kirikoの童話「父ちゃんのばか!」
みなさん、こんにちは。kirikoの童話へようこそ。
今日はお話は「父ちゃんのばか」です。
主人公のサキトとサキトのおばあちゃんは漁師の父ちゃんの帰りを待ちます
が、なかなか帰ってきません。
その時のサキトとおばあちゃんとの温かい物語です。
ここからは物語のはじまりです。
楽しんでよんでくださいね。😊
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あらしは何日もやむことはありませんでした。
九さいのサキトは、はげしくたたきつける風と雨の先にぼんやりと見えるみなとに目をむけたまま、何時間もまどからはなれようとはしませんでした。
そんな後ろすがたを見てばあちゃんはサキトにやさしくいいました。
「サキト、こんな所にいっとかぜを引ぐがらこだつさ入れ」
サキトはそういわれても、本当ならもうとっくにみなとにもどっているはずの父ちゃんのふねがもどって来ないので、家の中でみなとが一番良く見えるこのまどからはなれることが出来ませんでした。
それは、ばあちゃんも分かっていました。
いつしかサキトの家では父ちゃのふねがみなとにもどって来るのをこのまどからたしかめることがしゅうかんになっていました。
今はもう天国へ行ってしまったじいちゃんの時は、みなとへむかえに行っていたばあちゃんもあしを悪くしてからは、帰って来る父ちゃんのふねをこのまどから見るのが楽しみでした。
サキトもその時からばあちゃんといっしょに父ちゃんをむかえるようになりました。
いつもばあちゃんはサキトがとなりに来ると、
「ばあちゃんはここで見でっからサキトはみなどさ行ってこ」
そういってほほえんでくれました。
本当はサキトがこんなまどからではなく、みなとで父ちゃんをむかえたい気もちをおさえていることを知っていたからでした。
でもサキトはばあちゃんにいわれると、「ぼくはここが好きだから」そう答えていました。
「そうが。じゃ、ばあちゃんとまってっぺ」
しわしわの顔をもっとしわしわにしてばあちゃんはほほえみました。
母ちゃんは赤ちゃんがうまれるので、長野のじいちゃんの家に行っていました。今、この家にはサキトとばあちゃんの二人っきりです。
サキトは父ちゃんがしゅっこうする前、ばあちゃんも知らない男と男のやくそくをしました。
「いいがサキト。父ちゃんがふねでりょうさ行ってる間はお前が父ちゃんのかわりだ。しっかりばあちゃんをまもんねがったらだめだがんな」
そういって父ちゃんはサキトの頭をなでました。
「うん」
サキトは父ちゃんにいわれても、それだけしかいえませんでした。
父ちゃんは一度りょうへ出るとしばらく帰って来ません。なので、サキトは何日かぶりに父ちゃんの顔を見るとてれくさいのでした。
父ちゃんは体が大きく、いっしょお風ろに入るといつもサキトの体をあらいながら、「サキトの体はほそっせぇな」といって全身をあらってくれるのです。でも、あまりにも力があるのでいたくてたまりませんでした。
「そんなにこすったらサキトがなくなっちまうよ」
そう母ちゃんにいわれても、父ちゃんはりょうから帰るとまたいたいいほどサキトをこするのでした。
次の日、あらしはやんでいました。
サキトはねむったような、ねむらなかったようなかんじで朝をむかえました。
まどからみなとを見ると、あらしからにげて来たふねが見えました。
サキトは、「もしかして」と思い、目をこらして見ますが、父ちゃんのふねはいませんでした。サキトはしんぱいのあまりおこっていました。
「父ちゃんは何してんだっぺな!」
気づくとサキトのとなりに来たんばあちゃんが手をにぎってくれました。
サキトは、父ちゃんかわわりのぼくが泣いたらだめだとはらに力を入れました。
でも、泣かないようにしようと思えば思うほど、ばあちゃんの温かいしわしわの手がサキとの涙のていぼうをこわしてしまうのが分かりました。
「ばあちゃん、朝ごはん何がいい?」
サキトはがんばって手をにぎり返して聞きました。
その言葉を聞いたばあちゃんは少しだけ目に涙をためているのが分かりました。
「ありがどね」
ばあちゃんはそういって頭を下げました。
その時、電話がなりました。サキトは急いで電話に出ると、ばあちゃんを呼びました。
長野のじいちゃんから、ぶじに赤ちゃんが生まれたという知らせでした。
ばあちゃんは、「えがった。えがった」といって泣いていました。ばあちゃんはきっと、サキトよりもっと父ちゃんのことをしんぱいしていたのです。だから赤ちゃんが、「泣いてもいいよ」といってくれたんだとサキトは思いました。
サキトも泣きそうになりましたが、帰って来ない父ちゃんにおこっていたので、がまんすることが出来ました。
それから間もなく父ちゃんのふねが帰って来たとれんらくがあり、サキトは走ってみなとへ行きました。
父ちゃんはサキトを見ると、「ごめんな」といいました。
父ちゃんの顔を見た時、サキトの涙のていぼうはすぐにこわれてしまいました。
「父ちゃんのバカ!」
サキトはそうさけび、泣きながら父ちゃんにだきつきました。
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さいごまでよんでいただきありがとうどざいました。
どうでしたか?
たいせつな家族を想う気持ちがつたわったでしょうか。
では、また次のお話でお会いしましょう😊