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冷静な末法思想

職業に貴賎はないと言う。自身もそういう観念がない。同時に、自身の生業も生活の手段に過ぎず、身も心も組織に捧げるつもりなど、毛頭ない。

ただ、生業にするなら、微力でも多くの人のためになってほしいと願っている。農業でも工業でもサービス業でも構わない。ゼロからイチを産み出す仕事と言えば適切かもしれない。

カネを右から左に動かしてカネを産み出す仕事もある。世の中には必要な役割の一つだろう。自身はやりたくはないが蔑むつもりもない。

しかしながら、カネがカネを産み出すことに味をしめてしまえば、その報酬の大きさからもやめられなくなるだろう。普通に宮仕えして生涯で得る賃金を僅かな期間で稼げば尚更だろう。

人は強欲にできている。稼ぎが一億ならば二億欲しくなるし、百億なら二百億欲しくなる。

今の経済が動く理由は至ってシンプルではないかと思う。

1 カネだけが世界的にダブついている。

2 カネでカネを産み出そうとする組織や人が増えている

金本位制を取るところはない。カネは事実上、国家の信用のみが基盤である。そのカネを国家はせっせと印刷してばらまいている。日本もばら撒いてはいるが、外国の比ではない。結局、海外の行き場がないカネが日本の株価を押し上げただけのこと。別に国や企業の現状や将来性が買われた訳ではない。

他に儲かりそうな場所が有れば、あっという間にカネは逃げていく。日本の株価など実体なきものが高止まりなどする筈もない。雰囲気だけで乗っかる個人投資家だけがババを引かされて終わりだろう。

カネ儲けだけを生業にする連中は、次はカネのない人から巻き上げることに腐心する。

そこで考え出された人の労働という生きていく上での最低限の義務からもなけなしのカネを搾取しようとする商い。

結果は今の世の中がよく示している。「正社員が夢」だなんて馬鹿げたフレーズが流れる。若い人ほど働くことのトリックに気がついてしまっている。

さらに強欲連中は次に何を売るのか。それは「国」そのものだ。見境はない。売って自分たちが儲かれば何でも構わない。

水道の民営化、ベーシックインカムなどなど、巧妙に罠が仕掛けられている。民間人のフリした政商が騒ぎ立て、政府や経団連が喜んで進めることで一般庶民が助かったことが歴史上一度でもあっただろうか。

連中は自分の墓にまでカネを持っていくつもりなのだろう。いやカネに埋もれて窒息したいのかもしれない。

ワシは悲観的でも楽観的でもない。正義やフェアであることに世界は無関心。なるようにしかならないからだ。

遅かれ早かれ、このままいけばカネ自体が価値を失う時代が来るような気がしてならない。

国という共同体が薄弱になりカネの裏付けがなくなるのかもしれない。これが一番可能性がある。

またはカネと引き換えるべき対象物が無くなるのかもしれない。これは世界の終焉を意味するのだろうが。

人を滅亡に追いやるのは人自身であると、いつか本で読んだことがあるが、まさに今その入り口に来ている気がしてならない。

正気なら核兵器を撃ち合うことはあり得ないのだが、金儲けのために核を撃ち合うのが不思議ないほど、カネに世界は狂わされている。

いつの時代にも蔓延る悲観的な末法思想ではないよ。冷静にそう思えるのだから。