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【感想】“After Impressionism: Inventing Modern Art”(ナショナル・ギャラリー)

特段専門家でも何でもないですが、なんとなく印象派と呼ばれるあたりの絵画に惹かれるなぁ、と感じています。
そんなわけで、現在ロンドンにあるナショナル・ギャラリーで開催中の “After Impressionism: Inventing Modern Art” 直訳すれば「印象派の後:現代美術を発明する」、期待以上の展覧会でした!

というよりおそらく、これまで私が行ったことのある展覧会は一人の画家にフォーカスしたものや、ある美術館にフォーカスしたものだった気がします。

今回は様々な美術館の所有する様々な絵画を使った企画。印象派絵画というものの歴史を勉強しているような感覚になる展示で、とても楽しめた、というのが期待以上になった理由だと思います。


個人的お気に入り:Théo van Rysselberghe, 'The Scheldt upstream from Antwerp, Evening
https://www.nationalgallery.org.uk/exhibitions/after-impressionism-inventing-modern-art/inventing-modern-art

(前日まで原田マハさんの「楽園のカンヴァス」を読んでたこともあって「あ、あれの話か!」と思うポイントが多かったのも楽しかったのかもしれません)

過去の芸術作品と今の価値観について考える

今回の展覧会の主題ではありませんが、今回絵を観ていて浮かんだのが、過去の芸術作品を価値観が変化していく世の中でどう捉えるのかという疑問です。

偶然にも先日Twitterで見かけたマティス展に関するこちらの記事(https://blog.tenjuu.net/2023/04/henri_matisse)を見かけており、作品のどの側面を見ていくのか(見せていくのか)、素人ながら考えていたところでした。

そんな中、ゴーギャンの “Nevermore” の説明書きを読んでいた・聞いていた際にあったのが、「女性の裸体をエキゾチック化するという西欧的伝統を永続させた」「植民地におけるヨーロッパ人という立場を搾取した」「現代美術と西欧の文化という名のもとにこのような有害なナラティブが隠されてきた」という解説。さらにAndré Derainらの絵に関して、「アフリカやオセアニアのアートに影響を受けたこれらの西欧の芸術作品がフォーヴィスム(Fauvism)と呼ばれていく背景には、西欧以外のアートは原始的で劣っているとした植民地的価値観が透けて見える」とした解説。(筆者が要約・意訳しています)

Fauvism を代表する画家の作品:André Derain, ‘La Danse’
https://www.nationalgallery.org.uk/exhibitions/after-impressionism-inventing-modern-art) 

これまで恥ずかしながらそこまで考えて絵を見たことはなかったので、新しい視点でした。

画家本人や、その作品に評価を下してきた人が生きていた時代には問題視されるような考え方ではなかったとは推測されます。だからこそ価値観が変わっている現代において、このような絵の芸術的側面だけをみて終わってはもったいないのではないか、”有害なナラティブ”(damaging narrative)も認識した上で芸術作品も見ていくことで現代における価値観・考え方を再認識することにもなるのではないか、と帰りの地下鉄の中では考えていました。

ちなみに

ナショナル・ギャラリーで行われる展覧会、基本的には入場料が別途発生します(常設展示を見る分には入場料は入りません)。しかし、金曜の17:30以降は “Pay what you wish”、払いたい分だけ払ってみることができます(最低1ポンド)。イギリスの高い学費と円安に苦しむ学生なので、私は1ポンド+音声ガイド5ポンド=6ポンドを払い、正規料金24ポンドの展覧会を楽しみました。ナショナル・ギャラリー、ありがとう。

*バナー写真:https://www.nationalgallery.org.uk/exhibitions/after-impressionism-inventing-modern-art

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