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物書きナレーターの朗読解釈「ごんぎつね(1)」第3回

noteにもとうとうルビ機能が付きましたね!

これで読み方が分からなくても大丈夫!
…と言いたいところですが、ルビを付けるか付けないかは書き手次第です。

本題に入りましょう。
物書きナレーターの朗読解釈「ごんぎつね(1)」の第3回。
今回からは原文をルビ付きで表記していきます。

【これまでの記事はコチラ↓】

【朗読音声】

 る秋のことでした。二、三日雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。
 雨があがると、ごんは、ほっとして穴からはい出ました。空はからっと晴れていて、百舌鳥もずの声がきんきん、ひびいていました。
 ごんは、村の小川の堤まで出て来ました。あたりの、すすきの穂には、まだ雨のしずくが光っていました。川は、いつもは水が少ないのですが、三日もの雨で、水が、どっとましていました。ただのときは水につかることのない、川べりのすすきや、はぎの株が、黄いろくにごった水に横だおしになって、もまれています。ごんは川下かわしもの方へと、ぬかるみみちを歩いていきました。

ちゃんと表示できているでしょうか…?
てっきりメニューの中から選ぶやつなのかなと思ったら、括弧を使わないとダメなんですね。
(そこきちんとアナウンスしようよ運営…)

このくだりは、雨が降ってから止むまでの一連の時間経過を表す、様子中心の場面です。
(今気づきましたが、一部読み間違えている部分がありますね…後で絶対言われそう…)

本題に戻ります。
私はここを、読み技術の基本をぶつける絶好の場面だと思っています。
逆にいうと、基本がなっていないと作中の景色を再現できません。

外の景色・人の動作などの描写は朗読者が実況しなければなりません。
どうして実況しなければならないのか。それは、作者も実況しているからに他ならないからです。

以前、自作小説のダメ出しをnoteに出したことがあります。

自分の小説で足りない点は「動的・視覚的描写の少なさ」でした。
確かに、心理描写をふんだんに盛り込んでもキャラクターは何をしてそう思ったのか、何をしながらそういう考えに辿り着いたのかが分からなくなりますよね。

これは朗読表現でも同じことで、実況を付けることでキャラクターが何をしているのか、作品の世界はどういう状況なのかを聞き手に知らしめる効果があります。

では、作中の様子を朗読で実況するにはどうすればいいのでしょうか?
今回のキーワードは「抑揚」。ここでは「間」「強調」の付け方を私の読み方を例にして見ていきましょう。

 る、秋のことでした。二(、)三日(→)、雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出られなくて、穴の中にしゃがんでいました。
 雨があがると、ごんは、ほっとして、穴からはい出ました。空は「、」からっと晴れていて、百舌鳥もずの声が、きんきん(、)ひびいていました(↓)。
 ごんは、村の小川の堤まで、出て来ました(↓)。あたりの、すすきの穂には、まだ(、)雨のしずくが、光っていました(↓)。川は、いつもは水が少ないのですが(→)、三日もの雨で、水が(→)どっと(、)ましていました(↓)。ただのときは、水につかることのない、川べりのすすきや、はぎの株が、黄いろくにごった水に、横だおしになって(、)もまれています(↓)。ごんは川下かわしもの方へと、ぬかるみみちを歩いていきました。

※「、」…しっかり目の間、(、)…短めの間、(→)…一気に読む、(↓)…トーン落とす

強調部分は太字に、※の記号はその通りに読んでいます。
ちなみに括弧が何も付いていない句読点はしっかり目の間と同様です。

最も大事なのは「間をどうやって取るか」「どこを強調したいかで読みが変わる」ということです。
何でもかんでも長めに間を取ってみたり動詞や形容詞を強調したりしては意味がありません。

①間の取り方

「間の取り方が分からない」という改善案の一つに「句読点を自分好みにカスタマイズする」という方法があります。
言葉の意味のブロックを分けるために、自分なりに間を取ってみるというものです。

執筆と読みにおいての句読点は意味が全く違います。
何故なら、伝えるためのアプローチが視覚的か聴覚的かの違いがあるからです。

執筆での句読点の打ち方は「視覚優位」、読みでの打ち方は「聴覚優位」
その違いを明確に覚えていないと、間を取る際は句読点に惑わされてしまう現象が起きるのです。

レジェンドナレーター・篠原さなえさんも「読点を盲目的に信じるな」とおっしゃっています。

ちなみに篠原さんは有名TVCMを数多くこなされている超人気ナレーターです。
一番最初のナレーションで「あぁ~!!!」と思う人続出だと思いますw

私も放送部時代、K子先生から「句読点は敢えて無視して自分だけの間を作れ」と教わりました。
ですが最近になって、作者が句読点を付ける意味は何らかの理由があるのではないかと思うようになりました。
実際、「句読点を無視して読め」というやり方は素人同然という意見もあります。
(私が見た範疇ですが…「違う」っていう方がいましたら、コメントやリプにてご教授ください)

一見矛盾しているように見えますが、そうではありません。
「同じ句読点でも、文や言葉の意味によっては間の取り方は変化する」と申し上げたいのです。

例えば本文の「二、三日」は、普通に言うと「にさんにち」になりますよね。
ですが句点があるからといって「に、さんにち」と読む人はいません。
これが「視覚優位」「聴覚優位」の違いです。

②強調(プロミネンス)

動的描写で一番重要になるのが強調技術(プロミネンス)です。
これで作中の様子が左右されるといっても過言ではありません。

といっても、何を強調したいかによって読み方が変わります。
次の文章で見ていきましょう。

A.ごんは、外へも出られなくて、穴の中にしゃがんでいました。

B.ごんは、外へも出られなくて、穴の中にしゃがんでいました。

ごんが穴に閉じこもっているシーン。おそらく二つの解釈に分かれるのではないでしょうか。
一つは、「外へ出たい!」と思いながら仕方なく穴の中でじっとしている、ということ。
もうひとつは、一人(匹?)寂しく穴の中で雨を耐え忍んでいる、ということです。

Aの読み方とBの読み方を録音してみました。


(プリセットされたボイスレコーダーで録音したのでかなり音質悪いです。ご了承ください)

違いが分かりましたか?
いくら聴いても違いが分からない人があれば…それは単なる私の技量不足です(プロミネンス超苦手マン)

こんな感じで、強調したい部分をきちんと設定することで読みに深みが出てきます。
だからといって、強く読むことが正義というわけではありません。
強調したい箇所を際立たせるように、他の文や言葉を敢えて気持ち弱くしてみることが大事なポイントです。
(だから(↓)で声のトーンを落としています)
また、(→)で一気に読むとありますが、これはどちらかというとリズム感を意識した読みになります。
これを全部ひっくるめると「抑揚のある読み」につながるのです!
朗読検定3級ではプロミネンス問題でいっぱい強調の難しさを思い知らされるので、興味のある方はぜひ勉強してみてくださいね。

まとめ

・間を空ける秒数は常に一定ではない!
→文や言葉の意味によって間の取り方は劇的に変わります。
・強調したい部分は強調、その代わり強弱のメリハリをしっかりと付けること!
→せっかく強調しても次の声のトーンが強調箇所と同じだと全部が強調しているように聞こえることがあります。

第2回のあとがきでこう書きました。

朗読指導でよくある「ゆっくり目」「間」「強弱」について、それらを事細かに記載してしまうとどうしてもマニアックになってしまいます。

第3回で早くも「間」と「強弱」に触れてしまったのはさすがにまずいと思いましたが、実況感を出すためにはどうしても触れざるを得なくなってしまいました。
しかしながら、これはあくまで私の読み方です。「抑揚」といっても、一言では到底表すことが難しい技法。だからこそ、マニアックになってしまいました。

作風を再現する際、意外と忘れがちなポイントです。
どのキーワードを強調するかは皆さんにおまかせします。
これをやってみると、朗読している本人が一番楽しめるかもしれませんよ!

次回はいよいよ兵十の登場です。
多分これで終わり…だと思います。終われれば、ですけど…

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