知識も必要です。
そういう意味で、あらゆるものを、ググれば分かる、というレベルの状態、おぼろげにリンクが付いている状態が重要だと言います。
それは完璧には覚えている必要はないけれど、おぼろげに覚えていて、調べればすぐに理解することができる、というレベルです。

エンジニアの仕事も、調べればわかることも多いですが、効率や質を求めていくと結局のところ知識量がものをいう場面も多いです。

そう考えると、学びの期間というのは、あらゆるものにフックをかけるための最適期間を考えることが大事なのかもしれません。
これはある意味では詰め込み教育に近い部分があるかもしれません。
現代の教育はでは詰込みよりも自発的に考える力を育てることが大事だという話もよく聞く話で、私自身そう思っている派です。
自発的に考える力を付けるという意味でいえば、確かに本人のやる気次第で期間にはあまり左右されないのかもしれません。

しかし、自発性を育てることとは別に、あらゆるものにフックをかけることを考慮したバランスの取れた教育の設計が重要になってきそうです。

※参考にした本


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