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忘れられる幸せ

 数年前にようやくわかった自分の体質だが、油ものは質が悪いと気持ち悪くなってしまう。何度か飲食店で食べた後に、気持ち悪くなったことがある。揚げ物を扱う店では、使う頻度が家庭とは違うので、いくつも揚げているうちに、どうしても劣化していく。

 その劣化したタイミングに当たると、その日は吐きそうな気分のまま過ごす羽目になる。

 以前揚げ物で痛い目を見た店に、今日たまたま寄ることになった。揚げ物さえ避ければよかったのに、すっかり忘れていた僕は注文してしまった。その結果、今日は胸焼けをずっと抱えていた。

 何度か胃からせりあがってくるものに悩まされながらも、僕は人間の忘れる力ってすごいなと思った。
 思い出したくもない苦い思い出や失敗をちゃんと忘れさせてくれるのだ。事実がなくなるわけではないが、それでも生きるのを確かに楽をさせてくれる。物忘れや予定のすっぽかしなども生まれてしまうのだが、そのことすらも忘れられる。

 なにか躓きを繰り返していたり、行き詰まりを感じていたりする人ほど、過去の強い呪縛をずっと抱え込んで覚えている。脳内で何度も再生し続けている。

 忘却は一般的にあまり良いイメージはないかもしれない。けれど、忘れたら思い出せばいいだけだ。失敗したら謝ればいい。楽観的に生きるために、忘れる能力は欠かせない。

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