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くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|かぐわしき草原の奇跡 

 植物学の祖ともいわれるヒルデガルトは、修道院の庭でどのように植物と対峙していたのでしょうか。今回は、自然の息吹を感じる土地で季節の花を愛でる、くるはらきみさまの暖かい眼差しを感じる3作をご紹介いたします。

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》
会場風景(以下同)

 集まった信者たちに炎の舌が降り、異国の言葉を話し始めたと伝えられるペンテコステ(聖霊降臨)。本作品では、炎に代わり色とりどりの花が降り注ぎます。
 復活祭から50日、全ての生命を持ったものが目覚める季節。香気に満ちた大気のうねりを感じる淡い緑色のグラデーションが、天と地の2つの隔たる世界を繋ぎます。

 花は形や色合い、咲き誇る時期の違いという驚くほどの多彩さを持ち、その中にある何か偉大な力を信じて、人は花言葉を語り継ぐのかもしれません。本作品のさまざまな風合いを持つ花も、潜んでいる力を想像したくなるように生き生きと描き出されています。

 2つ目の作品は、天から見下ろす視点が珍しい一作。

 太陽の光に応え、風の息吹に揺れ、世界と呼応する植物を見ていると、心は自らの内面に向き合っていく。円を描くスカートの広がりに、ふんわりと影を作る花弁のようなひだ、宇宙の中心となる少女の頭には祈りが描かれる。

 森の一角、風の鎮まった木陰をそっと覗いてみると、菫の三姉妹が秘密の会合を行っている。
 お揃いの花弁を纏い、両手を揃え、遠くを見つめる瞳には、何が見えているのだろうか。花に扮した少女たちだったのか、それとも咲き始めた小さな花が見せる幻なのか――

 今回ご紹介した作品では、花と少女が一体になったような、すべての生命が調和した世界が描かれています。私たちが花を見つめ、神秘の息遣いを感じる瞬間は、ヒルデガルトが植物に傾けた眼差しと繋がっています。

会場風景|霧とリボン

くるはらきみ|画家・人形作家 →Twitter
東京生れ。幼い頃より自然のある場所に憧れる。大学では油彩を専攻しながら独学で人形制作を始める。2000年に長野県に移住。季節の移り変わりを身近に感じながら制作活動をしています。くるはらきみ & 影山多栄子二人展《夏の夜》(2019年・霧とリボン)ほか、個展、グループ展多数。

維月 楓|詩人・英米文学研究者・翻訳家 →Twitter
幼少期より言葉が織りなす世界に魅了され、現在は詩作を行いながら英米文学の研究を行う。古今東西の女性詩人の作品を読み解くことを通して、彼女たちの人生の軌跡に敬愛を捧げている。




作品販売期間
【7月9日(土)23時~11日(月)23時】

作家名|くるはらきみ
作品名|花とペンテコステ

油彩・キャンバス
作品サイズ|22.7cm×15.8cm
額込みサイズ|31.1cm×24.0cm
制作年|2022年(新作)

作家名|くるはらきみ
作品名|初夏の野原の祈りの宇宙

油彩・キャンバス
作品サイズ|13.5cm×12.8cm
額込みサイズ|21.5cm×20.8cm
制作年|2022年(新作)
税込価格|45,000円

作家名|くるはらきみ
作品名|樹下の菫

油彩・キャンバス
作品サイズ|14.0cm×18cm
額込みサイズ|23.4cm×27.1cm
制作年|2022年(新作)

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