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張り詰めた糸、尻込みする

 聞くのを躊躇う瞬間が、最近たまにある。

 僕がずっとやってきたインタビューゲームのルールの一つに「なにを聞いてもいい」がある。人間は日常生活の中で、自己規制をして「聞いてはいけないこと」を作り出してしまう。だからインタビューをする間だけでは一切の禁止事項はない。

 しかし、実際の場面では聞くのを躊躇っている人を何度となく見てきた。

 インタビューゲームを始める前の僕は、聞くのを尻込みしてばかりだった。しかし、繰り返しインタビューする過程で、以前より格段に「なんでも聞ける」ようにはなってきている。

 そのはずなのに、最近聞かない場面があるのはなぜだろうか?

 ああ、そうか。自分の書き方で気づいた。
「聞けない」のではない。「聞かない」のだ。

 タイミングが悪いから、内容が取るに足らないから。そうやって自己規制していたかつてと違って、今ならば聞こうと思えば尋ねることができる。しかし、その話の答えを聞くのに嫌な予感がして、踏み止まっているのが最適かもしれない。

 それをしているのは、どことなく相手に緊張感を覚えているからだ。
 相手の身体が強張っている。我が身の健康を守らねばと無意識に構えている。その緊張を受け取って、もう一歩踏み込めずにいる。
 とても表現しづらいのだが、そんな状態なのだ。そして、自覚していないけれど、おそらく僕自身もまた少なからずその影響を受けているのだろう。この緊張をほぐすには、少し時間がかかるかもしれない。

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