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【ショートショート】生き写しバトル

「第410回、生き写しバトル〜!」
 司会の言葉に客席から拍手が響く。
「芸能人の方を目標にして、誰が一番生き写しなのか争うこの番組、今日の目標はこの方です!」
 司会が提示したモニターには往年の名俳優が映し出されている。既に鬼籍に入っているが、近年ネット動画で作品が話題となり人気が再燃していた。
「それでは早速挑戦者の皆さんに登場いただきましょう」
 司会の合図と共に舞台袖から番号札をつけた複数人が入ってくる。その誰もがモニターに映された俳優の顔にそっくりだった。それもそのはず、全員が俳優のクローンなのだ。
「ふむ、3番はなかなかいい線行ってるよ」
「少し佇まいに深みが足りませんかね、これが促成成長の限界ですかねぇ」
 クローンが手軽に作れる今の時代、いかに本人に近づけるかは育成環境もポイントなのだ。笑いながら品定めする審査員とは裏腹にクローンたちの表情は冴えなかったが、その場にいる誰もそれには気がついていないようだった。



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