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二人展《空はシトリン》|永井健一|彩筆のイリデッセンス

 『春と修羅』より選ばれた「休息」。草叢に身を投げ出し空を眺めた心象が綴られた一編です。

 極上のクッションに例えられたからくさは丸まって眠る猫のよう。永井様を透過させた詩は記号より解き放たれ具象として漂いはじめます。星座のように巡るモチーフ。空に投げた帽子、とんぼ、黒い雲からにじむ雨滴───網の目となった青空のかけらが空を覆います。

 そのひとつに虹の欠片を見つけることができます。宮沢賢治が眺めた曇天に虹を出現させた永井様。画家のクリエイションが立ち上る瞬間を捉えたような、詩の世界を内包したキンポウゲ色の結晶です。

 永井様という干渉光により「オホーツク挽歌」は透明でありながら虹色に彩られる連作となりました。

 兄妹の思い出を閉じ込めたおとぎ話のような《モーニングドロップス》。

 

 ピアノの鍵に見立てられたチモシイの穂がゆれ、朝顔たちも一斉に目を醒ましはじめます。 

 すっかり青ざめた心象風景の《Bell》。

 浜薔薇の赤いろをまぶたの裏に残し、捩くれた釣鐘草の向こうの世界と交信するためにどの白い貝殻を口に含みましょう。

 とし子を書物として見立てた《ふたつの青》。朝朗けの空に残るは弓張月。頁と頁の境界線は夜と朝のあわいとなり、白鳥座が横切ります。

 書物の後ろに身を潜めている少女は右手を上げ、空から降る雨滴たちに伝言を託しているのかもしれません。

 優しい水彩の筆致は詩人のセンティメントを包み込み、滲ませ、虹色の波紋を残してくださることでしょう。

会場風景写真|霧とリボン

永井健一|画家 →HP
大阪大学文学部美学科卒業後に作家活動を開始。個展や企画展等で作品発表をしながら、イラストレーターとしても活動している。絵画に詩や写真を織り交ぜた作品「book opus」やオブジェ作品の制作、演奏会の映像演出など作品発表の形態は多岐にわたる。近年は、生の“寂しさと煌めき“をテーマに制作している。

ヨネヤマヤヤコ|イラストレーター・ムエットエッセイスト →Blog
香りの世界を偏愛するイラストレーター兼ムエットエッセイスト。カルチャー・ソロリティ《菫色連盟》にてサロン「香水談話室」を主催。現在はモーヴ街6番地にあるブライオニー荘に隠匿中。
Twitter|@yoneyacco



作家名|永井健一
作品名|虹が出るまでの休息

アクリル・水彩・色鉛筆・アルシュ水彩紙
作品サイズ|32.5cm×24.5cm
額込みサイズ|51.4cm×43.8cm
制作年|2022年(新作)

作家名|永井健一
作品名|モーニングドロップス

アクリル・水彩・色鉛筆・アルシュ水彩紙
作品サイズ9.5cm×14.5cm
額込みサイズ24.8cm×30cm
制作年|2022年(新作)

作家名|永井健一
作品名|Bell

アクリル・水彩・色鉛筆・アルシュ水彩紙
作品サイズ14.5cm×10.5cm
額込みサイズ32.5cm×27.5cm
制作年|2022年(新作)

作家名|永井健一
作品名|ふたつの青

アクリル・水彩・色鉛筆・アルシュ水彩紙
作品サイズ14.5cm×9.8cm
額込みサイズ30cm×25.4cm
制作年|2022年(新作)

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