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2020年に見た映画ベスト10

サムネイルはアジア某国で日本映画祭的イベントを手伝ったとき、開場前に撮ったものなのですが、俺のカメラロールいわく「2019年12月のことだな」。
……嘘。もっと大昔のことにしか思えねえ。ってなっている私です。
今年は200タイトル見たそうで。cf. 2019年に見た映画ベスト10

10. 『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』(2020)

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photo: IMDb

フィルマークスの『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019)評でも、つい言及してしまったんですけどね。

描写が時代に応じてアップデートされているのは当然として、そのあたりを取っ払ってなお残るものは何ですか。という見方をしていたんですけど、たとえば『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』(2020)はそういう装飾要素を除いたところに残る抒情性(とヤクルト)が素晴らしかったわけじゃないですか。
これ(『ブックスマート』)ちょっとワチャワチャにアレンジしすぎたせいで、フィルターで漉すと全部なくなっちゃうようなところあるよね。それはそれで監督としてのオリヴィア・ワイルドの色かもしれず、個人的には彼女の次作が楽しみ。って感じ。

いや、ヤクルトですよヤクルト。かつてこんなにヤクルトが物語のセンターに鎮座することがありました? って見終わってすぐ思ったんですけど(なお『好きだった君へのラブレター』2018という先行事例)、要するに西洋的な社会と東洋的な社会を、一種のバカバカしさ愛らしさを示しながら渡っていく象徴が、この作品におけるヤクルトじゃないですか。
せめてつば九郎はアリス・ウー監督に感謝状を贈るべき。

9. 『レ・ミゼラブル』(2019)

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photo: IMDb

これもフィルマークスの自分の文章コピペ。

映画館に映画を見に行く、という行動がまだ普通だったあのころ、自分と価値観が似たひとたちが絶賛していた作品だったので、配信に来た! って知った瞬間、秒でカネ払ったわけですが(たまたま横にいたうちの娘もたいへん呆れるスピード感)残り20分のところでいったん大団円っぽくなるんですよ、でもここで終わるわけがないって誰もが思うわけですよ。
……そこからの20分が凡百の類似作との違いだとは思いましたが、ただ、訴えている内容自体は『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)だよな、という感想はある。
去年の夏からずっと「外国人就労関連ニュース」と銘打って、日本国内における技能実習生や留学生、最近だとベトナム人が豚や梨を盗んだって言われているニュースだとか、そういう話題を集めて更新しているんですけどね、もうさすがにタグに「移民」って付けていいな、って思うようになったわけです。
俺たち以外のひとをそう呼ぶ、という意味ではなく、俺たちは移民国家に生きている、という意味で。
移民国家としてのフランスの、成功したとは呼べない現実を映し出している作品として、2020年の我々が真顔で見るべき作品だと思いました。

8. 『ルディ・レイ・ムーア』(2019)

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見る前の懸念は「エディ・マーフィの俺が俺が主張がうるさすぎたら合わないんだけど、だいじょうぶなのか」だったんですけど、意外なほどそこの均衡とれてそうだな、って思ったのが、冒頭から流れるマービン・ゲイしかりテンプテーションズしかり、ドがつくメジャー系がBGMとして採用されているところ。音楽の使い方ってだいじ。

7. 『家族を想うとき』(2019)

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ケン・ローチだから。ってある程度は覚悟したうえで見るわけですけど、やだ怖いやめて。って何回か途中で止めたり「この先に起きるであろう悪いことをフルスクリーンで見る勇気が俺にはない」ってなったり、おい君たちはよく映画館のサイズで、ノンストップでこんなおそろしい物語を見ることができるな。という感想(ストリーミングをノートPCで見ました)。

ホラー映画における、言うてフィクションだし。って逃げ道が塞がれているこういう作品は18禁どころか、もう人類禁じゃないのか。
この社会を作り出したのは俺以外の誰かだから俺は無垢な被害者としての視点でのみこの作品を見る-って思えればいいんだろうけど、社会ってそういうものじゃない、ってケン・ローチが次から次に手を打ってくるんですよ。ずっと王手かけられている将棋みたいなんですよ。怖いんですよ!

6. 『ARASHI'S Diary -Voyage-』(2019)

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そもそもネットフリックスは昨年末、『アイリッシュマン』(2019)だけ見たらタッチ&ゴーで離脱するつもりだったんですよ。って自分の過去ツイート見たらあまりにも繰り返し言ってて笑う。
うちの子が幼稚園児だったころに一線に躍り出てきた彼らの歴史は「ああ、この頃うちの子は小学生で」みたいなエピソードと一致していて……ってこのロジックは今年、欅坂でさんざん使ったやつだわ。
ただ、欅坂は本当に、彼女たちを通して自分の娘を見ているようなものだったけど、2019年~2020年の嵐を見る作業って、「はたらくおじさん」の働きっぷりをものすごくじっくり見る貴重な機会なわけじゃないですか。若手だったころを知っている社会人が、組織の中核で活躍する姿。それに心が動かされないサラリーマンが居ます?

なお、私の個人的ベストは11話(Turning Up)でLAダンサー陣にMJが「彼がディーバよ」って言われてた、ってところ。
腹かかえて笑いました。

5. 『パラサイト 半地下の家族』(2019)

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4. 『フォードvsフェラーリ』(2019)

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3. 『ジョーカー』(2019)

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2. 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)

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この5位~2位って誰が選んでも上位にくるやつだから、コメント必要ないよねー。強いていえば「ワンアポ」、今に至っても最も語りたい部分が道義的に語れないって作品構造がタランティーノっぽくて、キー。ってなるわ。

番外 追悼イルファーン・カーン(1967-2020)

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っていうほど見ることができたわけでもないんですけど。
『めぐり逢わせのお弁当』(2013)でくたびれた経理のひとを、『有罪/Guilty』(2015)で有能な刑事を、『アグネスと幸せのパズル』(2018)では在ニューヨークの誇り高い人物を、それぞれ絶対にステレオタイプにはしない。って意志のもと演じていることに気付かされて、ああ、こんなに幅があったのか。ってしみじみ思いました。
同世代の訃報を耳にしたときの衝撃は、自分よりずっと年の若いハリウッド・スターのときと同じか、それ以上のものがあった。R.I.P.

1. 『チョ・ピロ 怒りの逆襲』(2019)

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photo: IMDb

これはさすがに再見したら「なんであんなに高い評価をしたんだ俺」ってなる予感しかないので、当分見直さない(キッパリ)。
見てすぐの、熱に浮かされて書いたnoteを再掲しますけど、50歳を過ぎてもバカっぽい自分。を再認識できたのは、実はそんなに悪い話ではないと思っていて、つまり、いろんなことがあった2020年も平常運転に終始したということだから。それはとりもなおさずメデタイことだと思うのです。


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