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大企業の社長「これからはVUCAの時代!」

こんにちは。アマチュア歴史愛好家のれきしたつです。
突然ですが、私は「映像の世紀」という番組が非常に好きで、もし歴史に興味のある方がいれば、ぜひ見ていただければと思います。
何が良いかと言うと、BGMがめちゃくちゃ良いです。私レベルになると、映像の世紀のBGMを聴くだけで、歴史上の出来事が頭に浮かびます。

それはさておき、近年、様々なビジネスシーンで「これからはVUCAの時代!」と言われています。VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味します。
つまり、現代は将来どうなるか分からない時代だということです。

たしかにそれはその通りだと思う一方で、そのように言うということは、これまでは予測が容易な時代だったのか?ということが気になります。
そのため、実際に歴史を振り返ることで、昔はどう考えられていたのかを見てみようと思います。

戦前の就活

いきなりですが、以下の文章を読んでみてください。

「現代は一部分の専門学科の者を除いては、就職の容易な時代ではない。然しそうかと言ってあらゆる方面に優秀なる人材が有り余っているのではない。時代の見透しが困難で事業の運営が容易でない現代にあっては、殊に優秀な人材が必要である。かかる人物には所謂就職難はない。

好況時代に於ては仕事が人を待っているので、単に人数を揃えれば仕事が動いて行くのであったから余り人物の如何が問題にならなかった訳であるが、今日に於ては人間の力で仕事を作り出さなければならないので、頭脳の優秀な旺盛な、計算力、洞察力、実行力を備えた人物が要求せられるのである。その結果が就職難である」

就活で「失敗する学生」「成功する学生」の差は、80年前から変わっていない

文章を要約すると、「現代は将来を見通すことが困難である。そのため、自ら考えて行動できる人が求められる。」といった内容です。

現代の企業における社長の演説なのかと思ってしまいますが、これは実は1937年に書かれた学生向けの就職サポートマニュアル「就職の栞」の一部です。
つまり、80年以上前の戦前の時代にも、同じようなことが言われていたということです。歴史を見ると、このようなことはいくつもあります。現代社会で言われているようなことは、概ねどこかの時代でも似たようなことが言われているのです。

人は近くにあるものを強く認識する

ではなぜ現代でことさらVUCAなどといったことが強調されるのでしょうか。理由の一つは、人間には近くにあるものをより強く認識する習性があるから、だと思っています。
当たり前と言えば当たり前ですが、自身に近いところにあるものや起きたことからは強い影響を受けます。

会社員の方なら一度は他社のことを羨ましく思ったことがあるのではないでしょうか。しかし、意外と実際は似たり寄ったりなことも多いです。
また、国レベルで見ると、日本ではやたら「アメリカはこんなに進んでいる」「だから日本企業はダメなんだ」といったことが言われます。ただ、意外とアメリカも一部の企業を除けば古い体質だったりします。

このような話は、一般的に「隣の芝は青く見える」と言われます。これは、自身に近いところ(
自社、日本など)はよく知っているからこそ悪い面が強く認識されてしまうことが原因の一つです。

これは時間軸に当てはめても同じことが言えます。今起きていることは、強く認識されるがために、「現代は特別な時代だ」、「今起きている変化は史上初めてのものだ」と思ってしまいがちです。
しかし実際には、歴史を振り返ると似たような時代があったり、そもそも常に同じことが起こってるだけだったり(老人が若者に苦言を呈すのは古代エジプトでもあったらしい)します。

まとめ

話を冒頭に戻すと、「これからはVUCAの時代だ」といったようなことは、VUCAという言葉は使われていないにしても、同じようなことが言われていることが分かりました。
そしてそれは、人間の習性として、自分に近い場所や時代のことを強く認識することが関係していそうです。

ここで言いたいのは、昔から結局変わらないからVUCAの時代ではない、ということでは決してありません。
単純に流行りのワードに踊らされるのではなく、歴史も少し振り返ることで、今の流れは特別なものなのか、昔もあったようなことなのか、あるいはそもそも言われているだけで本質的には変わっていないのか、といったことを多面的に考えることが重要ということです。

近代ドイツを作り上げたオットー・フォン・ビスマルクはこんな言葉を残しています。
愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ

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