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英語のサマーキャンプに行ったらなぜかダイエットキャンプだった

100キロ超えのわがままボディ20人に囲まれる

英語のサマーキャンプに申し込んだのに、なぜかキャンプ会場兼宿舎であるハイスクールには100キロ超えのわがままボディの持ち主20人が待ち受けていました。

しかもどう見ても英語ネイティブでは?

私はうろたえた。
英語力のなさとぽっちゃりボディの外見から勝手にダイエットキャンプ参加者と見込まれてつれてこられたのでは……。

困惑する私に校長はドヤ顔で言い放つ。
「彼らはダイエットキャンプに参加している中学生だよ。寮は一緒だから」


え? 

事前に聞いたところによると、オヤジ(校長)は子供たちに教育の機会を与え地域貢献したいという熱い思いから、ポケットマネーでこの学校を建てたそう。

そのわりに、夏休みにダイエットキャンプと英語のサマースクールを同時進行し365日高校の敷地をフル活用するなど、商魂たくましい。
しかも当時のアメリカじゃ金のなる木のダイエットキャンプと、比較的金払いのいい外国人に目をつけるとは、なかなかのやり手です。

オヤジの副業はさておき、中学生ということは。

こうして私の英語のサマーキャンプは始まったのです。
英語漬けを基準に選び抜いただけあって日本人は私しかおらず、メンバーは中国人とイタリア人、バングラディッシュ人、パナマ人のわずか5名!
こんなマイナーなサマーキャンプ、私も含め、みなさんどうやって探し当てたのか我ながら不思議です。

初日から一抹の不安どころか騙されたのではと疑心暗鬼になっていた私でしたが、このサマーキャンプ、予想外のところで英語力向上に大い役立ったのです。

おやつをつけ狙うダイエッターが英語力アップに貢献


ESLなどの普通の英語学校なら、先生以外のネイティブと話す機会はありません。学校以外でも英語力に難ありの外国人に話しかける人はそう多くないと思います。

ですが寮をダイエッター達と共有していたため、彼らが次々話しかけてくることにより、ネイティブ英語に触れる機会は目白押しだったのです。

ちなみに彼らが寄ってきたのは私たち外国人と友達になりたいとか、異文化に興味があるとかそういう理由は1ミリもありません。
ただひたすら、私たちのおやつを狙ってすり寄ってきました。

彼らは体型だけ見ると貫禄あふれる中高年にしか見えないのですが、みんな12~14才の食べ盛り。
痩せたいなんてこれっぽっちも思ってない。
なのに、無理矢理親ダイエットキャンプに送り込まれたのです。

中には「ママは邪魔な私を追い払って彼氏と仲良くやってるの。パパも不倫してるから親が別れたら私は寮に住みたい。二人の相手はどっちも最悪だから」など、アメリカならでは?のシビアなことをケロッとして言う子もいて、ものすごくカルチャーショックを受けました。

それは例外として、こんな人里離れたど田舎に送り込むあたり、親たちの本気度が窺えます。都会ならバスや電車ですぐに脱走できるけど、ここは絶対に逃げられないからね~。

しかも毎日35℃近くにもなる灼熱のテキサス(砂漠も近い)。
田舎過ぎてコンビニなどなく、一番近くのスーパーは徒歩40分という僻地。
立つことさえ嫌いなお太りさまたちは食べ物を求めて買物に行くのも断念する、ひたすら過酷な環境です。

食べ物を求め、転がりまわって泣き叫ぶ14歳に呆然


彼らの「食」への並外れた執着はすさまじく、常に食べ物を求めていました。
校長は英語のサマースクール生を週3回スーパーに連れて行ってくれましたが、ダイエッターは外出厳禁の監禁状態。

だからこそ、私たちがスーパーに行く日を嗅ぎつけては、「お金渡すからピーナッツバター買ってきて」などなど、入れ替わり立ち代り部屋を訪れ食料の買出しを頼まれました。

大好きなオニオンリングとクラシックコーラのない悲しみに耐えられない!
とある少年に泣きつかれた私は、掟を破って彼のためにブツを調達してしまいました。
コーラが売り切れていたのでダイエットコークにしたけど、大丈夫よね。

でもコーラを見たとたん、
「うっうっうっ…」
と過呼吸のような状態に。

「どうしたの!?」とうろたえた瞬間、「うぎゃああああっ~!!」と全身全霊で号泣。

あまりの事態に立ち尽くす私。
ダイエットキャンプに参加して2週間。
かったのか、彼は床に転げまわり、野太い手足をバタバタさせて暴れ狂って幼児のように絶叫したのです。

「もうダイエットコーラはヤダ! 本物のコーラじゃないとイヤダだーっ!!」

どこかで遭難して究極に飢えていたのならわかります。
でも食べたいものを食べられないからと転がりまわって大泣きする14才(しかも見た目年齢40代)をこれまで私は見たことがありませんでした…。

ほどなくしてダイエットコーチ&なぜか私たちの校長先生が駆けつけました。
そして泣き叫ぶ彼の両手両足を二人で持って撤収したのです……

「…な、なんだったの一体…」
呆然と立ち尽くす私とたちに、戻ってきたダイエットコーチからが言い放ちました。

NO FOOD!!!!

その後、私たちが理解できるように簡単な英語で色々と言いましたが、つまりは中学生にして「命に危険が及ぶほどのリッチボディなので絶対に痩せなきゃいけない。そのために彼らの親は大金を支払ってる。だから君たちは絶対にダイエットの邪魔をしないように!!」ってことらしいのです。

号泣床ローリング大暴れ事件の後、あの少年はもちろん、他のダイエッターたちの買物依頼は不気味なほどパタリとやみました。

それもそのはず、あのダイエットコーチが看守のごとく彼らの動向に目を光らせはじめたからです。

ダイエッターは痩せないのになぜか自分は7キロ減量

しかし。
そんなに過酷なダイエットを強いているわりには、プログラムは緩いような……。
全員中高年並みに膝を痛めているゆえ、ハードな運動はご法度なのはわかります。
が。
手をつないで輪になってぐるぐる回るウォーキング(?)、プールに申し訳程度に動くアクアビクスで本当に効果はあるのか。
食事もダイエットの割にはビーフにアップルソース(うっ…)などかけてるし。

傍目にはまったく痩せたように見えない彼らを尻目に、なぜか私たち英語キャンプの生徒たちはみるみる痩せていきました。

それは食べ物があまりにもまずかったから(笑)。

小太りだった私は、どんなに頑張っても痩せなかったのに、テキサスに来てからなんの苦労もなくラク~に7キロも減!

なにせあまりのど田舎で娯楽が何もなかったため、35℃の暑さの下、自由時間はプールで泳いだり牧場をぶらぶらと歩いたりしていたのですね~。

しかも100円お菓子でさえ超ハイクオリティの日本の食べ物に慣れた私には、ここのすべてがまずい!(すみません、、、)

お菓子は大味で人口的ですし、なぜか肉や魚料理に甘いフルーツソースかけるし。
普通に食べられるのは果物と野菜、卵とパンくらい。
最初こそ日本食が食べたくて仕方なかったのですが、連日の暑さで食欲もなくなり、気づいたら健康的に7キロ痩せていたのでした。

ラッキーと思わぬ副産物に喜んでいた矢先、事件は起こってしまったのです。

「驚愕の集団脱走!アメリカダイエットキャンプ事情」に続く

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