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アメリカで待っていたのは散弾銃を持ったカウボーイハットのオヤジだった

2020年を境に別世界に突入してしまいました。
海外はおろか国内でも自由に行き来するのは憚られる現状を考えると、自分がニューヨークに住んでいたのが信じられません。


当時のアメリカはスーパーモデル全盛期のキラキラした時代。高校生一年生だった私はアメリカの高校に編入する前に英語のサマーキャンプに参加すべく、ダラス・フォートワース空港に降り立ったのでした。


そこで私を待ち受けていたのは、ティアドロップのサングラスをかけカウボーイハットを被った謎のオヤジ(失礼)。
私の名前を書いたボード持ってるけど何もかもが怪しすぎる。


「ど、どこかに売られて殺されるかも…」

と恐れおののく私にオヤジは能天気な声で言った。
「ハーイ。アイムザヘッドマスターオブなんたらかんたら」
 

ヘッドマスター…校長??
えっ、なにこのオヤジ(失礼!)校長先生なの?
グレーのスーツにメガネ&バーコードヘアという非常に偏った校長イメージを持っていた私には衝撃の事実。
ファッションはその人自身を表現するといいますが、
何を主張してのサングラス&カウボーイハットなのか。


駐車場に連れて行かれた私は、なぜか巨大なトラックに乗せられました。
後部座席には散弾銃らしきものが見え、金縛り状態に。

 
自由を求めて渡米したくせに、「アメリカ=油断したら殺される国」と思いこんでいたので、校長と名乗るオヤジがもう連続殺人犯にしか見えない。


車窓を流れる「ザ・アメリカ」的な大都会ダラスの風景なんかもう目に入りません。
 
そんなこととは露知らず、オヤジは片手で運転しながら陽気にしゃべり続けています。
わけがわからないまま強張った笑顔で「イエ~スイエ~ス」などと頷いた結果、いきなりジョン・デンバーが爆音で流れ始めました。
おそらくオヤジは「テキサス来たらカントリーだ!カントリーを聴かなきゃテキサス人とは言えない!」的なことを延々と語り倒していたのでしょう。

 
のどかなカントリーミュージックの旋律とともにドンドン田舎へ突入し、すれ違う車もまばらに。
ただっ広い道路の両側には牛たちが…。

 
「ひ、人里離れたところで、本当に殺されて捨てられるかも…」

と恐怖が頂点に達したとき、トラックは牧場のような門構えの敷地に入って停まったのでした。


空港からおよそ2時間半。
私の予想を裏切り、超ド田舎の高校に無事着いたのでした。
しかし、車を降りた私の目の前に広がっていたのは

 
わがままボディの方々がグラウンドで輪になって手をつなぎ、延々と回っている姿――

 
な、なんとそこはダイエットキャンプ場だったのです。

 
英語のサマースクールに来たのに小太りの体型からダイエットキャンプ参加者と思い込まれての結果なのか。
まるで宇宙人でも呼ぶかのような光景に再び疑惑は渦巻くのでした。

 
「英語のサマースクールに行ったらなぜかダイエットキャンプだった」に続く

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