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【ショートショート】忍者ラブレター

アヤメは優秀なくノ一だ。幼い頃より指導を行い、当代一の忍びに育ってくれた。
だというのに。
私の背後から殺気を漲らせて忍び寄って来ているのは当のアヤメだ。熟練の忍びである私には容易にその気配を察する事ができる。
アヤメらしくもないが、一体どうしたことか。
そう思った次の瞬間、捨て身の体で抱きつかれ唇を吸われてしまう。
私は慌ててアヤメを引き剥がす。しまった、私としたことが油断した。
毒でも含まれていたらまずいのだが、今のところ異変はない。しかしそうすると先ほどの行動は何だったのか……。
そうして注意を逸らしてしまったのが良くなかった。気がつけば目の前のアヤメは、私に向けて何やら書状を突きつけていた。
「……これは?」
よくよく書状を見てみれば、丸みがかった文字で貴方様に懸想云々、と書いてある。
もじもじとしながらアヤメが言う。
「ラブレターです」
「……そうか、分かった。次からはもっと穏便に渡してもらえると嬉しい」



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