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「日本全体=地主の子供」説

最近、「実家が太い」などといった言葉をしばしば耳にします。要は実家がお金持ちということです。

親が大企業の役員や芸能人などというパターンもあるとは思いますが、どちらかというと地主や中小企業のオーナーといった、BS的な収入のある家のことを言うことが多いのではないでしょうか。 
地主みたいにほとんど何もしなくてもお金が入ってくる状態に憧れや妬みの感情を持つ人もいると思います。

しかし、目線を少し変えると、日本全体が地主のようなものだと考えることもできます。今日はそんな「日本全体=地主の子供」説についてお話しようと思います。


地主について


地主とは、自らが所有する土地を他人に貸し付けて、土地代を得ている人たちのことです。労働ではなく土地がお金を生んでいるので、俗に不労所得などと言われます。

ここ数年、FIREなどといった言葉も流行るくらい、不労所得に憧れる人は多いのではないかと思います。たしかに、働かなくてもお金がもらえるのであれば、そんなに良いことはないですよね。

ここで、少し地主の歴史についてお話します。

地主の歴史

中世以前、日本だと戦国時代以前くらいまでは、土地は武力によって守っていました。これがいわゆる封建領主です。警察なんてものは無い時代なので、力のない人は土地を持つことができなかったのです。

そうして力のある人たちが一定の土地を所有していくようになりました。やがて時代が進み、江戸時代くらいになるとある程度社会も安定し、土地は固定されていきます。代々子孫に受け継がれていくようになるのです。

明治維新後もそれが続いた結果、戦前は自らの土地を持たず、人の土地を借りて耕す小作農が大半の社会になっていました。資本家サイドの自作農と労働者サイドの小作農に分かれていたのです。この自作農がいわゆる地主になります。

その後日本経済は成長していきますが、小作農の生活は苦しい状態が続きました。これが既得権益層への不満になり、それを打破する軍部への期待につながり、やがて戦争に至ったという面もあります。

そうして日本は敗戦し、国家は崩壊しました。日本政府に代わり、GHQが実権を持つと、農地改革など大胆な社会改革に着手しました。それにより、小作人たちに地主の土地が分け与えられ、自作農の割合が大幅に増加しました。地主たちの多くは土地を失うことになったのです。

それから80年が経ち、現在では再び格差が拡がりつつあります。同じく分け与えられた農地でも、都市部と地方とでは価値が異なります。
戦後すぐの時代では日本のほとんどが農地でしたが、高度経済成長期に都市部では住宅や工場、オフィスなどが大量に開発され、その用地が必要になりました。その用地を持っていた都市部の農家と、田舎の農家から出てきて都市部で働く人とでは、資本力に差が生まれました。
都市部へのますますの人口集中が進む現代、この傾向は今でも続いており、これが格差社会の一つの要因です。

地主の能力

ここまで地主の歴史について触れてきました。
ここでは、地主の能力について考えます。上にも書いた通り、地主というのは土地から収益を得ているので、自分が働く必要がありません。つまり、個人の能力が低くても問題はないのです。

もちろん、地主でも優秀な人はたくさんいると思いますが、自分の稼ぐ能力以上のお金を手に入れている人も多くいることは事実です。

地主の子供とは、「先祖が良い土地を持っていたこと」によって今お金を得ている存在であると言えます。


日本経済の収支

話は変わりますが、皆さんは日本という国がどのように稼いでいるかご存知でしょうか。

私が子供の頃は、学校で日本は加工貿易の国だと習いました。今20代後半くらい以上の方は、そう聞いたのではないでしょうか。
加工貿易とは、原材料を輸入し、それを加工して完成品にして輸出するというものです。高度経済成長期以降、日本はこのような貿易により稼いでいました。

しかし、現在は違います。
日本は貿易では赤字です。つまり、日本で作ったモノを輸出するより、外国で作ったモノを輸入する方が多いのです。(本当はもっと複雑ですが、あえて単純化するとこのように言えると思います。)

にもかかわらず、日本全体の収支は黒字なのです。これはどういうことかというと、日本は外国への過去の投資による利子や配当などによって稼いでいるのです。ちなみにこれを第一次所得収支と言います。

日本企業はこれまで貿易で大きな利益を出してきました。それを外国企業の株や不動産、その他の権益などに投資してきました。外国経済の成長により、それらの資産価値が高まり、そこからお金が生まれるようになりました。現在の日本は貿易は赤字ですが、世界中に所有している様々な資産によって稼ぐことができているのです。

既に言いたいことはお分かりかと思いますが、これはまさに地主と同じような状態です。ある意味、一生懸命働いてモノを作らなくても、お金が入ってくるようになっています。

誤解のないように言っておくと、日本人が全員働いていないとか、サボっていると言いたいわけではありません。ただ、過去積み上げた資産により、労働の対価以上のお金を得られている状態になっているということです。

地主と日本の今後

地主と日本経済の共通点について理解いただけましたでしょうか。もちろんこれは物事の一側面ではあり、また個人個人で見ると事情は異なりますが、全体論としてこのような状況であることは間違いないです。

では、今後はどうなっていくのでしょうか。働かなくてもお金が入ってくるのであれば、それでいいじゃないかと思われるかもしれません。

しかし、残念ながら未来永劫これが続くことはありません。なぜなら、世界経済は日本経済以上のスピードで成長しており、日本の資本に頼る必要性が薄れていくからです。そうなると、日本は改めてどのようにお金を稼ぐかを考えないといけないようになります。

地主の子供が土地代に依存していたせいで稼ぐ力が無くなることがあるように、今の日本も貿易で稼ぐ力が落ちています。このまま進み、資本から得られるお金も減った時、いよいよ日本は外国からモノを輸入できなくなり、食料にも困るようになるかもしれません。

そうならないように、全体の収支だけにとらわれず、常に本質的な生産力を維持、高めていくことが非常に重要だと考えています。

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