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街を走る先に裸になれる古書店があった

古書店というと、文字通り「古い本を取り扱っている店」のイメージが強いと思います。というか、どんな本があるかすら分からないかもしれません。

私が懇意にしている古書店の出会いはTwitterからでした。それは「某テレビ局の視聴率調査」を入荷したという情報を知ったのがきっかけです。
しかし、この時点ではその古書店の名前を覚えていません。分かっているのは「開局初期の資料」を取り扱っていることとそこの所在地が青森市であることだけでした。

転職活動の面接終わりのことです。時間が空いたので、スーツから私服に着替えて青森市内を闊歩することにしました。私はそこで「放送資料を取り扱っている古書店」の存在を思い出しました。
そこで私はスマホでTwitterを開き、例のツイートを探すことにしました。しかし、そのツイートはどこにも見当たりません。RTしたはずなのに、本当になかったのです。断片的に覚えているキーワードで検索をかけても全く出てこず、挙句の果てには「青森市 古書店」とかで検索していました。
このときばかりはツイ廃の自分を呪いました。検索に検索を尽くした結果、ついに元ツイは発見されませんでした。私は仕方なく有料駐車場に車を止め、新町通りを歩きました。

青森市内にある古書店は指で数えるほどしかありません。
当時はそれすら知らなかったですし、物が物なので「いずれ買えるだろう」とばかり思っていました。

本通りを歩いていたときのことです。なにやら新しい古書店があるではありませんか。
私は浅はかな期待を抱いて店内に入りました。本がみっちり詰まった空間中を探しました。ありませんでした。

それもそのはず。そこは全く違う古書店だったのです。
ですが人として大事なネジが何本も欠けている私です。そんなことは露知らず、お店の方に聞きました。

「あの、青森テレビの視聴率調査資料があるってTwitterで見たんですけど、もう売れてしまったのでしょうか?」

当然、店員さんはハテナ顔。
何も知らない(というか大事な情報が抜けている)私は何度もその説明をしました。
と、そこで、思わぬ助け舟が。たまたま居合わせたお客さんから「それって、あそこのことじゃないかな?」と古書店の名前を教えてくださったのです。早速Twitterでその名前を検索してみると―RTしていたツイートを見つけることができました!

すぐに車に乗り込み、そのお店へ行きます。
ドキドキしながら中に入り、開口一番に言いました。

「すいません、青森テレビの視聴率調査資料があるとTwitterで見たんですが、まだありますか?」

店主さんは「ありますよ」と、実物を見せてくださいました。
待ちに待った、開局初期(1971年度のものです)の資料…!!しかし、結論を言うと―買いませんでした。というか、買えませんでした。

高かったのです。

持ち合わせているのは2000円くらい。資料は4950円。しかもクレジット取り扱いなし。目の前にあるのに諦めざるを得ない複雑なオタク心。

「テレビ関連だったら他のやつもありますけど、見てみます?」

店主さんが棚から取り出してきたのは、大量のミニ新聞でした。しかも、放送局発行のもの。少なくとも5年分はあったと思います。
詳細については絶対長文になるので割愛しますが、放送局史的には超貴重な資料がストックされていたのです。

無意識に放送オタクモードになっていた私。「こんなのに興味あるんだ」と感心しだす店主さん。熱心に話をするうちに、だんだんこのお店にいるのが楽しくなっていきました。

気がついたら、私は今置かれている状況を洗いざらい話していました。
仕事のこと、やりたいこと、好きなこと、将来のことなど…初めて会った人なのに、とても心が軽やかになっていったのです。変人でも別け隔てなく接してくれた嬉しさが大きかったのでしょう。
初めての場所でこんなに笑ったのはすごく久しぶりの体験でした。
(帰り際はちゃんとミニ新聞を数冊買いました!)

それから私は、本来の目的を達成するために何度も足を運びました。
といっても、いきなり5000円を出してそれを買う余裕はなかったので…ミニ新聞を数冊買っては2時間くらい話して帰るの繰り返しです。それはそれで楽しかったですし、意見の食い違いで討論になったこともありました。

最後に顔を出したのはニートになりたてだったとき。マスク必須になっていた頃です。
ついに私は、欲しかった資料を買うことができました!!

これが眉唾ものの貴重資料です!

時勢柄、前のように長居して雑談することはできなくなりました。
最後に行ったときも前ほどお話せずにそのまま後にしたと記憶しています。

今、私は本を毎月1000ページ読んでいます。
がむしゃらに働いていた頃と比べると、活字の読書量が大幅に増えてしまいました。
多分また行くと今度は1万円オーバーになるでしょう。買われていなければ、まだあのミニ新聞は残っているはずですから。
それと…もうマスクは外して良くなったから、いい加減よもやま話をしに行きたいわけですよ。3年って結構いろいろありますよ、本当に。

あぁ、大丈夫です。目的はあくまで「放送資料の購入」ですから!

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