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October 31st AM 0:01

 
 ついにこの日がやってきた。 
 1年に1度のカーニバルだ。

 私はこの日を待ち望んでいた。
 なにせ、この日の私は自由になれるのだから。

 高層マンションの最上階から見える都会の街並みは、イルミネーションのように白い光を灯している。

『―――October 30st PM 23:40』

 静まり返った家の中を、月明かりが私の部屋を照らし出す。
 淡い月光に照らされながら、私は自由への準備を行う。

 まずは、この身を縛るお行儀よく着せられた白いパジャマをぐしゃぐしゃに丸めてベッドの上へと放り投げ、汚れのない、白い下着姿になる。
 その格好のまま、衣装ダンスの中へと体を突っ込み、2つの紙袋を引っ張り出す。

 この日のために買ってあった私の特別衣装だ。
 足のラインが綺麗に映えるレザーの黒パンツを履き、銀色の髑髏の装飾の入ったベルトを腰に巻き付ける。

 黒い長袖のワイシャツに袖を通し、お洒落にへその下のボタンをはずす。
 白い素肌が露わとなって、少しだけ肌寒さを感じる。

 私はそのシャツの上から、白色のライダースを羽織り、8センチヒールの黒ブーツを履きこんだ。

 仮装が終わった私は、化粧台の前に座り、自分自身に変身を施す。

 飾り気のない顔に、白いファンデーションを塗り込み、肌を整える。
 紫色のアイシャドウで艶めきを醸し出しながら、マスカラで品格を彩り、猫目のように妖しく切れ長いアイラインを引いた。
 最後に、私という存在をかたどる様に妖艶な赤いリップを塗って、吸い込まれるような青色をしたのコンタクトを入れ込むと、私の変身は完了した。

 部屋の窓を開けると、秋夜の風が流れ込む。
 立冬がすぐそこまで来ているのか、冬の匂いが鼻を突いた。

 満月になりかけた月が煌々と妖しく光り、私にきらきらと月化粧を身に纏わせる。

 いつもなら私を縛り付ける髪留めもいらない。
 お利口さんになれる眼鏡だってつけてやらない。
 重く苦しいブレザーとスカートだって脱ぎ散らかしてやる。

 夜風が私の黒髪をふわりと撫でていく。
「早く行こうよ」と私を夜の世界へと誘っているようだ。

 私はにやりと笑い、眼下の街並みにお菓子をばら撒く。
 さぁ、今日という一日を存分に味わい尽くしてやる。

 今日だけは優等生なんて侮辱しないで。
 そんな無口でお利口さんな私はゴミ箱に捨ててきたわ。
 今ここにいるのは、嘘つきで口達者のヴィランな私。

『Trick or treat』

 お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうよ?
 だって、今日はハロウィンなんだから。

『―――October 31st AM 0:01』


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