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セカンドハウス

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古き良き昭和の別荘リノベーション記録。
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#エッセイ

セカンドハウス プロローグ 『イサムの家』

人生には、いくつかの大きな転換期が訪れる。 若い頃は、夢や希望に向かって飛び込み台に上り、躊躇なく先の見えない深い水の底を目刺して飛び込んでゆくものだ。 半世紀以上歳を重ねるとこれまでの経験からその怖さや痛みも想像でき、それが逆に『あだ』となり、熟慮を重ねた上に踏みとどまることが多くなる。何らかしらの大きな『きっかけ』がないと動けないものだ。 昨年の父の死を目の当たりにして、健康寿命を考えるようになった。 『あとどれくらい何ができるか、やり残したことはないか。。。』 植

セカンドハウス 『猫を連れて』

『少しまだ暑いかなあ。また沢山汗かいちゃうのかな。』と、少し痛めている重い腰を上げて、草刈りに庭に出てみたら、あれ?嘘のように涼しい。 作業の手を止めて、両手を上げてバンザイ。 初秋の風を味わった。 庭のコナラの木にドングリ発見。 酷暑の続く中、ほど遠い思っていた秋がようやく訪れたようだ。 ヒメシャラの葉もだいぶ落ちて、枝の間から透けて見える空も秋の青だ。 さて、いよいよ9月。セカンドハウス を購入して6ヶ月が過ぎた。 荷物出し、家具入れ、内装工事と準備期間を経て、キッチン

セカンドハウス 『ある日のLUNCH』

7月末まで、セカンドハウスのキッチンやトイレの内装が終わらなかったので、友人が訪ねてきてもお昼は外食又はコンビニ飯だった。 お陰で、イタリアン、タイ料理、蕎麦、うどん、ラーメン、とんかつ屋、パン屋とこの近辺に明るい職場同僚などのお勧め店を一通り食べ歩き、どれもハズレがなく、自信を持って来訪者をご案内できるようになった。 有難いことに食に関しては都会からずいぶん離れているにもかかわらず、この地域は、なかなか優れている。 先日内装が終わり、友人のN君が訪ねてきたので、新しくなっ

セカンドハウス 『台風一過』

週末に向けて、出勤途中のいつものスタンドでガソリンを入れる。 『軽油5000円でお願いします。』 『5000円だとちょうど33.33ℓなんだよね。』 馴染みのスタッフがニコニコしながら、レシートを手渡した。 朝からゾロ目は、いいことありそだ。ついでに目の前の車のナンバーはというと『30-30』でまあまあ。 そんな中、ラジオは遠くにあるノロノロ台風の動きと警戒予報を伝えていた。 不安は的中。金曜日は記録的な土砂降りとなった。 自宅目の前の河は今にも溢れそう。雨はこれでもかと断

セカンドハウス 『夏時間』

もう、お盆というのに未だ暑さ止まず。 都会に比べて2℃ほど涼しいこの場所も、30℃超えは流石に活動意欲を奪う。内装工事の間できなかった草刈りを全身滴る汗と共に短時間で済ませ、急げ!屋内退避だ。 新たに仲間入りした椅子でクールダウンするも今度は西日が暑い。 この椅子のカラーがちょうどこの家に似合いそうだったので、記念に購入。 デザイナー新居孟氏による1970年に誕生した『カレーライスのような椅子』と言われる名作、折りたたみロッキングチェア。 シンプルで座り心地が良く、長気に渡

セカンドハウス 『内装工事終わる』

5月始めに内装工事屋さんと打ち合わせをしてから、システムキッチンの納期に合わせ、6月中盤から内外装工事が始まった。 工期は当初約3週間の予定だったが、外の配管工事、雨戸の取り替え、梅雨時期も重なり、結局のところ引き渡しまで5週間ほどかかった。 改装前は、玄関からトイレ、浴室の水回りに続く床は、昭和のビニール床。 懐かしい感じがそれはそれで面白かったが、端々にめくれや汚れもあったので張り替えを行った。 続いてキッチン。 こちらも懐かしい琺瑯扉のシステムキッチンと作り付け戸棚

セカンドハウス 『6月の庭と飴色ビンテージ』

湿気と暑さで不快な梅雨到来。 セカンドハウスのヒメシャラも6月末でほぼ花の終わり。 6月末の庭は、スモーキーな緑の森だ。 6月の庭作業は、草刈り、雨に備えて側溝の落ち葉除去。 そして暴れた梅の木から少しの梅を収穫。 剪定もしていない枝だから、伸びたい放題。上の方につけた実は『三角ホー』で枝を引っ張ってもぎ取る。 『三角ホー』は雑草取り用の道具なのだが、コンクリートにへばりついた苔落としとか、色々な意味で優秀な道具。 レーキと三角ホーは必須アイティム。 庭に植えた山紫陽花は

セカンドハウス 『ヒメシャラの庭』

GWが過ぎて、セカンドハウスへ向かう週末の朝、出発時間に少し余裕が持てるようになった。 さらにいいことは、到着直前の街道沿いに地場産の野菜や植木などを販売している『道の駅』があり、出発を遅らせることでちょうど開店時間にぴったり間に合うようになった。 朝9時。地元の人たちで賑わっている。駐車場はあっという間に満車だ。 店内はどれも安くて新鮮なお野菜や果物が棚にぎっしり並んでいる。 もうそれだけで豊かさを感じ、気分が昂揚してワクワクする。 季節がもう終盤の夏蜜柑、今が旬の枇杷、

セカンドハウス  『障子張りと5月の庭』

いわゆる『別荘』を英語にすると、『villa』や『second house』と言われるようだが、それぞれ若干ニュアンスが違うらしい。 こちらは、豪邸でもないし、バカンスで泊まっているわけでもないから、どちらかかというとやはり『second house』の方が近いだろう。 そう、いわば今の自宅の『離れ』的な存在。 今のところ、週末行って、作業して珈琲を飲んで帰ってくるというルーティーン。 キッチン、水周りの大規模リノベもまだ見積理段階であり、5月の作業は極めて地味な『整え』作

セカンドハウス 『緑の風と光』

緑が濃くなったヒメシャラの葉がさわさわと揺れ、緩やかに傾斜した南側の窓から、爽やかな5月の風が家の中を抜けてゆく。 イサムノグチの照明も風に乗って、それぞれがふわふわと揺れて面白い。 南と北に大きな開口部があるこの家の風通しの良さに、改めて感心する。 『障子張り替え』のため障子を取り去った窓からは緑色しか見えない。 庭仕事を終えて、一服。 夕方の木漏れ日に感動する。 ここなら光遊びができそうだから、明治大正時代のガラスプレートを久しぶりに持ち出して、ここで使ってみようと思

セカンドハウス 『ヴィンテージ椅子と音』

3月末から父、母に続き今度は飼い猫の入院騒ぎ。 同時並行で仕事とセカンドハウスの準備、という大きな環境の変化を受け入れつつの心労が重なり、半ば暫く人生を休みたくなってしまった。 しかしお陰様で、今は猫も危機的状況からカムバック。 そうしている間に、庭のヒメシャラが一気に芽吹き始め、『緑の森』に替わった。 イギリスヴィンテージG-PLANの椅子をようやく搬入。 珈琲を飲みながら『庭を見ながら何もしないをする』のがここでの愉しみだ。 椅子は実際に座ってみないと分からないので、

セカンドハウス 『静寂の庭劇場』

セカンドハウスの引き渡しが無事終わり、すぐに4月を迎えた。 庭のヒメシャラも芽吹き始め、野鳥のさえずりだけが長閑にこだましている。 本日は、手を入れる前の庭の話。 1月の内覧時は、ヒメシャラの大木の落ち葉の間に、日本水仙がポツポツと。その後2月から3月は純白の猫水仙(白房水仙)から黄色のラッパ水仙に自然と交代していった。 庭の隅には、鹿のフンと、木肌が剥げた幹あり。 暫くここの来訪者は、動物ぐらいだったのだろう。 前回も話したように、このフロントガーデンは暫く植栽はせず、