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旅行記

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#エッセイ

森と湖の国 前編

森と湖の国 前編



いままでアジア諸国ばかり巡っていたわたしが、なぜ唐突にフィンランドに行くことしたかといえば、それはやはりわたしの育った町に由縁しているのであろう。

わたしが育った町はむかしからフィンランド、というよりはムーミンと関係があった。ムーミンの世界観を模した公園が丘陵のすぐそばにあり、そこへは子どものころからよく行っていたし、その親しみやすいフォルムに愛らしさも感じていた。そして去年、この町にあらた

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森と湖の国 後編

森と湖の国 後編

3月16日、フィンランドの緊急事態宣言によって、すべての美術館、博物館、図書館の閉鎖が決められた。効力を発揮するのは2日後の3月18日から。とはいえ、対応を急いだ施設はレストランやカフェも含め17日から閉めていた。3月17日、わたしはヴァンターからフィンランド第2の都市でありサウナキャピタルとも呼ばれるタンペレと移動することになっていた。

そのころになってわたしもやや不安を感じ始めていた。帰りの

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森と湖の国 中編

森と湖の国 中編



街中の観光スポットをおおかたまわったわたしは、郊外に足を伸ばしてみたくなった。そのころには、乗り物にもだいぶ慣れ、バス下車の際には運転席のミラー越しに片手を上げてドライバーに謝意を伝えることも、車内の電光掲示板にあらわれるバス停の名前を見て自分の降りるべきバス停が近づいているかどうかもわかるようになっていた。

それはVRと呼ばれる特急列車に乗ってイッタラ村を訪れたときのこと。
前日、イッタラ

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