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元東京出入国在留管理局長インタビューほか/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(22.5.15-22.5.21)

小樽商科大学の季刊誌「商学討究」2022年春号に
元東京出入国在留管理局長・福山宏氏に聞く -入管行政の現場に関するインタビュー調査
というテキストがあると知ったので、A4で86ページになるインタビューを読みました。

――例えば在留資格のない両親から日本で生まれ、日本で生活し、国籍上は日本ではないものの、日本しか知らない、日本語しか話せない子どもがいます。このような人たちも帰国をしたほうが良いとお考えですか。子どもには在留資格がないことに罪はありません。子どもに責任はないので子どもの在留を特別に認めるという判決もあります。その辺りはどのようにお考えですか。

(福山)子どもに罪はないという議論はよく聞きます。実際に子の在留が認められる場合、その親の在留に関しても柔軟に判断しています。
この点は「ガイドライン」で積極要素とされているところです。とはいえ、親はそれ相応の法律違反をしています。それゆえに子供の在留は許可できても親の在留はどうあっても認めるわけにはいかない場合があります。そうなると親子が離れることになってしまいます。しかし、それもその親子の選択であることを忘れるべきではありません。さらに、子どもに罪はないという言葉は本来の目的を隠すための盾としても使えます

引用者による句読点編集あり

全編こんな感じ。
信念に沿って定年まで勤め上げた「移民受入には私は反対です」人物の、いかにもそれっぽい言説オンパレードなのですが、それはそれとして面白かった例が、入管収容者によるハンストが自分の勤務先では起きなかった、それは。という文脈での以下発言とか。

能力のある同僚に囲まれることの幸運を実感していました。毎回のことながら,無能な上司の周囲に有能な職員を配置するとの人事の常道に助けられた典型例です

こういう、あまり表沙汰にならないナマの声が載っているんですよ。
メディアに話す場合「構えてしまう」のは避けられないし、メディアはメディアで何かを「言わせたい」と舌なめずりをしているわけで、結果的に学術誌だから叶ったユニークなアプローチ。一読推奨。

■子どもに罪はない? 親の因果が子に報いているだけですよ。と言われて「そうだよね!」とはならない私ですおはようございます

公開前から各メディアが大きくとりあげている映画『マイスモールランド』(2022)、入管を含む日本社会の姿を記録しているという意味で、みんながホメるのはいいんだけど、さすがに情緒に訴えるだけでは足りないのでは。と最近物足りなく思うんです。

たとえばですけど、日本政府がクルド難民を絶対に認めないのは何故なんだ、って疑問に答える解説のニーズ、あると思いません?

トルコ国籍クルド人は、2018年に日本で563件の難民認定申請をしているが、同年を含めて過去1件も難民認定を受けていない。他方、2018年の世界におけるトルコ国籍者の難民認定率は45.6%だった。
クルド人に対する迫害を、トルコ政府は「テロ対策」として正当化する。他方、NATO加盟国であるトルコのテロ対策担当機関と、日本でテロ対策を主として担う法務省・警察庁とは、継続的な協力関係にある。
トルコ治安当局が「テロ対策」名目で行う措置を、法務省が「迫害」と認定することは、協力関係を阻害するから、あり得ないのだろう。

今週も北海道でクルド人難民申請を却下したのは不当だった、という判決が出ていて、な、『マイスモールランド』そのものだろ。

なお私、依然として映画見てません。しかし見たら見たで、いっそうドヤ顔になりそうなので、しばらく見ないほうが正解なのかも、と思ったりして。

■熊本のベトナム人技能実習生リンさん(2020年11月15日)とほとんど同時期に広島で起きていた話(2020年11月11日)

ローカルメディアがここに来て注目しているようなので、背景にあるわれわれ日本社会の外国人軽視や、女性ばかりが矢面に立たされる法体系、そのあたりをあらためて考えるきっかけになるといいんだけど。

■あわせて読みたい

■今週、そこそこの量で報道された特定技能ニュース2題

皮算用では35万人だったところ6万4000人、って話が上の3つ。
そして具体的な企業の話が下の見出しなんですが……

定点観測している私ならではの蒸し返し。

2019年に計画発表されたとき、何に「ん?」ってなったかというと

プログラム修了者が、日本に渡航するに当たっては、ベトナムの送り出し機関に30万~40万円の手数料を支払う必要がある

待て待て。特定技能だよね? 技能実習じゃないよね? 「送り出し機関」って呼称が適用されるのは技能実習制度であって、特定技能では送り出し機関を介する必要は本来ない。よね?
そもそも送り出し機関による法外な手数料の徴収が諸悪の根源って整理に基づいて特定技能が出来たのに、またここでも送り出し機関を介在させるのですね、そりゃベトナム(とカンボジア)は認定送り出し機関なる存在を日本政府も認めてしまっているので、なしくずしというか技能実習制度を温存する先方意向に妥協する方便だろうけど真っ当に人材を採用する気あるんすか。それともただ人件費を圧縮したいだけなんですか。

-というような感想不可避だったので、モスの件は引き続き注目しておきたいのです。

■要するに冒頭で引用した元入管エラいひとが主張するような「私は移民受け入れに反対」論が見ないフリをしている、現に彼ら無しでは社会が機能しない実態を、せめて私は直視したいってことなんですけど。

メンタル病んじゃうのも、貧困問題が直撃するのも、日本人だろうと外国人だろうと同じですよ。そんなの、当たり前ですよね。

■今週のその他ニュース

最後に「ニュース」ではなく日本に暮らす外国人のうち、恵まれたひとの思い出話。

家族全員にとって、日本での生活はプラスになった。
人生で大切な時間を過ごせた。これ以上の感謝はない。
日本の人たち、ファンの皆さんには、僕たちが皆さんから受けた親切心やサポート、愛情にとても感謝していることを知ってもらいたい。この恩は決して忘れない。
早くまた日本に行きたいね。

いや、私が言いたいのはね、技能実習生だろうと偽装留学生だろうと、仮放免中のひとであろうと、みんなにそう思ってもらいたいじゃないですか。
それが出来ない国だとは思わないんですよ。

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