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マニュアル

かつて仕事の現場担当だった頃、会社の偉い人に言われたことがある。

「マニュアルで仕事が済むのならお前らは要らない」

言い方は気に入らなかったが、意味は理解できた。要は決まりごとと受け手の気持ちの間を埋めるのが「仕事」だろうと言いたかったのだろう。

ただ、仕事をマニュアル化するのはとても大切だとも思う。仕事がラクだからだ。正確性を問われる経理部門にいた時には特に強く感じた。前任者がこの類を作っていないと引き継ぎ後に憂き目に遭う。

でもマニュアルが万能というのは思い込みに過ぎない。

テクノロジーの進化は速い。かつては考えられなかったことが当たり前になり、やがて陳腐化してしまうのも速い。つまりはマニュアルが陳腐化するのも速い。マニュアルをアップデートすることの方が実は大切なのだろう。

マニュアルより先に行けば、AIがやがて人の仕事を奪う時代が来ると言う。確かに置き換えが起こる仕事はあるだろう。

でも、どのように仕組みを作るのかという部分は人にしかできない。結局は「人」がどう考えるか次第ではないか。

まるで機械が人の都合よく考えて何でもやってくれるみたいな未来図はきっと幻想である。

「適当に握ってくれ」で満足できる高級な寿司屋じゃあるまいし。

仮にそんな未来がやってきたと感じる時が来たなら、むしろその未来は誰にとっての好都合なのか考えてみれば良い。

きっとロクでもないもののような予感がする。

大切なのは方法ではないのだよ。人がどう考えるか、感じるかではないかな。