1つには集中できない
ちょっとしたワークの一環で、河川敷に行った。川沿いには木も人工物もないので、どこもかしこも日光が照らしている。小さな歩道橋の下に、ほぼ唯一の日陰を見つけて、そこに潜り込んだ。
斜めに敷かれたブロックに仰向けに寝転がり、目を瞑って、30分くらいぼーっとしていた。
あまり深く考えず、呼吸していると、だんだん自然との境界線が溶けていく感覚がある。肌が風を撫でる感覚が好きで、風と一体になってみたかった。結果だけをいうと上手くいかなかった。
川のせせらぎや草のむせかえるような匂い。隙間を縫って聞こえる小さな虫の声が1つに集中することを許してくれない。
そこでふと気づいた。
内向的や外交的というけれど、内とか外とか分けてしまう意味では、両者のレベルは変わらないのだ。全部を取り込み、同時に自分自身もそこに入り込み、一体になる。そうした時、風も川も虫も全部同じだった。
自分の感性では、別物ではあるけれど、自然に溶け込んでみると全体で1つだった。「癒し」という言葉は、傷ついている前提で使うような気がして、あまり好きではないのだけど、あの感覚は「癒し」だったと思う。
日々他者との距離を取れと言われ、境界線は色濃くなっていく。だから、それを溶かす行為はとても貴重な時間だった。
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