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100日後に死んだら電通案件と疑われたワニ

昨日、ついに最終回を迎えた「100日後に死ぬワニ」
感動の余韻に浸る間もなく、追悼イベントだとか、書籍化だとかの発表がすぐに展開され、ユーザーの怒りを買ってしまい、大炎上してしまいました。

私自身、創作をしていることもあり、どうしても色眼鏡で見てしまいがちになるのですが、燃え方に違和感があるといいますか、ちょっと腑に落ちない部分があります。

どうして「電通案件」になったのか

「100日後に死ぬワニ」の商品プロデュースを担っていたのは株式会社ベイシカ。ベイシカ社の主要取引先の中に「電通東日本」(電通グループ)が入っていたこと、コラボ楽曲を歌ったいきものがかりのPVスタッフに電通関係者の名前が入っていたことから炎が大きくなりました。
おまけに、99日目に作者のきくちゆうき先生がスッキリに生出演したこともあり、疑惑はさらにエスカレート。

電通といえば、2015年に起きた高橋まつりさんの過労自殺事件を巡り、労働基準法違反で起訴されただけでなく、2019年にも違法残業を行っていたとして労働基準監督署から是正勧告を言い渡されています。
「大手企業」の盾を見せびらかすように、人の命を弄ぶ企業がバックグラウンドに付いていたということで、一部では「社員を殺した会社が命を語っている」と批判が相次いでおり、その勢いは止まりません。

クリエイターの視点で考えてみる

クリエイターがSNSの場で作品を発表するというのは、現時点において、最も敷居が低い方法です。もちろん、雑誌などに掲載してもらう方法もありますが、掲載を判断するのは編集部の人間で、クリエイターに選択権はありません。
「100日後に死ぬワニ」も、きくち先生が「生きているということは必ず死ぬ」ということを伝えたくて書き始めた作品。彼の場合、友人の死をきっかけに何かしようと思ったことがきっかけで創作の原動力につながっているそうです。

ワニは想像していたよりもバズりました。noteやブログを使っている人はよく分かると思うのですが、作品を出していいねがつくと、とても嬉しく、ある種の承認欲求が満たされ、原動力につながっていきます。
そして、バズりの方向が良い意味でも悪い意味でも思わぬ作用を引き起こしたのでしょう。更新を続けていくうちに、書籍化の話がきたり、プロのミュージシャンからコラボ楽曲を作らせてくれと言われたり…
クリエイターからすれば、自分の作品が色んな人から「書籍」という最高の形で、物理的に手に取ってもらえるチャンスなのです。

もうひとつ、いきものがかり「生きる」(コラボ曲)について。これは、クリエイター同士の相互作用としてもっと評価されてもいいのではないかと思っています。
タイアップではなくコラボ…いわゆる「二次創作物」であると私は見ていて、きくち先生が描くワニの世界観・テーマに、水野良樹さん(いきものがかりリーダー)がインスピレーションを受けて作成したとしか思えません。
しかしながら、きくち先生も水野さんもそれぞれの分野のプロという立場である以上、コラボPVそのものが商業的プロジェクトに変貌していったのではないでしょうか。

プロモーションが露骨すぎた

電通案件かどうかはさておき、今回の炎上騒ぎは、プロモーション戦略が大きな原因ではないかと考えます。
「100日後に死ぬワニ」の場合、最初はきくち先生お一人で始めた作品。作品を投稿してはバズるに連れ、テレビメディアに取り上げられるほどの人気作品となりました。
ここで気になるのが「最終回直後のイベント発表」です。
仮に連載中に準備をしていたとしても、「死」をテーマにしているだけに、日数を置いて発表・展開するのが自然の摂理です(例えば、ワニの命日から1ヶ月(4/7頃)くらいおいて発表。四十九日にあたる5/8にグッズ展開をするとか)

そしてイベントの中身。

「あれだけ人気になったんだから、ワニくんのメッセージを書く催しとかやれば盛り上がるんじゃね?www」

公式が抽象的な自主性を求めるイベントの作り方をしちゃダメでしょう、とツッコミたくなりました。
イベントにおける自主性は「ポプテピピックカフェのオリジナルポプテピピックを書いてみよう」が良い例で、これはポプ子の顔だけが書かれた紙に、身体はユーザーに描かせるといった取り組みです。
ポプテピピックの場合、主催側である公式がオリジナルの顔を視覚化するに留めて「あとはお好きにどうぞ」とユーザー側に委ねたのが良かったのだと思います。
反対に、ワニの場合は「感動したよね?ワニくん死んで寂しいよね?じゃあメッセージ書けるよね?」とユーザーに強要する手法を取っているように思えます。
もし本当に電通…でなくとも、どこかしらの広告代理店が絡んでいたとしたら、このやり方は、プロモーション戦略としてあまりにもお粗末です。
24時間テレビのチャレンジ企画じゃないんですから、もう少し対策を練るべきでした。

さいごに

100日後に死ぬワニは自分から見るってほどでもなかったのですが、あまりにもバズっているコンテンツなので、TwitterのTLには必ずといっていいほど流れてきます。なので、見たことはありました。
ただ、今回の炎上は「電通のマイナスイメージ」が先走りすぎたために、きくち先生を始め、いきものがかりにも飛び火が広がっていたのが気になりました。(実際、昨日Twitter上で一意見を述べたら「お前それ高橋まつりさんの前でも言えるの?!」とクソリプが来ました…)

誤解しないで欲しいのは、この問題はあくまで「コンテンツビジネス」として炎上しているのであって、過労自殺事件は別案件の事象であると考えるべきです。

100日後に死ぬワニそのものが「死」というセンシティブな問題をテーマにしている以上、作り手・受け手ともに、きくち先生の思いをそれぞれの解釈で捉えることが重要ではないかと私は思います。

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