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【ショートショート】スベり高等学校

「お前はどこの高校受けるんだ?」
中3向け進路相談の後、カズに聞かれて俺はビックリした。こないだまで泥だらけで遊んでたカズが受験の話を始めたからだ。考えてない、とも言えず慌てて学区の高校リストからここだよ、と適当に指さす。ちょっと不審そうな顔でカズが俺の指した先を見つめる。
「なになに……スベり高等学校? お前こんなとこ受けるのかよ」
俺もそう思うけど、ゴマかした以上はそんな様子を見せられず、必死に言い訳する。
「スベりを馬鹿にするなよ。物事を円滑に進められる生徒を育てるってのが目的だからその名前なんだよ」
「そう聞くと良さそうだな。一緒に受けようかな……んん?」
「どうしたんだよ」
「いや、見間違えてたわ。スベり高等学校じゃなくて、滑川高等学校だったわ。『川』の字が『り』に見えてた。ってことはお前、適当に答えたな!」
俺は観念して素直に謝る。
「ごめん、悪かった」
「ま、そんだけ滑るように喋れるんなら、面接だけは大丈夫だな」



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