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駒込「ポニー」(閉店) ー あこう鯛の粕漬けが 恋しくてー

喫茶店は 珈琲を嗜んだり雰囲気を味わったり一服するために利用する人もいるだろう。

ここポニーにおいては、私は3パターンのお世話になり方をしている。

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まず1つは、あこう鯛の粕漬け だ。

中はどうなっているのだろう、ちょっとすり足で入店すると、そこには奥に広がるベロアの椅子。スナックのような雰囲気も残る店内にうっとりする。

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カキフライ定食 エビフライ定食 ところ天

定食屋さんのようなラインナップの中に「今日の魚」とある。聞けばあこう鯛の粕漬けだと言うじゃないか。アコウダイなんて響きを他で聞いたことがなく、語呂の雰囲気にのまれて即決。

立派な半身がこんがり焼かれてきた。冷奴に似非キュウリのキューちゃんみたいなのもついて、ご飯も味噌汁も器がデカい。

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香ばしさと魚の塩気が 一気に白米をかっこませたのは言うまでもない。なんて旨いんだ。そして なんてあったかい味なんだ…
喫茶店の域を超えていた。

先客であり常連さんたちはセンターの広いテーブルを囲み、高齢者あるある「自分の体の悪いところを自らいじりがち」が展開されていた。「この中で誰がはやくあの世にいっちまうかなぁ がはははは」 。
この明るさ、心の健康には必要不可欠だ。


2つめは、保健室的な役目を果たしてくれたことだ。

とある日の夕方。近くの公民館でダンスのレッスンがあるため電車に乗ると悪寒、脂汗、吐き気… たまにあるのだ PMS的なものだろう。
駒込駅に着きどうしたものかと 目についたポニーで少し休憩することにした。

一番奥のカーブしているソファー席に座りホットコーヒーを頼んだ。店の真ん中の柱で死角になり、とにかく体調が悪いこともあって 気が緩んでそのままソファーに横たわった、気が遠くなっていくのを感じながら。

気づくと40分ほど経っていた。回復していた。
柱があるもののさすがにマスターやママは私がソファーにだらりとしていることに気付いていただろうけど、全く気に留めずにそのままにしていてくれたことにめちゃめちゃ感謝した。放っておいてくれる優しさに胸打たれた。

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完全にポニーに惚れた私は、打ち上げ会場として名店を貸し切らせていただくことになる。これが3つ目だ。

通っているダンスの発表会みたいなものがあり、その打ち上げの幹事を名乗り出て、普通に酒を酌み交わすものではない事がしたいと考えた。そこで「仮装で打ち上げ」をすることにした。発表会に出たメンバーのみならず ノッてくれる方も呼び、各々好きな仮装をして最後は先生に優勝者を選んでもらおう、と。

その会場として使わせてほしいとポニーに通って交渉を始めた。なんてったってミニステージありのカラオケ付きだからだ。食べ物を用意してもらいドリンク1杯付きの会費制。

サンドイッチや唐揚げをつまみながら、発表会の動画を観てあーだこーだ反省もしつつ、
大根やボーリングのピンになる人から、日本エレキテル連合の朱美ちゃん、佐村河内氏と新垣氏、小保方さん、レディガガといった時の人たちまで、各々工夫を凝らした26体の仮装で騒いだ。どの仮装がよかったかは参加者全員による投票制で、ポニーのスタッフさんにも選んでもらった。スタッフさんの中では「だめよだめだめ」で一世を風靡した朱美ちゃんが人気で「すごく似てるし がんばってる」というのが投票理由だった。

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ちなみに私は、かつて扮してこれを超えるものはないだろうと自負している妖怪人間ベロで臨んだ。ちょうどベラも居たので、一緒にゴールデンボンバーの女々しくてを歌い踊った。

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店内の広さ、自由さ、開放感 三拍子そろった味のある名店、ポニー。
ソファーのつぎはぎは心地よく、ところどころにポニーが置いてある。
マスターのヘアは 妙に固まっていて、どうしても目がいってしまう。店が落ち着いた頃合いをみて、センターテーブルでお客の前で 賄いのチャーハンにがっついていた。

そんなポニーも2019年12月 閉店。
様々な楽しみ方を提供してくれた
今はなき名店を忍ぶ。

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