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「衛生 リズム&バキューム」を観た

我らが雪組の(元)姫、咲妃みゆさんが古田新太の舞台に出るって?!
しかも、悪人しかいないヤバそうな舞台?!
しかも、ゆうみちゃん(咲妃みゆさん)にとってこれまでにないくらいハードな演技をしているって?! 観るしかない!

ということで、感染対策をしっかりとって赤坂ACTシアターへ。

(注)
最近ACTシアターに行ってきったような書き方をしていますが、この記事は2021年の話です。ずっと下書きに残ってて今更投稿しました。すみません。
それでは過去の振り返りということをふまえて、どうぞ。

暑いのに入場までが長い

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とっても晴天で超暑かった。
汗だくで見上げる巨大な古田新太の顔。


地下鉄赤坂駅から地上へ上がると見えてくる、恒例のドデカポスター。
古田新太の顔がバーーーン、尾上右近の顔がバーーーン。
いかにも悪そうな顔。
さすが「善人不在」というキャッチコピーがつくだけある。

汗だくで階段登ってきたのに、もし観客から感染者が出た場合の緊急連絡先を登録してなかったもんだから、建物に入る前にチケットに名前と連絡先を記入。
「汗が止まらん!」と思いながら劇場スタッフに消毒スプレーをかけてもらい、検温して、いざ中へ。

普段ならロビーには開演までおしゃべりをしたり珈琲を飲んだりして好きずきに過ごすお客さんがたくさんいるのだけど、ぜんぜんいない。しーんとした廊下は観劇に来たとは思えないほど。トイレ列をみて、「これくらいは人来てるんだ」って感じるくらいでした。
客席は、感染対策のためお客さんは50%しか入れないとのこと。
どのフロアもガラガラで、すごく寂しい客席でした。
古田新太さんも、何かのテレビ番組で「お客さんを前に舞台できる喜び」の話をしていました。こんな状況になってからわかる当たり前にお客さんが入るありがたさってやつですね。

ちなみに、物語の舞台は下水道設備が普及する少し前、昭和33年のK県H市の住宅街。くみ取り業者「諸星衛生」を軸に、欲望のためなら買収、恐喝は当たり前といったひどい人しか出てきません。
しかもキャッチーな楽曲に乗せて、“うんこ”などの下ネタが次々と飛び出すという最高なミュージカルです。

咲妃みゆの新境地

さて、今回観に来た目的であるゆうみちゃん。この公演で新しい扉を開けましたよね。
なんというか、強い女はこれまでも演じてたと思うんですが、こんな悪役は新境地なのでは…。

ゆうみちゃんが演じたのは、諸星衛生の従業員・花室麻子と、大(諸星衛生の息子)の娘・諸星小子の2役。
麻子さんはおしとやかで可憐な外見とは裏腹に、育った環境の影響から、人間関係の捉え方に独特の欠落がある女性。ちょっと目を離したすきに時計で人の頭を殴ったり、微笑みながら鉈を手に死体を解体しようとするシーンなんかもあったりして(しかも解体したものは豚に食べさせる)。見た目と行動のギャップがたまらない良いキャラでした。
麻子さんが自分の過去を語るナンバーでの性的な振り付けも、いつものゆうみちゃんからは考えられないほどしっくりきてて、女優さんってすごいなあと感じました(小学生の感想)。

1幕から数年後、2幕では麻子さんと大の娘として生まれた小子さんを演じたゆうみちゃん。
麻子さんとはうって変わって、小子さんは悪人感を全面に出している強い女の子。自分を生んで亡くなった母の恨みをはらすべく、父に復讐しようと企てるしたたかな様子を熱演していました。
父に「小子の“しょう”は小便の“小”だ」なんて言われたらむかつくに決まっている….。まさるの大も大便の大だろ。

声を張り上げるシーンも多くて、こんなにおっきい声だしてるゆうみちゃんってあんまり見たことなかったなあとか思いました。

下ネタ全開、お下劣万歳みたいな作風の中、周りのパワーに負けじと体を張って力強く演じていたゆうみちゃん。
ゲネプロ後の取材では「これまで避けて通ってきた道の、ど真ん中を突き進む感じ」と語っていたけど、この作品も彼女の糧になったはずですし、これからの彼女が楽しみで仕方ありません。

右近さんの活躍

そして、歌舞伎ファンとして楽しみにしていた尾上右近さん。
歌舞伎以外はジャージー・ボーイズしか観たことなかったのですが、アクの強い役が上手ですね。
声が腹から出てて常にデカイし、態度もデカイ。自信は過剰。
両手をポケットに突っ込んで、ふんぞり返って歩く姿が似合いすぎていて笑いました。ピンストスーツいいです。
最後までクソ野郎を貫き通していて、逆に清々しかったです。

所々に歌舞伎の所作入れてくるのも楽しくて。オープニングからいきなり最高。
ツケの音に合わせてランニングシャツ姿で見得を切るキレッキレの右近さんと、その横でふわっと歌舞伎っぽいポーズを取る古田さん。蜘蛛の巣投げテープ的な感じで背後からきれいな弧を描いて降ってくるトイレットペーパー。
歌舞伎へのリスペクトというべきか…..とにかく笑いました。


ゆうみちゃん、右近さん以外の皆さんもそりゃあもう悪人で。いろんなバリエーションの悪人がたくさん出てきたので、とっても面白かったです。恐喝する古田新太さん、新興宗教を操るともさかりえさん、振り回されるノンスタの石田明さん、政治汚職の六角精児さんなどなど。

どっかの記事で、「音楽の力を悪用し、ミュージカルの魔法にかかる」とかかれていましたが、本当にそう。
劇中歌はどれもいい曲ばかり(歌詞はすごいワードばっかりだけど)。それもそのはず、メインテーマはいきものがかりの水野さん作曲。そのほかの曲は益田トッシュさん。
欲望むき出しの歌とか極悪っぷりを自慢する歌とか、歌ってる内容は暴力と下品にまみれて極悪非道なんだけど、胸くそ悪くならないというか聞いていて辛くないというか。
音楽のポップさやアツさが、演目の不謹慎さを相殺してくれている感じ。

フィナーレなんて、不謹慎だしこの上なく汚いシーンなんですが、もう一周回って感動してきてしまって。
ここまで悪を貫ける登場人物たちはいっそ清々しいし、こんな汚くてカオスなシーンをこんなにゴージャスに演出できるなんてすごい。バカすぎて最高でした。

ゲネプロの映像はこちら。


古田新太さんの舞台は、ロッキーホラーショーくらいしか見たことがないけど、こういうナンセンスを楽しむ感じ、好きだなあ。
再演されるロッキーホラーショーも楽しみです。


2021年7月17日 赤坂ACTシアターにて


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