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人間なのさ

 レンタル更新のハガキが届いていた。

 更新の特典でCDでもDVDでも一作品が無料になるらしい。観たい作品が1つあったのだが、お店に行って検索してみると、そのお店では残念ながら取り扱っていないらしい。

 仕方なく、お店をブラブラしてCDの棚から、半ばランダムになにか1つを選ぶことにした。

 僕は昔から音楽を聴く習慣がない。サブスクリプションが普及する前でも、CDを自分で買ったのは本当に数える程だ。一番最初に買ったCDは、おそらく千と千尋の神隠しの主題歌の『いつも何度でも』だろう。音楽そのものよりも映画が大好きだったから買った。

 学生時代に友達が熱狂していたロックバンドも話を合わせるために聴いたけれど、「この曲に救われた!」と熱く語る友人に共感しきれなくて、申し訳なく思っていた記憶がある。

 人差し指でタイトルをなぞりながら、なんとなく引っかかった一枚を棚から取り出す。名前も聞いたことのないバンドだった。そのままレジへ行き、7泊8日で借りた。

 家に帰って2日間放置していたが、ふと今日気が向いて、その音楽を聞いてみた。

 不思議と、響いた。

 僕達は偶然の世界に生きていると思っている。偶然誰かと出会い、別れ、偶然失敗し、成功する。ちょっとタイミングが違うだけで全く結果が変わるなんて珍しくなく、だから運も実力のうちだとされるのだろう。

 今の僕もまた偶然の産物だ。その偶然に抗うよりも、もっと身を委ねてもいいのかもしれないなと思った。次になにが起こるのかわからなくて、でもそれを楽しめる。それが最強の人間なのかもしれない

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