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【ショートショート】未来断捨離

 とある喫茶店で少女が二人、タブレット端末を覗き込みながらおしゃべりをしていた。端末画面には下から上に向かって無数に分岐する線が表示されている。
「じゃあ、これは?」
そう言いながら一人が線の内の一本をタップする。するともう一人の少女が大人になり、何やら事務作業をしている姿が映し出された。
「うーん、これはなんかつまんなそうだし、いらないかなー」
少女はそう言いながらその線を画面から削除した。
 個々人の将来の選択肢がAIによって判別できるようになった事により、望まない選択肢を断捨離することがブームとなった。
 二人の様子を近くの席で眺めていた老人が小さくため息をついた。彼の手元にも少女たちと同じタイプの端末があるが、彼女たちのものとは違って画面に表示されている線の本数は数えるほどしかない。
「まったく贅沢なもんだ。ワシに残された選択肢なんてもう殆どないというのに。断捨離なんて出来るのは選択肢が無数にある若いうちだけだぞ」



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