と或る家の門の前で…001/舞台脚本+詞(コトバ)
【登場人物】
ミヤビ=富士雅(フジミヤビ):本名は富士雅永久(フジマサトワ)。富士雅家の
長女=オオネエ。
オンナ=富士雅百合子(フジガユリコ):本名は富士雅愛(フジマサアイ)。次女
=チイネエ。
富士雅誓(フジマサセイ)。長男で末っ子。女姿シンガー。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
暗転。
板付:中央に女姿シンガーのセイ。
音楽1「光を頂戴!煌々の…」イン。
同時に、照明イン。
セイ、歌う。
♪
ああ…
せつないの? むなしいの?
さびしいの? かなしいの?
自分の気持ちがわからない…夜が明るすぎて…
ねぇ、電気を消して!
ネオンも 街灯も ビルも 民家も 何処も 彼処も
私のために、電気を消して!
闇を纏いたい! 暗黒の闇を!
混乱してるの!? 錯乱してるの!?
ねぇ、落ち着かせて! 沈めさせて!
気持ちに気づかせて!
乱されている…私の…
と、上手より、イライラしながらオンナが登場し、舞台を動き
回る。
セイ、オンナを一瞥し、下手へ退場。
音楽1、アウト。
オンナ、下手で立ち止まり、その場に座る。
上手より、ミヤビが登場。
ミヤビ (オンナを見つけ)あなたは、誰?
オンナ 私は、誰?
ミヤビ わからないの?
オンナ わからないの!
ミヤビ どこから来たの? どうしてこんなところにいるの? どうして?
オンナ やめて! 質問ばかりしないで!
ミヤビ でも…。
オンナ いいの、ほっといてよ。
ミヤビ だけど、こんなところにいたら危ないわよ。
オンナ いいの、かまわないで!
ミヤビ だって。
オンナ いいんだってばッ。あっちへ行ってよ!
ミヤビ でも。
オンナ うるさい、消えて!
ミヤビ 聞いて! ここは、私の家なの。だから、あなたにここから消えて
欲しいんだけど、って、ウソよ。心配だから、とりあえず家に入って、話
を聞かせてよ。
オンナ どうして?
ミヤビ 心配だからよ。
オンナ どうして、見ず知らずの私が心配なの?
ミヤビ 気になるの。放っとけないの。
オンナ だから、どうして?
ミヤビ わからない。ただ、なんとなく…。
オンナ なにそれ!? 心配するなら、もっと真剣に心配してよ!
ミヤビ ご、ごめんなさい。
オンナ そもそも、あなたが私に声を掛けなければ、こんなことにはならな
かったのに。
ミヤビ そ、そうかな…?
オンナ え!?
ミヤビ あ、いえ、そうよね。
オンナ そうよ、そうなのよ。どうするのよ?
ミヤビ そんなに、ヨーヨー言われても…。
オンナ ヨーヨーなんて、ラッパーみたいなこと言ってないけど。
ミヤビ そうね、そうよね。
オンナ で、どうするのよ?
ミヤビ ほら、また…。
オンナ なに!?
ミヤビ いえ、あッ、だから、とにかく、家に入って、お話を聞かせて頂く
っていうのはどうかしら?
オンナ 私を家に連れ込んで、どうするつもりよ!?
ミヤビ 連れ込むだなんて、ひどいわ! 私は、あなたのことが心配だか
ら、それで…。
オンナ それで、私から何を聞き出そうとしているのよ?
ミヤビ 聞き出すだなんて、そんな。
オンナ そんなこんなを聞きたいんでしょ?
ミヤビ はい。って、違います! こんなところに座り込んで、泣いている
ように見えたから心配で。
オンナ 心配しているふりをして、家に連れ込んで、私に、どんなひどいこ
とをしようとしているの!?
ミヤビ そんな、ひどいわ! 私は、ただあなたが心配だったから声を掛け
ただけで、ていうか、元々あなたが私の家の門前に座り込んでいたからじ
ゃない! そうよ、他人の家の門前に座り込んで泣いていたくせに!
オンナ あなたの家の門には、くっついていなかったわ!
ミヤビ ああいえばこういう、面倒くさい女ね、あなたって!
オンナ あれ!? 逆ギレ?
ミヤビ ギャ、逆ギレって、逆じゃないでしょ!?
オンナ ていうことは、やっぱり私が悪者なのね。
ミヤビ 悪者だなんて、そんなこと思ってないですよ。
オンナ じゃあ、なんでキレてるのよ?
ミヤビ だから、キレてないですってば。
オンナ キレてな~い!
ミヤビ 古ッ!?
オンナ ごめんなさい。
ミヤビ あ、謝った!? 今、謝ったよね!? え~~、謝ったァ!? マジ
で!? ウソ!? ホント!? 今、謝ったの!?
オンナ あの、もしもし。
ミヤビ え~~、ホントかなぁ!? ウソよね!? このオンナが謝るわけない
わよね~!?
オンナ オ、オンナって!?
ミヤビ わかった! たぶん、空耳ね。
オンナ 空耳アワ~。
ミヤビ あれ、どこかで聞いたような…、週末の深夜に聞いたような…。
暗転。
オンナ (声:以下同)あら、停電?
ミヤビ バカね、ここは外よ!
オンナ バカじゃないもん!
ミヤビ はい、はい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?