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2022年に見た映画ベスト10

年1更新を律義に続けて4回目ですが、例年「ああよかった、これが俺の今年の1位だ」って確信を持てるランキングになるところ、今年は暫定4位ぐらいだったやつがズルズル押し上げられて1位になる不得要領な年でした。
以下、280タイトルからの個人ベスト10を挙げていくことで納まる2022年。
cf. 2021年 / 2020年 / 2019年

10.『アマンダと僕』(2018)

PHOTO: IMDb

年間個人ランキングを作るプロセス、だいたい10月ぐらいから始める(または始「ま」る)んですが、最後の最後まで思い出すこともなかったこれ。
見たのが1月で、当時はもちろん2022年がこういう1年になるとは思ってもいませんで。それこそ感染症との戦いに明けて暮れるんだろうな……ぐらいの認識だったじゃないですか俺たちみんな。
だから、見終わった直後に書いたfilmarksでも、ホメてはいてもなんかぼんやりしてる。
ところが1年を振り返ったとき、遠くに見えるこの作品の姿が覚えていた以上にクリアで、驚きのあまり10位に。

そんなこともあるのね。

9.『マイスモールランド』(2022)

PHOTO: IMDb

このnoteでずっと追っているトピック(=日本社会は自分のことを移民国家と認める時期がとっくに来てるんですけど!)にハマっている・という下駄をはかせてのランクインですか。と自問しても、わりとしっかりした声で否定できるレベルでなによりでした。

蛇足ながらこのあたりのテーマの作品、配信で見せるのをよしとしない意識高い感がどこかしらにあって、そんなこだわり捨てちまえ。って思うの。
早々に各種サービスへ上げた制作サイドの判断を支持します。

8.『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2021)

PHOTO: IMDb

珍しく真面目に働いていた1日の終わりにスマホでニュースを見たらものすごく驚いて、ものすごく驚いている私にものすごく驚かれた、という今夏のひとこま。
その瞬間、おおげさでなく雪崩を打って日本社会が右傾化する未来が脳裏をかすめ絶望し(その予測とは斜めの展開になったのはまた別の話)、とてもじゃないけど映画とか見る気になれねえ。
ってタイミングでこの精巧なツクリモノ世界が存在してくれた恩義は並々ならぬものがあります。ウェス・アンダーソンには足を向けて寝られない。

7.『提報者 ES細胞捏造事件』(2014)

PHOTO: IMDb

7月の出来事の「後」の日本社会がどんなか、ちょっとでも真面目に考えればこれをね、韓国だから。とかSTAP細胞あったなー、とか、そういう見方になるはずがないと思うんですが。
ジャーナリズムとは。以上に、民主主義とは。を描いた作品として心に残りました。

6.『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(2016)

PHOTO: IMDb

ニューヨーク映画の採点がめちゃくちゃ甘い自覚はありますけど、そういうのを差し置いても世評通りエンターテイメントとしての消化が可能でしたよね。

5.『スティルウォーター』(2021)

PHOTO: IMDb

こういう系統の作品がランキングの大半を占めてこそだと思うんですよ。
それが平和ってことだったんだな。

4.『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)

PHOTO: IMDb

公開と同時に劇場で見ることができなかったのはいま考えても腹が立つんですが、数えたら今年劇場まで行ったのって3タイトルしかない(『ベイビー・ブローカー』『ブラック・パンサー/ワカンダ・フォーエバー』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』)うえ、結局そのどれもランク外に終わるっていう。
それはともかく、これが1位では? という葛藤に勝って4位なのは、エンディング楽曲に「感動できた俺」加点を認識しているためで、さすがに自分のことを好きすぎるだろう50代なんだからやめなよそういうの。という内なる声に従った成果(=ホメてもらいたそうな顔で)。

番外 ドキュメンタリーをけっこう見た1年でした

captured image from Disney+

Disney+の謎ドキュメンタリー(と私が呼んでいる)シリーズの3大共通項といえば
・邦題があまりに適当
・Filmarks登録ない
・意外と面白いので掘り出し物感ある
ですが、『スポットライト』(2021)なる邦題を付与されたせいで縁もゆかりもない『スポットライト 世紀のスクープ』(2016)の陰に隠れる運命が定まったタイトルを5月に見ています(原題は"Hysterical")。
作品概要にいわく

「これは、スタンダップ・コメディー界で道を切り開いてきた女性たちの人生へのバックステージ・パス。同世代や同性の声となるまでの苦難の道のりを探っていく」
「スタンドアップ・コメディーは、常に男性の領域であった。コメディー・クラブという過酷な世界から抜け出して、有名になった女性はほんの一握り。何十年にもわたってスポットライトを浴びる場所を求めて戦ってきた結果、状況がようやく変わってきた」

表記ゆれは原文ママ

ネット界隈で敬遠される意味の「フェミニズム」テーマではあり、咀嚼には最低限の知性が要求されるタイプの作品でしたが、断片的に描かれる(女性演者による)スタンダップの実際を確認したくなる欲がかき立てられ、そういう芋づる式の興味の広がりこそが人生の醍醐味と思う私には、とても良い作品だったのです。

……って別作品レビューに書いたぐらいで、『スポットライト』(2021)きっかけでスタンダップ作品を10数本見たほか、これまであまり手を出してこなかったドキュメンタリー分野に接した回数が飛躍的に増えた1年でした。
フィクションを楽しむには「現実」の「俺たちを逃避させまい」圧がそれほどに強かった、という証明に他ならないわけですが。

3.『わたしたち』(2016)

PHOTO: IMDb

2.『ロドニー・キング』(2017)

PHOTO: IMDb

スパイク・リーとの付き合いも長いので、フィルモグラフィーは把握しているつもりだったんです。ところがスタンダップ形式のドキュメンタリーがこんな傑作と知ったときはうろたえましたね。やべえ、見逃したままになるところだったよ。

1.『レーズン・イン・ザ・サン』(1961)

PHOTO: IMDb

シドニー・ポワチエの訃報を1月からずっと引きずっていたわけではもちろんないのですが、未見だった彼の作品を追った時間が充実していたのは事実だし、例年ならこの1位は無いんじゃ。と思いながら、こんな着地に。

しめくくりとして『マイレージ、マイライフ』(2009)のレビュー本文を再掲します。本当にそういうことだと思うんですよ。

映画の感想ではなく日記として残しておくんですけど(映画は映画で好きでしたよアナケンとかアナケンとかアナケンとか)ベラ・ファーミガがいちばんまっとうなキャリアを残してると思うんですよね、ウクライナ系アメリカ人の現役俳優で。
ミラ・ジョヴォヴィッチにせよミラ・クニスにせよ、キャリアを俯瞰するとエロ中心フィルモグラフィになっちゃうところ、ベラはかろうじて『死霊館』シリーズ以外にも見るところあるじゃないですか。デンゼルと2回も共演してるしな。
あーダスティン・ホフマンか。
彼はキエフ出身ユダヤの血を引いているそうですが、そのレベルでいえばシルベスタ・スタローンだって母方祖父ウクライナ系だそうだし、だったら故人だけどまだウォルター・マッソウとかナタリー・ウッドとか……『ウエストサイド物語』(1961)でいえばレナード・バーンスタインもウクライナ系なんですってね。ボブ・ディランも、レニー・クラビッツもそうだよな。
(って検索したら出てきた人名をつらつら書き連ねる回)

俺たちが見ているハリウッド映画を含むエンターテイメント界にウクライナ由来のひとは驚くほどたくさんいて、それは別にウクライナに限ったことではなくアメリカ合衆国というコンセプトがそういうものだからで、つまり何が言いたいかというと「世界が平和でなければ」のほほんと映画を見る気にもなれねえんだわ。

2022/2/25

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