【ショートショート】なるべく動物園

「『なるべく動物園』？ へえ、試しにどんなものか入ってみるか」
　旅行先で不思議な看板を見つけた男は興味本位で園内へと入ってみた。最初に目についたのは空っぽの檻の中にやたらと首の長い動物の3D映像が投影されている展示だった。説明板にはこう書かれている。
『キリン：哺乳綱偶蹄目キリン科キリン属に分類。かつてアフリカに分布していたが木材伐採や農地需要の増加による生息地の劣化や消失、装飾品の需要により絶滅』
　その他の展示も軒並み空の檻に3D映像が投影されているものだった。たてがみのある大型の猫のような動物や、灰色で鼻が長く曲がった牙をもつ動物など、全て絶滅していた。展示を見ていた男に係員らしき人物が話しかけてくる。
「いかがでしたか？なるべく動物園にしたかったのですが、残念ながら次々と動物が絶滅してしまいましてね。今ではリアルの展示があるのはゴキブリくらいのものですよ」
園長を名乗る男はそう言って寂しそうに笑ったのだった。

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