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革靴の片割れ、どこからきた?

 帰宅途中、道端に革靴が片方だけ落ちていた。
 茶色い男性用の靴は、手入れがされているのか色ツヤもよく、そこそこお値段が張りそうな代物だ。

 発見した瞬間、僕は思わず二度見した。なぜ革靴がこんな場所にあって、持ち主はもちろんのこと、残りの片割れはどこにいったのか?

 周囲を見回してみても、靴を売っているような店はない。車道沿いなので、人が生活しているような建物もなく、落ちてきた可能性も考えられない。しばらく迷った結果、僕はそのままその場所を後にした。警察に届けると言っても事情が説明できないし、もし持ち主がいるのなら、おそらく取りにくるだろうと思った。

 しかし、帰宅してからも、どんな経緯であの場に靴の片方が取り残されたのかわからない。
 そもそも靴は、身につけるものの中で、最も忘れにくいものだ。他人の靴を履き違えることはあっても、履くのを忘れたり、途中で脱げたまま放置するなんて、まずありえない。だからこそ、道端に落ちていた事実に、強烈の違和感があったのだ。

 たとえば、落ちていたのがサンダルみたいなものであれば、片方の足を骨折して松葉杖で歩いていた人が落としてしまった、と無理やりでもストーリーを思い描ける。

 しかし、革靴となると妄想を膨らませるのも難しい。

 おそらく、履いていたのではないだろう。つまり、別の靴を履いていて、それとは別に革靴を持っていたのだ。それがなんらかの形で、片方だけ落下した。ここまでは無理なく考えられる。

 でも、この先の物語はまったく見えてこない。
 もし考えられたら、きっと僕は日常系ミステリーが書ける作家になれていたかもしれない。正解でなくてもいいから、この謎に説得力のあるストーリーをつけられる人がいたら是非教えてほしい。

 

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