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お母さんの枕に顔をうずめていたあの頃

童謡「おかあさん」を聴くと母親の枕を思い出す。

おかあさん なあに
おかあさんて いいにおい

せんたくしていたにおいでしょ
しゃぼんのあわのにおいでしょ

母親の枕の匂いが好きだった。

母親の香りが一番染みついていて、それを嗅ぐと安心感に包まれる。

小学校の頃、学校が休みの日も母親は仕事で家にいないことが多かった。

看護師で夜勤もしていたため、夕方から仕事に行く時は寂しくて泣いてしまうこともあった。

母親がいない夜は孤独感に襲われ、眠れないこともしょっちゅう。

家には父親と祖母もいたけれど、母親が一番そばにいて欲しい存在だった。

テレビを見ても、漫画本を読んでも母親のことを考えてしまう。

はやくお母さんに会いたい。

そんな時、私はいてもたってもいられず母親の枕の匂いを嗅いでいた。

母親のベッドにダイブし、枕の匂いをくんくん嗅ぐ。

それから枕に顔をうずめ、圧迫された鼻孔のわずかな隙間から、枕に染みついた母親の香りを思い切り吸い込み、母親の存在を感じる。

そして、安堵感とやすらぎに包まれたあとは、いつのまにか眠ってしまっている。

そうやって孤独な夜を乗り越えてきた。

今日はお天気が良かったので、枕カバーを洗い、枕もベランダに干してみた。

枕から母親の匂いが香ることはないだろうけれど、今夜はあの頃のように枕に顔をうずめて眠りにつこうと思う。




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