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【60歳のラブレター感想ネタバレ】昭和の夫婦の形と、令和に通ずる「夫婦とは何か」の問い

映画「60歳のラブレター」を観ました。

2009年に公開されたその作品には、バリバリの「昭和の夫婦」が描かれていました。

女性の私から見ると腹立たしく感じられる、男尊女卑が際立った部分がありました。
たった13年前の作品だとは思えないほどです。

男尊女卑は受け入れがたいものの、その世に生きた祖父母を思い出し、「ああ、祖父母もこんな感じだったけど仲が良かった」と微笑ましく感じたり、男尊女卑を抜きにしても「夫婦って結局いつの時代も変わらないのかも」と思える部分がありました。

また、勝手ばかりして離婚された夫でもここまで元妻のために尽くせるなら、今一度、愛情が生まれることがあるのかもしれないと思う部分も。

反面、散々好き勝手してきた夫なのだから、捨てられてボロボロになって生涯を閉じるまで後悔すればいいのに、とも思ってしまったんですけどね。

既婚未婚問わず、「夫婦とは?」と考えることがある方に、お勧めする映画です。

「60歳のラブレター」のあらすじと、私の感想をまとめます。

60歳のラブレターはキャンペーン企画だった

「60歳のラブレター」は、住友信託銀行のキャンペーン名です。
2000年より毎年開催されていました。

「長年連れ添った夫婦が口に出しては言えない、互いへの感謝の言葉」を募る企画です。(参考:Wikipedia)

累計8万を超える応募が寄せられており、それを元に3組の夫婦の話としてまとめられ、描かれたのが「(映画)60歳のラブレター」です。

応募作品の中から傑作集としてまとめた本を、NHKが毎年刊行しています。

好評を博したキャンペーンが映画化・昭和の夫婦のリアルとロマン

映画の公開は、今から13年前の2009年でした。

2009年当時に60歳を迎える方は1949年ごろ生まれていますので、終戦後に生まれて、高度経済成長期に好景気の波に乗り、生きてきた夫婦という事になります。

60歳のラブレターは長年連れ添ってきた夫婦のセカンドライフを応援するための企画ですので、応募者に明確な年齢制限はありません。そのため戦前から戦時中に生まれた方や、もっと若い方もいるのでしょうが、夫婦が過ごした主だった時代は、戦後の昭和と言えるでしょう。

「24時間働けますか」「男は稼いでナンボ」「男の浮気は文化」「女は三歩下がって歩け」「女は家を守るもの」「女は男を立てろ」

こんな言葉が言われていた時代でした。

映画60歳のラブレターあらすじ

橘孝平(中村雅俊)は、大企業の重役に上り詰めた企業人。
定年を迎え、会社に引き留められるも退職。愛人が経営する会社に転職して、更なる発展を夢見る。

孝平は定年を迎えたその日にも、愛人宅に寄ってから帰宅。
妻のちひろ(原田美枝子)と妊娠中の娘が祝いの席を用意していたが、不発に終わる。

ちひろは孝平の度重なる浮気を知っているが、黙認。
娘は父を軽蔑し、結婚を嫌悪しているため、彼氏と未入籍のまま出産予定である。

孝平とちひろは、同意の元離婚が成立。
孝平が愛人宅に移り、ちひろは広い一軒家に残ることになった。

孝平は出世のためにちひろと結婚しており、元からちひろに愛情がない。
ちひろも結婚当初からそれをわかっており、孝平がいつか自分を愛してくれると期待しながら、30年間口答えすることなく生活してきた。しかしいつしか、諦めに変わっていったのだった。

ちひろが利用している魚屋の主人、松山正彦(イッセー尾形)は糖尿病の診断を受ける。
酒ばかり飲んでいる正彦を心配した妻の光江(綾戸智恵)は厳しく叱り、運動のために正彦をウォーキングに連れ出すようになる。

正彦は光江に文句ばかり言い、光江も言い返すので喧嘩が絶えない。互いが「いつでも別れてやる」と日常的に口にしている。
正彦は出会った頃の光江は可愛かったのに、今はこんなになってしまったと心で愚痴を漏らす。

ウォーキング中に店頭で見る憧れのギターの存在だけが、正彦の憩いだった。

正彦の主治医の佐伯静夫(井上順)は、翻訳家の長谷部麗子(戸田恵子)の取材協力に応じている。
静夫は5年前に妻を亡くしており、遅くにできた娘と二人暮らし。麗子は仕事に専念しているうちに未婚のまま良い年齢となっていた。

正彦は娘に再婚を勧められたのをきっかけに、好意を寄せてきている麗子に惹かれていく。

離婚後、ちひろは経済的な心配もなく自由気ままな生活となった。
一度も社会に出たことがなかったちひろは、社会に出たいと願う。

ちひろは勤め先で出会った翻訳家の麗子に影響されて、どんどんと綺麗になっていく。
そして麗子の知人だった、年下のベストセラー作家、麻生圭一郎(石黒賢)に見初められる。

一方孝平は当初の計画通り、愛人が経営する会社に入る。愛人の会社は若い社員が集まるベンチャー企業。孝平は大企業勤めだった時のプライドの高いやり方が抜けず、周囲から孤立していく。孝平が反対した企画がクライアントに採用され、孝平は立つ瀬がなくなる。

圭一郎はちひろに、「夫に恋をしなかったから、夫の不倫を見逃し、口答えせずにいられたのだ」と言う。
ちひろは一度だけ「ラベンダー畑を見に行きたい」と夫にわがままを言ったことがあるが、叶わなかったと漏らした。

ある晩のウォーキング中、正彦はギターが売れてしまったことを知り、肩を落とす。
糖尿の診察の待合室で、正彦は光江に「店をたたんで光江の実家の田舎でのんびりしよう」と言い出す。光江は浮かぶ笑みをかみ殺す。

光江の厳しい管理のお陰で、正彦の糖尿の症状が改善。飲酒が解禁となった。喜ぶ二人だが、光江が頻繁に頭をぶつけることを知った静夫は、光江に脳外科の診察を勧める。顔色を変える正彦。

孝平はかつての仕事仲間に仕事の斡旋を頼むが、「あなたではなく、孝平がかつて勤めていた大手会社と仕事をしていたのだ。勘違いするな」と断られてしまう。落ち込んで会社に戻ると、年下の社員たちは皆忙しそうに仕事をしており、愛人は若い男性社員とただならぬ親密さを見せていた。

孝平は一人で愛人の部屋にいた。
慣れない手つきで愛人の洗濯物を干し、魚を焼いて焦がした時、娘が出産したと連絡を受ける。

病院でちひろと久々に顔を合わせた孝平は、ちひろのあか抜けた姿に驚く。

ちひろが出産したときにも、病院に駆けつけなかった孝平。
娘とちひろに責められて怒った孝平はその場を後にしようとするが、娘に促されて、ちひろを家に送っていくことになる。

孝平の腹が鳴ったのを聞き、自宅で食事を振る舞うちひろ。孝平は初めてちひろの料理に「美味い」と言った。ちひろに指摘されて、孝平はそんな自分に自覚がなかったことを知る。

孝平が落ち込んでいることに気付いたちひろは、強気だったころに孝平が言った、かつての言葉を持ち出して勇気づける。

光江は診察の結果、脳の手術が必要だと分かる。
手術の成功率が50%と聞き、正彦は動揺する。

手術の前、光江は家の襖を直しておくように正彦にお願いする。正彦は手術室に移動する光江の手を握り、「田舎で暮らすんだからな。俺一人にしたら許さねーぞ」とぶっきらぼうに伝える。看護士が光江に「旦那さん素敵な人ですね」と伝えると、光江は照れ臭く笑った。

手術は無事に終わったが、予断を許さない状況が続く。

麗子は静夫と娘を食事に招待する。
家事が苦手な麗子は、ちひろの助けを借りながら料理をしてもてなした。

ヘビースモーカーの麗子は食卓でも煙草を吸い、10代の娘に嫌われてしまう。娘は自分の態度が悪いと自覚していたが、亡くなった母とあまりに違う麗子を、受け入れられないのだと静夫に漏らした。
娘に徹底的に拒否された麗子は、静夫に別れを告げる。

正彦は家の襖を確認するが、特に直すべきところはなかった。
その際、押し入れの中にリボンのついた憧れのギターがあることに気が付く。

中には妻からの手紙が入っていた。
正彦は自分へのプレゼントだと分かり、ギターを抱きしめる。

孝平はちひろが一人で暮らす、かつてのわが家を眺めていた。そこに圭一郎が運転する車に乗ったちひろが帰ってくる。孝平が咄嗟に隠れた側で、圭一郎はちひろに「一泊でラベンダー畑に行こう」と誘う。

圭一郎が去った後、孝平に気付いて驚くちひろ。
孝平が「行くのか。騙されているに決まっている。ろくでなしだ」と圭一郎を責める。ちひろが怒り、「あなたは一度だって私を心配したことはない」と声を張り上げると、孝平は「いつからそんな口を利くように(なった)」と呟く。ちひろは「どんな口だって利く。ろくでなしはあなただ」と責めてその場を後にする。

その晩、ちひろの元に謎の訪問者が現れる。彼は孝平とちひろが新婚旅行で訪れた写真館の経営者の孫で、ちひろが30年前、60歳になった未来の孝平に宛てて書いた手紙を届ける使命を持っていた。

昔の自分が書いた手紙を読んだちひろは、彼に孝平の居場所を教えて、届けるように依頼する。

孝平は産後の娘が入院する病院にいた。渡された手紙には「頑張っていい奥さんになる。いつか本当に好きになってもらえるように。おじいちゃんおばあちゃんになった時、縁側でお茶を飲みながらこの手紙を読んでいられたら素敵」と書かれていた。

静夫の娘は、麗子の家に一人で訪れる。
麗子と話をしたことにより、麗子の人となりを知った娘。

正彦は光江の病室にギターを持ち込み、眠っている光江に弾き語りを聴かせる。
音に気付いた孝平と娘、病院にいた静夫は、光江の病室を覗く。

そこには泣くのを堪えながら、光江への愛情を込めて歌う正彦の姿があった。


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