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デジタルカメラでフィルムを再現する

あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

突然ですがフィルム風の現像ができるプリセット3つをデジタル写真現像ソフトのCapture Oneで作成してみました。

・富士フイルム 業務用100(生産終了:別の方の作例と解説
・富士フイルム Pro400H(生産終了:別の方の作例と解説
Kodak ColorPlus200(現行品:別の方の作例と解説

作成したきっかけは、年末年始に昔のフィルムを見返してたら自分ごとながら予想以上に素敵で、デジタルでも同じように現像してみたいと思ったからです。
また、そもそも単純に個人的にこれらのフィルムの色味が好きなのと、フィルムとデジタルで同じシチュエーションで撮影したデータが沢山あったことも、マイプリセット作成の後押しになりました。特に上記2つの富士フイルムは既に生産終了となっており通常の手段では入手できませんので、デジタルでなんとか再現するしかないのです。

作成方法は、
・できる限りフラットな光で色被りが少ない条件で撮影されたデジタルの写真とフィルム写真(写真店「カメラはスズキさん」でデジタル化してもらったデータ)を選びます。
・それらをRGB・輝度の数値や目視で比較して、デジタルカメラの写真をフィルムに近づけていき、プリセットのプロトタイプを作ります。
・最後に、同じフィルムで撮影された別の写真にプリセットを適用して、更に微調整を加えていって完成です。
・なお、自分はポートレートをよく撮るため、厳密に同じ色に近づけるのが難しい時は、モデルさんがより自然に見えるような色になることを優先します。

今回のプリセット作成の目標としては、
細部にこだわって個々のフィルムの完全再現を目指すのではなく、
それぞれのテーストを活かしつつ、デジタルカメラでのポートレート撮影・現像のベースとなる、色味が良く使い勝手のよいものとすることです。
販売用ではなく、自分の実用のために製作していますので、スキントーン重視で程よい塩梅にできればと思います。

それでは以下の通り作例を見ていきましょう。既に被写体として活動されていない方は、顔が出ておらず特定困難な写真のみを使用しております。

1 富士フイルム 業務用100

まずはフィルムから。フィルムというとなんとなく色味が薄かったり、コントラストが弱かったり優しい印象ですが、実はそんなことはありません。
コシナさんが2004年に発売したPlanar 50mm/1.4 zf.という新しいレンズを使っているからか、このスキントーンと樹木の緑は本当に素晴らしいです。
そのため、まずはこれらの色を表現できるように調整してみました。

film 業務用100 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 zf. (コシナ)

フィルムはちょっと中間部がかすかにYellowに寄っていて、それを上手く再現しきれませんでしたが、非常に美しい肌色を表現できたと思っています。緑色はどうですかね、少なくともデジタル臭さは和らいだような気もしますが。

Nikon Z7 + Carl Zeiss Sonnar 135mm/2.8 MMJ (ヤシコン)
Nikon Z7 + Carl Zeiss Sonnar 135mm/2.8 MMJ (ヤシコン)
Nikon Z7 + Carl Zeiss c Sonnar 50mm/1.5 (コシナ)
Nikon Z7 + Carl Zeiss c Sonnar 50mm/1.5 (コシナ)

次に緑色を中心に比較してみましょう。この業務用100の緑色は本当にさりげなくて、好ましい緑色なんですよね。自分はデジタルカメラの黄色がかった緑が苦手で、いつも色相変換で寒色方向に寄せてしまいます。

film 業務用100 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 zf. (コシナ)
film 業務用100 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 zf. (コシナ)

紫陽花については撮影場所も光も違いましたし、約60年前に作られたレンズで撮影したという言い訳もありますが、緑色はOKレベルではあるものの、改善の余地有りですね。黄色から緑に遷移する部分はもっと上手く処理できますね。ただ、黄色をいじり過ぎるとモデルさんの肌の色に悪影響が出かねないという課題がありますが。

Nikon Z7 + Nikkor-s Auto 55mm/1.2
Nikon Z7 + Nikkor-s Auto 55mm/1.2

次に日中の暖色系の表現を詰めていきたいと思います。北側の部屋で直射日光は入りませんがよく光が廻る部屋で撮った写真となります。
1枚目はシャドウ部の寒色系の色とハイライトの暖色系の色が柔らかなコントラストを描いてて本当に美しいですね。
2枚目はかなり暖色系の写真になりますが、彩度も結構高く、また、廻った光によって髪の毛のシャドウ部が浮き上がりつつも、明るい部分としっかりとしたコントラストが描かれていますね。

モデル:小鳥遊夢さん

film 業務用100 + Nikkor-H Auto 50mm/2
film 業務用100 + Nikkor-H Auto 50mm/2

デジタルはOKレベルですね、少なくともそれっぽい雰囲気は出てるし、スキントーンも綺麗汗
ただ、私のレタッチの腕だと、まだまだ豊かな暖色系のグラデーション・表現を再現できなかったです。。。もちろん中間部・暗部のトーンカーブの青色を下げて、赤色を上げたら再現はできるのですが、そうなると他の写真に使う際に全体的なバランスが崩壊してしまいます。自分としては実用重視のプリセットにしたいので、今のバランスで留めています。

Nikon Z7 + MC Rokkor-PG 50mm/1.4
Nikon Z7 + MC W.Rokkor-HH 35mm/1.8

最後に角部屋の室内のミックス光となります。直接の逆光ではないのですが、右手側の窓からの光が直接モデルさんを照らすと共に、背後の窓からも入った光が木造の部屋に反射して、焦茶色の光がモデルさんに当たっている状態となります。
自然光で照らされたモデルさんを彩度高く美しく描くと共に、暗部はしっかりと沈んでおり、明暗のコントラストも最高ですね。まさにフィルム写真。

モデル:水湊のどかさん

film 業務用100 + Nikkor-H Auto 50mm/2
その他作例

デジタルは、まあOKレベルでしょう。。。
暗部が沈み切っておらず、赤色だけが浮いている状態になっています。一方で、安直に輝度を下げすぎてディテールも損なわれています。
カーテンのハイライトも少し赤みがかかっています。ただ、ハイライトの赤みを消すと、今度はスキントーンが悪くなってしまうという悩みが。これらのトレードオフ(上手な人だったら解決可能?)を踏まえて、スキントーン優先で現像しています。

Nikon Z7 + Carl Zeiss Milvus 85mm/1.4

以上、めちゃくちゃ難しかったし、改善の余地は多大にありますが、なんとなく雰囲気だけは出ているような。。。

最後に業務用100の再現の設定についてですが、
・トーンカーブ
輝度は定番の逆S字型のカーブとしつつ、中間部は明るめに設定しています。
赤は暗部・中間部をかすかに下げて、緑色は中間部を下げ暗部・ハイライトをかすかに上げています。青色は緑色と同様ですが、中間部のみ結構がっつり下げています。冒頭の写真のスキントーンを出したかったからです。
・HSL
暖色系を赤にかすかに寄せています。冒頭に書いたように、緑色の色相は青色にがっつりと寄せて、彩度も結構落としています。明度も同じくらい上げています。
・カラーバランス
スキントーンが綺麗になるように隠し味程度です。基本はトーンカーブ・HSLで調整しています。

2 富士フイルムPro400H

KodakのPotraと並んで、おそらくかなりの熱狂的なファンがいるフィルムになります。自分も初めてPro400Hで撮影した写真を見た時はかなりの感動がありました。まだ何本か持っていますが、勿体無くて使いきれずに、利用期限が切れてしまっています汗
特徴としては、美しい粒状感、精細な描写、優しい穏やかな色合いとなります。露出がはまった時は、本当にフィルムとは思えないほど立体感豊かに精細に描写しますし、下手なデジカメ・レンズでは太刀打ちできないほどです。
全世界の多くの方がLut/プリセットの作成にいまだいそしんでいながらも、決定版が出ていないことから、再現が難しく、でも魅力的なフィルムであると分かります。

まずは初めてこのフィルムを使った時の写真から。
明暗のコントラスト、色再現、美しい粒状感、もう言うこと無しのメロメロですね。自分はこの時の感動を再現したくて、ずっとフィルム風の現像を模索し続けているほどです。

モデル:椎名凛さん

film Pro400H + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 zf. (コシナ)
film Pro400H + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 zf. (コシナ)
その他作例

なんとかそれっぽく再現できているような気もしますがいかがでしょうか。この時は約60年前の、しかもほぼジャンク品のレンズで開放で撮影したので、さすがにZeissの切れ味・色彩・コントラストには追いつけていませんが、雰囲気だけは出ているような。。。ただ、暗部は沈み切らなかったですし、ちょっと色も濁っている感じですね。

Nikon Z7 + Super Takumar 50mm/1.4 (8枚玉)
Nikon Z7 + Super Takumar 50mm/1.4 (8枚玉)

こちらの写真は緑の発色が本当に素晴らしいし、スキントーンも最高ですね。この日は薄曇りだったような気がします。あと髪の毛の微妙なグラデーションもしっかり表現できています。
なお、Xでのポストは残っていますが、既に公で被写体活動はされていないと思われる方なので、ここではトリミングして掲載いたします。

film Pro400H + Carl Zeiss c Sonnar 50mm/1.5 (コシナ)

これは上手く再現できたと思います。髪の毛や中間部の黄色の微妙なニュアンスは出し切れていませんが、スキントーンも緑も本当に美しくできたと思います。スキントーンの表現に定評があるレンズのおかげですね。白黒写真時代のガチのオールドレンズを使うよりは、カラーフィルム登場以降に出てきた、それなりに新しいレンズで撮影した方がフィルムを再現しやすいんでしょうね。一方で、最新のデジタルカメラ用レンズだと描写が緻密すぎて、それはそれで向いていない気もしますが。

Nikon Z7 + MC Rokkor-PG 50mm/1.4

最後は雨の日の室内で撮影した写真です。デジタル・フィルム共に現行品のCarl Zeissのレンズになりますが、画角は違います。
フィルムは、ハイライトはかすかに赤みがかかり、中間部はかすかに黄色に転びます。見てて疲れない、穏やかな優しい色合いです。

film Pro400H + Carl Zeiss c Sonnar 50mm/1.5 (コシナ)

自分ではこの微妙な色合いを再現しませんでした。なんとかこの写真だけに合わせても、他の写真にプリセットを適用したら少々おかしな色合いになりそうということも懸念したためでもあります。
そのため、窓側からの光が当たる左手の色合いを合わせることに集中しました。結果としては、悪くないかなぁと感じてますが、いかがでしょうか?
ただ、このレンズは性能が高過ぎですね汗 フィルム時代のCosina Zeissぐらいが一番やりやすいような気がしました。

Nikon Z7 + Carl Zeiss Milvus 85mm/1.4

以上、微妙なニュアンスは出し切れませんでしたが、プリセットとしては自分用ならば普通に使えるくらいにはできたのではないかと思っています。

最後に再現時の設定についてですが、
・トーンカーブ
輝度は定番の逆S字型のカーブとしつつ、中間部は明るめに設定しています。
赤は全体的にかすかに下げて、緑色はハイライト・中間部を下げ、暗部をかすかに上げています。青色はハイライト・中間部を上げて、暗部を下げています。全体的に少し寒色っぽい感じにしています。
・HSL
冒頭2枚目の写真がカラーチャートっぽいので、基本的にはそれに合わせています。緑色だけは、業務用100と同様に色相を寒色系に寄せ、彩度も下げていますが、業務用100ほどはいじっていません(パラメーターとしては半分程度)。
・カラーバランス
スキントーンが綺麗になるように隠し味程度です。トーンカーブで調整し切れなかった部分を修正するのみで、具体的には暗部にマゼンダよりの青を、ハイライトに赤色を少しだけ足しています。

3 Kodak ColorPlus200

暖色系の表現に定評があるフィルムになります。野外順光では鮮やかに、室内ではノスタルジックに描いてくれます。特に野外での緑色の表現ははっとするほどの鮮やかさです!

こちらは10月の15時くらいの写真になります。秋の夕方前の暖かな光に照らされて、植物が非常に美しく写っています。2枚目はなんとはなしに撮っただけですが、ドラマチックに過ぎますね〜。3枚目の青空はKodakらしく、少し暖色がかっています。

film ColorPlus200 + MC Rokkor-PG 50mm/1.4
film ColorPlus200 + MC Rokkor-PG 50mm/1.4
film ColorPlus200 + MC Rokkor-PG 50mm/1.4

デジタルでの再現は結構上手くできたんじゃないかなぁ、と思っています。ちょっと色の深み・彩度が足りないような気もしますが、彩度を上げてしまうとポートレートに応用できないと思い、ここまででとどめています。

Nikon Z7 + Carl Zeiss c Sonnar 50mm/1.5 (コシナ)
Nikon Z7 + Carl Zeiss c Sonnar 50mm/1.5 (コシナ)
Nikon Z7 + Carl Zeiss c Sonnar 50mm/1.5 (コシナ)

日中室内になります。直射日光ではありませんが、柔らかく窓から外光が入ってきています。ピントは少しずれていますが、色彩の確認のため採用しました。
室内だと全体的に少し赤みが強く、暗部がかなり沈みコントラスト高く描写されます。服の鮮やかな深緑色が、寒色系で彩度・明度低くなっています。
一方でハイライトのスキントーンは結構ニュートラルに透明感高く描写されています。

モデル:真っ白さん

film ColorPlus200 + MC Rokkor-PG 50mm/1.4
その他作例12

全体的な色調・コントラストは結構再現できたような気がします。
ただ、ハイライトのスキントーンはどうしても無理でした。フィルムほど、暖色系・ニュートラルにすることはできず、ハイライトがかなり赤みがかかった硬い描写になっています。
あと暗部の髪の毛はもう少し上げてもよかったかもですね。

Nikon Z7 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 Zf. (コシナ)

最後にフィルムだけ。ColorPlus200の柔らかさと暖かな色合いが出て、好きなフィルム写真の一つです。またコントラストも強過ぎることなく、繊細な描写です。
が、これまで作ったプリセットを当ててても、全くこのような写真が再現されませんでした。。。ハイライトから中間のスキントーンの柔らかさが出るように根本からプリセットを別に作らないと無理そうな気がしました。野外順光と柔らかな拡散光とで全く描写が異なるジキルとハイドのようなフィルムかもしれませんね。まあ、自分にレタッチ技術がないだけかもしれませんが。
なお、ColorPlus200は試行錯誤中なのでパラメーターの記載は控えたいと思います汗 というか、まだ現行のフィルムが手に入るのでデジタルで再現する必要もないんですけどね。。。

モデル:水湊のどかさん

film ColorPlus200 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 Zf. (コシナ)
film ColorPlus200 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 Zf. (コシナ)

最後に

以上、フィルム風のレタッチを試みてみましたがいかがでしたでしょうか。深い分析なく、模範解答(フィルムデータ)を手元に置いて、それをデジタルに合わせるだけでしたが、フィルムデータ自体が変幻自在なので再現にはとても苦労しました。
苦労した理由は以下の通りですが、だからこそ完璧なフィルム再現などないと言えるのかもしれません。

(1)撮影データの偏り
満遍なく色んな条件で撮影された撮影データは持っておらず、そのため明暗部の色味の違いが出ている可能性もあります。また、似たような条件といっても、同時に撮影できている訳ではありませんので、刻々と変化する自然光や周囲の環境光等によって、デジタル・フィルムで色が異なっている可能性があります。
厳密にカラーチャートを使った色合わせもできておりません。

(2)レンズの違い
ほぼ同時に撮影しているとはいえ、使っているレンズが異なります。特に、デジタル・フィルムで異なるメーカーのものを使っていたり、ましてやオールドレンズを使っている場合もあります。そうなると厳密に色を合わせるのは本当に難しいです。

(3)現像・スキャン
そもそも同じレンズ・フィルムを使っていても、現像所によって色やコントラストの違いが出てきてしまいます。
これはフィルムの世界では常識?で、プロの写真家さんはかなりフィルム写真現像の際にはかなりの事細かに現像パラメーターを指定されていたと聞きます。実際、気の利く写真屋さんに行かれれば、現像の好みをかなり詳細に指定できますし、フィルム写真マニアの方はわざわざ自分好みに現像してもらうために海外の現像所を使われる方もいるようです。そもそもアジアと欧州で同じフィルムを現像しても全然違う結果になることもあるようです(アジアは寒色系、欧州は暖色系の現像が好まれるとどこかで読んだことがあります)。なので、住む場所によって、例えば富士フイルムのPro400Hで想定される色が異なる場合もあるということです。
また、自分は、「カメラはスズキさん」しか利用していませんが、特に厳密に現像条件を指定していないので、写真によっては現像パラメーターをお店で調整いただいているかもしれません。
これらのことから、フィルムごとに基本的な傾向はあるかもしれませんが、現像というプロセスを挟む以上、人それぞれで思い浮かべる色が少し異なるかもしれません。

加えて、フィルム写真は現像しただけではPC・スマホでは見れません。現像したフィルムを機械でスキャンしてデジタルデータにする必要があります。そうなると、スキャナーの機種や設定によって、更に色・コントラストがバラバラになる可能性があります。そもそも、ネガフィルムをデジタル化するにはネガポジ変換のプロセスも必要で、そこでもかなり色味が異なって出ます。

実際、いただくフィルムデータによっては、現像または現像やスキャンの過程でホワイトバランスの調整がかなり行われているな〜、ということが分かる場合があります。また、同じ現象所・同じフィルムでも、現像・スキャンした時期によって明らかに色が異なってデジタル化されたこともありました(お店も日々試行錯誤しているのでしょうか)。

つまりデジタル化までの過程で簡単に色をいじることができるのです。例えば、以下の通り、自分でネガフィルム(Kodak ProImage 100)をデジカメを使ってデジタル化したことがありましたが、写真屋さんで現像されたKodakの暖色系のイメージはどこへやら、寒色系の色味になってしまいました(これはこれでお気に入りですが)。ちなみに、このようなデジタル化のことをフィルム・デュープ(film duplication)と言いますが、実際には和製英語?で英語圏ではfilm digitizationと言うそうです。

film ProImage100 + Nikkor-s Auto 55mm/1.2
film ProImage100 + Nikkor-s Auto 55mm/1.2
その他作例

なお、全く違う日の写真ですが、大手写真量販店の現像コーナーで依頼して現像した時の写真がこちらです。Kodak社の公式の現像ラボに送って現像しているとのことです。The Kodakといった感じの色味ですね。ただ、被写体さんのスキントーンの観点からは少し使いづらさがあります。

film ProImage100 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 Zf. (コシナ)
Kodak ProImage100 + Nikkor-s Auto 50mm/1.4だったような
film ProImage100 + Nikkor-s Auto 50mm/1.4だったような
film ProImage100 + Nikkor-s Auto 55mm/1.2
モデル:椎名凛さん
film ProImage100 + Nikkor-s Auto 55mm/1.2
モデル:椎名凛さん
その他作例12

最後は「カメラはスズキ」さんでのおまかせ現像。なんとなくKodakらしいニュアンスはありながらも、自然で優しい発色ですね。見返していたら、またこのフィルムを使いたくなりました笑

film ProImage100 + Carl Zeiss c Sonnar 50mm/1.5 (コシナ)
film ProImage100 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 Zf. (コシナ)
film ProImage100 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 Zf. (コシナ)
モデル:椎名凛さん
film ProImage100 + Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 Zf. (コシナ)
モデル:椎名凛さん
その他作例

ここまで3通り(自宅でのデジタル化、Kodak公認現像、カメラはスズキさんでの現像)のデジタルデータを見てきましたが、同じフィルムを使っていると見分けられる方はいらっしゃるのでしょうか。
自分は、このように現像やデジタル化の環境・やり方によってフィルムをベースとしたデジタルデータの色は容易に変わりうることが分かったため、フィルム特有の色味にこだわり過ぎることはなくなりました(もちろん傾向はあると思います!)。

そうなってくると、誰もが納得できるような色味でフィルムをデジタルで再現することは不可能なのかもしれません。もちろんフィルムメーカーのラボで定めた厳格な色・コントラストの見本があるかもしれませんが、我々一般人が個人個人で思い浮かべる統一的な色はないかもしれません。
実際、様々なプリセットやLutが出ていますが、自分の写真に適用してみるとイマイチなのは、アナログであるフィルムの解釈が人それぞれで異なることと、そもそもプリセットの作成者と各々のカメラマンが使用しているデジタルカメラのメーカー(センサーとrawアルゴリズム)やレンズも違うためです。

このような難しさがある中でデジタルカメラで撮影した写真をフィルム風にレタッチすることの意味はなんなのでしょうか。
個人的には、特定のフィルムの色・コントラストを無理に再現しようとするのではなく、フィルム的なアナログの揺らぎを自分の好きなテイストでデジタルで再現することにあると考えています。
そもそもどれほどすごい特定のフィルムのプリセットを作ったところで、実際のフィルムは様々な条件でアウトプットが揺らいでしまうので、完全な再現はできません。また、デジタルカメラだけで撮影した場合は模範解答となるフィルム写真もないです。つまり、フィルムプリセットを使う中でどういった写真を好ましいものとするかは最終的に自分で調整・判断するしかないです。
自分としては、特定のフィルムの完コピができなくても、フィルムが一般に有するあるいは特定のフィルムに由来する表現上好ましい特質をデジタルで再現できればokとしています。最終的にはデジタルカメラで納得できるアウトプットを出すことが目的としているからであり、細かな調整前のベースになればいいやくらいで考えているからです。

そういう意味では、個人的には今回のデジタル再現の試みを通じて、自分自身が今後も使用・改善していけるようなベースとなるプリセットができたと満足しています。また、第三者が現像(デジタルで言うとレタッチ?)したフィルム写真を、デジタル的に模写することで、色や表現の一層の理解にもつながった気がします。

以上、最後の項でぐだぐだと語ってしまい恐縮ですが、お読みいただきありがとうございました!
みなさんも是非フィルム・デジタルで一緒に写真を撮ってみて(※)、自分の好きな色合いのフィルム写真をデジタル再現してみることをお勧めいたします!フィルム写真もデジタル写真も一層好きになると思います!

※フィルムとデジタルで一緒に撮影する際は、絞り・シャッタースピード・ISO感度をフィルムカメラと同じ設定にして、また、デジタルカメラのオートホワイトバランス機能はオフにして「晴天」(or色温度・色被り補正をオフ)モードで撮影してみましょう!レンズは近年発売されたもので、同じメーカーのものをお勧めします。
できる限り同じ条件にすれば、再現もしやすくなると思います。

※ちなみに、Capture Oneを使った理由は以下の通りです。
・Photoshopのようにレイヤーを重ねたレタッチが可能で、各レイヤーも基礎となるレイヤーと同じぐらい豊富なパラメータをいじることができます。
・特にHSLも特定の色域・明度を指定しての調整が可能で、かつそれが基礎レイヤーだけでなく、各レイヤーで重ねて調整が可能で、色が大変いじりやすいです。
・色やコントラストがLight Roomと比べて穏やかで、フィルム風の現像にも向いています。
・Photoshopで現像する場合は数百MBのデータに書き出す必要がありますが、Capture OneではLight Roomと同じように非破壊型で編集ができます。

<参考文献等>

以下の資料が基本的なアプローチを勉強するのに非常に役に立ちました。ただ、これらを理解した上で、実際のフィルム写真と照らし合わせながらプリセットを作るのが一番だと思いますし、応用も利くようになると思います。

書籍
デジタルでフィルムを再現したい」(嵐田 大志、玄光社)
ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」(鈴木啓太 | urban、玄光社)
カラーコレクションハンドブック第2版」(Alexis Van Hurkman)

Youtube
【永久保存版】これさえ見とけば完璧!Capture OneでのRAW現像」(bird and insect)
Raw現像でフィルムの色を再現する【Lightroom,Capture One,Davinci resolve】」(bird and insect)

(補足)

一応室内の環境光(正午・晴れ・1月)ですが、カラーチャートに合わせたプリセットの比較をしてみましたので、参考までに掲載します。業務用100でもSS/絞りを合わせて撮影していますので、Filmの現像ができ次第、後日さらなる比較をしてみたいとおも思います。
なお、比較に当たっては、
・Carl Zeiss Planar 50mm/1.4 zf.を、SS60/f2.8/ISO100にして撮影、
・編集ソフト上で撮って出しの画像のグレーカード(70%グレー部分)の輝度を128/256に調整して、各々RGBの値が同じになるようにWBも調整します、
・当該WBを業務用100/Pro400Hプリセットに適用します。それぞれのプリセットが適用された画像について、別レイヤーを作成し、同レイヤー上で70%グレー部の輝度を128/256に、RGBの値を同一になるように露出・WB調整をします。
・こうして作成された同一の輝度・RGBの値を持つ撮って出し・業務用100/Pro400Hプリセットの画像データをカラーチャートに当てはめます。またカラーチャートに当てはめた上で、当該カラーチャートの70%グレー部分に合わせて適宜調整します。
・そうすれば、輝度128/256に設定された際の各々データの各色の違いや暗部・ハイライトにどのように色が乗ってくるか分かるはず。。。もちろん中間部もそれぞれ色の違いがあるとは思いますが、今回は明暗部でどのような変化が起きるか見たかったので、あえて基準点として中間部を同一化・固定して比較するものです。
・またフィルムが現像できたら同じように調整して、よりフィルムの再現が捗るはず!

以下は適宜画像をご覧ください!なんとなくそれぞれのフィルムの特徴が出ているような。。。

業務用100はハイライト・暗部共に緑・青が強く出ており、また、コントラストも強烈です(暗部のつぶれがフィルムっぽい)。
一方で、Pro400Hは、ハイライトは撮って出しと数値上は同じですが、発色・コントラスの弱さもあり、ちょっと優しい感じ?暗部は緑・青が若干強く出ている感じです。

70%グレーの画像


Nikon Z7 + Carl Zeiss Milvus 85mm/1.4をPro400Hプリセットで。
冒頭は、Nikon Z7 + MC Rokkor-PG 50mm/1.4を業務用100のプリセットで。

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